歴史から抹消してしまった国防と国益 XⅥ
-中国と日本-

2月 北京オリンピック
3月 韓国大統領選
7月 参議院選 (日本)
中国共産党大会 (習主席 3期目の政権継続かを決める共産党大会)
11月 アメリカの中間選挙

 

―中国共産党大会の本質的な意味―

 この秋に中国共産党大会では、習主席の独裁を堅持させるための大事な大会になっています。いままでの法律では、主席は2期(1期5年)までとされていた法律を撤廃して、3期または永久就任を画策しています。習主席が3期以上になれば、さらに中国の権力は集中して中国の覇権勢力と軍の増強が国策として進みます。中国の国家戦略は、すでに1950年代からぶれることなく着実に前に進めています。1950年代といえば、戦跡が各地にあり国自体が極貧状態で戦後復興の最中であります。その状況の中で、中国政府は「経済力と軍事力を備蓄し、アメリカの勢力を徐々にアジア地域から駆逐し中国を中心とするアジアの新秩序を構築する」という国家プロジェクトを国づくりの柱として、軍事大国と経済大国を達成しました。尖閣問題や台湾問題は、突如現れたことではなく中国の「勢力圏拡大戦略」の通過点でしかないということです。香港制圧は、西側諸国では中国勢力を止めることは出来ませんでした。あの成功体験は、前奏曲であり台湾・日本を中国に吸収していく壮大な彼らの世界地図の一環でしかありません。中国共産党の本質は、「完全な国家統一は、中華民族の偉大な復興を実現するために不可避」この思想が彼らの柱になっていています。前回も話しましたが、ウィルソニアン・バランス(ウィルソン主義:国際社会と国際経済の相互依存が高くなれば、お互いが不利益になるので戦争をしなくなる。日本の国際情勢は、この思想で世界を見ている。)での世界観で国際社会を見ていません。
 中国の歴史を時代と時事を、西側の価値観(民主主義・自由主義経済)のパラダイムで見ることで中国が何をしようとしているのかが見えてきます。チベット・シングルウイグル・内モンゴルで起きている民族問題は、他民族の浄化と弾圧でしかありません。武漢熱前の世界は、その脅威を注視していました。

 

―日中の関係をパラダイムで見ることで、日本の国防体制が見えてくる―

 そして、2000年前後から日本は何が起きていたのか? パラダイムで見ていくと中国が日本に何をしようとしているのかが見えてきます。2011年に起きた尖閣諸島問題は、日本の領海で漁船が海上保安庁の巡視船に故意の衝突する事故がありました。その当時、ある国会議員は「コツンと当たっただけ」とメディアを通して豪語した人もでるほど、国境と主権という意味が日本人には理解できていませんでした。あの事件の終結は、罪を犯した中国人を裁判にかけることなく釈放をして中国に丁重に帰国させ中国政府に抗議をしただけでした。それとは対照的に当時の記録動画をネットに載せた保安官は、国家公務員法守秘義務違反容疑で東京地検へ書類送検し、保安官を停職12カ月、保安官の上司に当たる本部長に訓戒、長官ら23人に減給などの処分を行いました。(結果的には、その保安官は国家公務員法違反で起訴猶予処分が下され、責任を取って退職されました。)この時からすでに、日本の国づくりはどこを向いて政治・法律が成り立っているのかが見えてきます。犯罪をした外国人は、主権で裁くことすら出来ず、国防をした日本人には法的に罰則を与えて国防力を低下させる仕組みを作ってしまいました。この時に、多くの日本人は日本の政治や法はこの国を守るものでなく、外国人を野放しにする国体であることを知りました。そして、日本は国防や国益を守る手法がないことを世界に示してしまいました。
 それ皮切りに、3年後には東京都の小笠原諸島に赤サンゴの密漁事件が起きました。200隻以上の密漁船が小笠原諸島周辺に現れ、密漁をして漁場を荒らし不要になった網などのゴミの投棄までしていきました。小笠原諸は、日本の首都であり国を象徴する領土・領海です。その場が、いとも簡単に外国の組織によって略奪と不法行為が平然とおき、国家として国防体制を明確に示しませんでした。この時も国は、海上保安庁の数隻で密漁船を追い回すことしかしませんでした。それに加えて、首都の東京都は都政として何もしませんでした。
 では他国ではどうするか。まずは、政治とメディアが一緒になり領土・領海侵害の事実を公開して世論に訴えることをします。国民に国防の意味と現場で何がおきているのかを映像で伝え、主権が侵されていることを国民に知らします。国境を守っている同胞が、どのようにして国防をしているのかを伝えて、外国人によってそれだけの被害と損失が出ているのかを、連日テレビやラジオで流し続けます。あの時に、政治主導でメディアを通じて公開していれば、中国に対して政治的な牽制になり国を守る同胞を失うこともありませんでした。外交としては、一石二鳥どころか三鳥になり、無駄な労力や税金も使わないで国防することにもなりました。敗戦後の日本の実体は、国防と国益が政治家にもなければメディアにもないことが判明してしまいました。1つの妥協と外国の主張ばかり耳をかたむけることで、海底資源の略奪と主権侵害をされてしまいました。そのようにして、外国に侵略しやすい状況を自ら作りボーダレス(国境なき世界)に突き進んでいるのが日本の姿です。

 参考までに、北米で起きたらコーストガード(国境警備隊)がすぐに出動し武器使用を前提にした捕獲をはじめます。徹底的に追跡するので、よほどのことでないと逃げることは出来ません。領海侵犯をした者は、アメリカやカナダの国内法が適用されるので、日本のように常に命の保証をしてくれるわけではありません。国家の威信にかけて国防体制に入るので、狙撃や銃撃が常についてまわるので保安官は生と死の境界で仕事をしています。犯罪する側も、生死の境の覚悟で来るので日本の国境警備とはまったく違うものです。国防と国境警備は、一つの概念とされ保安員も相手を殺傷する緊張の中で仕事をしています。

https://www.youtube.com/watch?v=o9ZovD4HAgM

https://www.youtube.com/watch?v=Qjdo-dK8SwU

 話しを国防のパラダイムに戻します。去年10月には、恐ろしいことがおきました。中露艦隊が日本1周をして、日本の軍事体制を挑発する行動に出てきました。何も起こりませんでしたが、対峙する外国艦隊が国境付近でこれらの行為をするということは、国際社会においては臨戦態勢を意味します。他国であれば、戦火がはじまっていてもおかしくない状況でした。では、この状況をどのように捉えるのか? そもそも、対峙する外国艦隊が来ることは突如として現れたことでなく、いままでの経過から見たら当然のことで、日本の急所を見据えてのことでした。彼らは、日本人よりも国防体制が不備で無防備になっていることを証明してしまいました。多くの人は、日々の生活が忙しく国際情勢とは関係ない生活をしています。しかし、外国の侵攻と侵略がはじまれば一瞬にしていままでの生活が奪われます。軍事は遠いものとして扱うのではなく身近なモノとして捉える必要があります。いま、隣国で起きているのかを1つ1つ短編で見ることをやめ、パラダイムで見ると次に何が起こるのかが予測が出来ます。このウクライナの侵攻が長引けば、国際社会は力の世界に入り、自国の領土領海は自分達で守ることが必然的条件の世界になります。世界はカオスになり、取る側の責任よりも取られる側の責任が重要視され、殺戮と略奪が正当化される時代に突き進もうとしています。このウクライナ侵攻は、中露の関係をさらに緊密にさせて独裁国家の連帯を西側陣営は作ってしまいました。台湾・日本侵攻は、現実に近づいています。そのときに、日本は独自の国防と防衛をする法体系や行政システムが整っているのか? 根本の問題があります。領海を侵犯した漁船に対して、狙撃も出来ない国家が敵の軍艦を打つことができるのでしょうか。北方領土や竹島を見てもわかるように、領土や領海は一度取られたら、外交での話し合いで取り返すことはできません。まさに次に起こることは、中国は日本領土・領海の侵攻を数年以内で模索していることは間違いありません。中国は、名実ともに経済力と軍事力は日本を抜き大国になりました。彼らの覇権は、さらに強いものになっています。
 前回、北米に大量の中国人が民族大移動をしていることを書きました。それは何を意味するのか。日本人は、日米安保が未来永劫続く軍事同盟と思っていますが、その同盟も長くはありません。なぜなら、中国の覇権の異分子が北米大陸に移住してアメリカ人やカナダ人になって、日本を侵略・侵攻の土台を作ろうとしています。日本が見なくてはいけない国際社会は、そのような覇権が進む中で日本民族は何を柱にして生きていくのか、根本が問われています。