投稿者「TAKE」のアーカイブ

歴史から抹消してしまった国防と国益 42
-近代文明の終焉とアメリカ民主主義の崩壊-

 アメリカ大統領選は、スーパーチューズデーという大きな節目が過ぎました。現状を言えば、共和党はトランプ氏が代表になり、民主党はバイデン大統領で争うことが濃厚になりました。2020年の大統領選は、あまりにも不可解なことが多発して、アメリカ人の心を空洞化してしまいました。不正・虚偽・粉飾が入り乱れて、選挙そのものが欺瞞になり、アメリカ人にとって国のトップを選ぶ儀式が汚れたモノになってしまいました。2020年前までの大統領選は、曲がりなりにもアメリカ人にとって、自分たちの「正義の審判の儀式」でした。ちょっと、日本人には理解できないところでもあるのですが、アメリカの大統領選は選挙(代表者を選出する行為)というよりは、アメリカ人の精神を審判する行為と神に近い存在を決める神事という概念が心底にあります。神に近い存在というのは、アメリカの魂を1つにしてくれるメシア(救世主)を選ぶことであり、彼らの精神を束ねる儀式でもあります。神事と現代文明の融合によって、権力の神格化がこれまでのアメリカの民主主義の柱でした。その神事が、前回の大統領選で汚され、4年前のトラウマがいまだに解決できず「民主主義の正義(Justice)」が解らないまま儀式だけが進んでいるのが今回の選挙です。いまのアメリカは、以前の強者の面影はなく、国全体が鬱になり、精神分裂が起きている状態になっています。今回の大統領選は、どっちが勝ったとしても世界の警察が出来る余力はなく、モンロー主義に戻っていくでしょう。さらに現状を言えば、これまでに見たことがない暗い祭儀になっていて、大衆は心ここにあらずの状態が続いています。
 いまの日本は、政治家を含めた有識者は、どこまでそのアメリカの状況を理解して世界のパワーバランスを分析しているのでしょうか? 去年、日本ではアメリカが弱体しているにも関わらず、一部のアメリカ人の圧力によってLGBT法を国会で可決してしまいました。アメリカですら国が2分する人権問題を、日本の政治家はアメリカの圧力に負けて、言うがまま法案を通してしまいました。そのことに日本のメディや有識者は、権力の暴走を止めることもせずに国体を壊してしまいました。LGBT法の本質の問題は、ごく一部のアメリカ人の保身によって内政干渉をして、国体を壊すサイレント・インベーション(音を立てない侵略)を日本の首相と共に犯したことが、この真相です。この問題を見るときに、多くの日本人が間違っているのはリベラルとか保守の対立ではなく、自国民が、自分たちで民族の未来を決めることが出来ない、虚弱な体質になっていることに気づいていないことです。いまのアメリカには、日本をコントロールする余力がないほど弱体しています。そんなアメリカに、忖度をしている岸田政権の姿勢は理解ができません。戦後、79年が経ちました。いつまで日本人は、アメリカの属国でいるのでしょうか?

 2024年のアメリカ大統領選挙は、トランプ氏が勝つかバイデン氏が勝つかという単純な構造で見てはいけません。2020年の「心の空洞化」が癒えない状態で、アメリカの神事がスタートし「アメリカの正義」がどこにあるのか解らない状態で、国の全権を束ねる人間を決めなくてはいけないという不安定な状況です。4年前の祭儀を汚したことで、自分たちの精神を見失い負のスパイラルに陥り光が見いだせないまま、大きな闇を抱えて突き進んでいます。その状況の中で決まれば、アメリカ自身が精神分裂をおこし、国の分断化は避けられないでしょう。そして、アメリカ民主主義の終焉に結びつくと見ています。
 歴史をたどれば、ヨーロッパからはじまった民主主義は、新天地アメリカで開花しました。ヨーロッパでの歴史的禍根(宗教観の対立)と多くの矛盾の中で、希望と平等と自由を掲げて新世界を作りました。かつてあった希望や民主主義の精神は、「平等と自由と正義」が国体(アメリカ人の精神)の柱になり、国を発展してきました。しかし、250年の経過の中で自分たちの整合性が壊れ、アメリカン民主主義(アメリカ人による自由・平等・正義)の限界に直面し、希望と光を見いだせず鬱状態になっているのが、いまのアメリカの姿です。アメリカは、これから国内から崩れていき、ヨーロッパからはじまった近代文明の民主主義は崩壊していくでしょう。これまで、幾つもの危険な要因が、アメリカに潜んでいることを紹介してきました。この大統領選は、さらに闇を表面化していくでしょう。
 そんなアメリカに、日本はいつまで媚びていくのか? いま、日本はアメリカと対峙する大きなチャンスが来ています。「このまま、沈みゆくアメリカと心中していくのか。」それとも「戦後レジュームの脱却から、民族の尊厳と自立の道をいくのか。」大きな分岐点に来ていることは間違いありません。
前々回は、メキシコからの難民と不法移民の流入によって、大変なことになっていることを書きました。それ以上に深刻な問題は、アメリカの治安の悪化と不況(失業者・ホームレス)が大都市からはじまっていることです。   
 いま日本に必要なことは、過去に引きずられず、北米をありのままの姿で見ることです。

 

―不況の波が止まらないアメリカ―

 日本では、中国の経済崩壊をニュースで取り上げていますが、それ以上に深刻なのはアメリカ経済の崩壊がはじまっていることです。いま、アメリカの株価が上がり景気回復に向かっていると一部の報道機関は言っていますが、現地から見る北米社会はまったく違っています。この下の表は、National Alliance to End Homelessnessという民間のシンクタンクがホームレスの数を集計したものです。2023年版となっていますが、データは2022年の集計になっています。青色が濃ければ濃いほどホームレスが多く、色が薄いところはホームレスが少ないことを意味しています。州の下に記載されている数字は、上段が各州のホームレスの数です。下段は、1万人に対して割合になっています。オレゴン州とカリフォルニア州のホームレスが10倍違うのに、同色の色になっているのは、人口数とホームレス数の割合が同じだからです。


https://endhomelessness.org/homelessness-in-america/homelessness-statistics/state-of-homelessness/
https://www.cbsnews.com/news/federal-homelessness-statistics-us-2023-data/

 ここが出しているデータで興味深い(ここのHPに入らないと記事は出ていない)のは、ホームレスの大多数は独身で72%に対して、子どものいる家庭でホームレスになっているのが28%にも達しているということです。さらにCBSニュースでは、2023年のニュースで「Homeless crisis in California(カルフォルニアのホームレスの危機」と題して、カルフォルニアのホームレスの現状を取り上げました。この記事では、カルフォルニアはホームレスが増加にあり17万1000人に達し、アメリカ全土のホームレス者数(58万2400人)の30%になっていること。さらに、サンディエゴ郡だけでもホームレス数は1万264人に増加し、昨年(2022年)より22%増加したと報じました。
 ついこの前まで、アメリカの基幹産業はIT産業で西海岸を中心に経済発展をしてきました。しかし、コロナ後は一変して西海岸は不況に陥り、ホームレスが急増しました。その要因は、パンデミックによる影響とIT産業が人を必要としない無人労働が、重なりあって失業者を増大しました。地図を見てもわかるように、西海岸を中心に産業のシフトが、労働の空洞化を生みました。(私が北米の現地からみるこの図は、公表されている数字があまりにも低いと感じています。人口の少ないバンクーバーですら、ホームレスが急増しています。いわんや人口の多いアメリカの都心部で、この数字はすごく低く見積もっていると見ています。)日本では、住民票によって生活保護者の把握をしていますが、アメリカ・カナダは住民票が無いので、各自治体でホームレスのデータを集計していません。このデータは、あくまでも民間の調査による数字で、市や州の自治体は直接関与をして明確な数を把握していません。こちらは日本とはシステムが違い、北米の行政システムはホームレスなどの公的扶助は、NPO法人に丸投げしています。生活保護の大半は、民間のNPO法人で、ホームレスのシェルター(施設)やカウンセリング(医療)をして、セーフティーネットを作っています。
 日本は、行政機関が中心になってきめの細かい生活保護や補助金でホームレスにならないようにしていますが、北米は失業者になってからは救済システムがあまりないので、短時間でホームレスになってしまいます。
 いまのアメリカは、職に就きたくても就けない人が急増して、住宅ローンが払えずにホームレスになる人、家賃が払えなくてホームレスになる人が後をたちません。この貧困問題に対して、国は何も政策を打ち出さずに2年が過ぎてしまいました。加えて、多く不法滞在者や不法移民はホームレスに加算されていないので、それらを合算すると何千万人という人が住所不定・無職になっています。さらに、このデータは2022年なので2023年の新しい集計は、ホームレスの数は増えています。
 前回、エクセスセービングのことを取り上げて、北米の中間層を含めた一般労働者は、去年の10月からコロナ貯金(個人貯蓄)がなくなり、多くの人が生活困窮者になっていることを書きました。いま、北米は移民を大量に入れたことによって住宅不足になり、不動産バブルが起きて賃貸の値上げと住宅の高騰(固定資産税が上がり高額になっている)が、地元住民の生活を圧迫して支払いが出来ない人が急増しています。これらの要因が、失業者とホームレスを増加させ北米社会を壊しています。
 いま不思議なのは、これだけ失業者が増えているにも関わらず株価と不動産が高騰していることです。アメリカの大手メディアは、失業者問題と雇用状況についてはあまり取り上げません。株価だけを見て景気が回復に向かっている報道をしていますが、実体は物価高と失業者が増えて、深刻なスタフグレーションになっています。日本以上に物価が上がり、一般庶民が生活出来ない貧困社会に突き進んでいます。その状況を打破する政策を次の大統領は考えているのか? いまのアメリカの闇は、経済の立て直しの道筋を誰も持っていないことです。次の大統領は、待ったなしの経済の立て直しをしないと、所得格差が広がり貧困者が増大して国内はバラバラになっていくでしょう。日本のメディアは、中国経済の深刻さに目を向けていますが、北米経済も深刻な状態になっています。
 次回は、この続編でホームレス問題とチャイナマネーが深く関与していることを書きます。