武漢クライシスがもたらした、日本社会の崩壊
―昭和や平成に作り上げた、思考回路の脱却―

 世界は武漢肺炎に侵され、いまの現代人の英知ではコントロールできない状況になっている。この武漢肺炎は、去年の12月に中国で発症されて瞬く間に1000万規模の街を飲み込み、2ヶ月という早さで街の機能を破壊してしまった。その疫病は、中国と親密な関係にあった隣国をも巻き込んで、一瞬にのみ込んでしまった。さらに、その勢いは止まらず北米やヨーロッパに拡散し感染者と死者は日ごとに増えていき、見通しのたたない状況が各地で起きている。
 これから、報告することは北米でいま何が起きているのか。今後どのような、体制になっていくのか。
北米というフィルターを通して、世界を見て今後の日本のある姿を空間デザインしてほしいと思っています。今回の武漢肺炎は、日本だけが公衆衛生の問題と経済の低迷をしているのではありません。これから北米も日本と同じような状況になってくると見ています。アメリカやカナダの政府の対応を見ていると、この状態が進むとブロック経済のように人とモノの統制をしていくでしょう。北米は、次のステージに移りました。はじめは、対中国にだけ水際作戦で中国渡航者の入国禁止をし、その後に韓国も同じような処置をしてきました。その枠を日本にも広げていく方向に舵を切りました。3月5日にニューヨーク州知事が、中国・日本・韓国・イラン・イタリアで留学しているアメリカ人を、チャーター機で帰国することを発表しました。すでに、中国と日本を同じ枠にして、近いうちに日本への渡航禁止と日本からの入国禁止をしていく可能性が大きくなりました。現状は、州知事の決定ではありますが、後に国レベルになりカナダ政府も付随してアメリカと同じ政策をとっていくでしょう。アメリカとカナダの関係は、お互いが独立した国家体制のように見えますが安全保障や経済政策に関しては、カナダは常にアメリカに追随していく国家運営をしています。言わば、兄弟のような関係であります。この2国が、日本からの渡航禁止・入国禁止を数か月でも行ったら何がおこるのか。(この原稿を書いている最中に、3月11日ヨーロッパからの渡航禁止が発表されました。)
 いまは、公衆衛生の問題だけがクローズアップされていますが、人とモノの規制によって物流が止まってしまったら、一過性の問題ではなく何年にも渡って尾を引く問題になっていくでしょう。今回の武漢肺炎は、9.11やリーマンショック以上に日本経済に打撃を与え、既存の日本社会システムでは乗り越えることは出来ないと見ています。

 

「アメリカは、3年前から国体が変わってきている」

4年前の大統領の就任演説のときから、トランプ大統領は3つの柱を中心にぶれない政治をしてきました。「American First」「Buy American(アメリカ製を買え)」「Hire American(アメリカ人を雇え)」
この政策は、武漢肺炎のさなかでもアメリカは淡々と邁進して、1つ1つ結果をだしていっています。先日は、アメリカの若い命を無駄死にしてきた、アフガニスタンの戦争に終止符を打つような大きな、平和合意で終わろうとしています。タリバンと和平合意文章に署名し、アフガニスタンから5000人の米兵の撤退を5月までにすると発表しました。18年にも及ぶ戦争に終止符をうつ大きな分岐点になりました。
 アメリカは、世界各地の紛争の火種を1つ1つ精査し火を消しています。アメリカにとってリターンがないものは、そのことには干渉しない。不利益で不当と考えられるものは、改変していくことを徹底的にしてきています。経済・安全保障においても、自国ファーストの国づくりに舵を切り、かつての世界の警察の役割を終焉しようとしています。トランプ政権の根幹は、「忘れられたアメリカ人」をどう復活させるか? ラストベルトの言葉でもわかるように、長年にわたる米国の製造業の低迷。地域の荒廃と雇用を失ったアメリカ人の現状。外国製品の過度の流入によって、ラストベルトはさらに深刻になり、アメリカの経済を支えてきた製造業の人たちが、置き去りの状態で「忘れられた人たち」として時代に取り残されてしまいました。そんな中、トランプ大統領の出現によって、日の当たらなかった白人に日差しをあて、「アメリカ人の復活」を挙げて国づくりがはじまりました。前政権は、中国に依存した経済政策と政界・財界・軍が親中派を中心とした国づくりをしていたため、アメリカ人の富とスピリッツが失われていきました。(中国の外交工作の手にのった親中派は、パンダハガー<パンダを抱く人>と呼ばれ、アメリカの国益よりも中国に優位な政策ばかりを取ってきた。)結果として、アメリカ製から中国製にとって代わり、アメリカの製造業は壊滅の状態に追い込まれてしまった。中国にベッタリと依存した体制から、流れを瞬時で変えたのはトランプ政権である。まずは、米中経済対立を明確にして中国製品の締め出す流れを作り、ハイテク産業を中国からアメリカに戻す政策を打ち出しました。中国でサプライチェーンとして使っていた、アップルをはじめ自国で生産するよう圧力をかけて、アメリカに生産ラインを戻す決定をさせた。それに追随する形で、いろいろな産業がアメリカでの国産をする体制になっていった。この流れは、武漢肺炎によってさらに加速されると見ています。アメリカは、自国で経済が回るシステムの構築に着実に駒を進めていっています。現代版、令和モンロー主義が着々と進められている。
 その大きな流れを見ると、今後の日本との関係がよく見えてくる。仮に、日本が疫病で侵されていけば、モノと人との関係が断絶されてブロック経済に成っていくでしょう。アメリカにとって必要なら、日本経済が沈もうが政治不安定になろうが、日本の動向とは関係なく物流と人の行き来を断つでしょう。日本政府が、中国との断交が出来なかったのとは真逆で、世界の国々は国益を守るためなら、ためらわない、いとわない、はずです。
 実は、アメリカのCDC(疾病対策センター)では、コロナウィルスの感染拡大は今年から来年にかけて、アメリカでさらに感染者が出るとの見通しを示した。この発表によって、北米はCDCのガイドラインを基準とした対策を基に、ありとあらゆる政策を打ち立ててきます。いまの感染の進行を見ていると、アメリカも日本を後追いするかたちで、スポーツ観戦やアミューズメント施設への制限・無観客試合をしていくことになるでしょう。そうなれば、アメリカ経済が低迷することは間違いないです。特に北米の4大リーグ(MLB<野球> NFL<アメリカン・フットボール> NBA<バスケット> NHL<アイス・ホッケー>)の無観客試合をしたときには、どれだけの経済マイナスになるのか。アメリカ経済というと、マンハッタンのビジネスマンばかりが注目されますが、アメリカを支えているのは普通の庶民です。仕事と娯楽を楽しみながら、経済循環をしているのがアメリカ経済です。その1つの経済活動の機能が止まってしまえば、どれだけアメリカ経済を低迷させるのかわかりません。それに加えコンサートやアミューズメント施設(ディズニーランド・ユニバーサルスタジオ)の規制がスタートすれば、アメリカ経済の大きな車輪が止まってしまうことになってしまう。今回の問題は、直接庶民生活につながり富裕層・中間層・低所得層の生活循環を壊すことになり、すべてのアメリカ人の感情を刺激することになっていきます。そして、多くの人たちがレイ・オフになり、生活を圧迫していくことに繋がります。それに加え、アメリカは医療の治療費はとてつもなく高いので、普通の人たちは病院に行くことすらできません。(アメリカの医療システムは、いつか話そうと思います。)日本のように、病気をしたからちょっと病院に行くということは出来ません。ほとんどのアメリカ人は、病気になったら運命として、それを受け止めて病院に行けないで、治療が出来ずに死をむかえるというアメリカの闇があります。  感染の拡大は、日本以上に深刻になり特定の富裕層を除いて、治療することはできないでしょう。疫病による経済活動の停止になれば、アメリカでいままで起きたことのない事態がはじまります。そうなれば、American Firstの国づくりは必要以上に自国第一主義になり、国内産業を充実させドルの流出をさせない政策を打ってくるでしょう。令和版ブロック経済がはじまると推測しています。

 

「日本は、国内の令和恐慌がはじまる」

 この状態が続けば日本経済は、大恐慌までは行かないまでも恐慌レベルのことは起きると見ています。日本経済の過去をみると、次にどうなるのかがわかります。そもそも日本経済は、成熟社会になったことでモノを作っても売れない時代に入りました。その成熟社会を支えたのは、中国と北米でした。その第一の購買先の中国がどうなるか見通しが立たず、北米との取引が減れば日本産が消費できないことになり、外貨獲得ができなくなっていくでしょう。内需拡大の政策をうっても、国内市場には購買力がないので、さらに景気は低迷していくでしょう。給料のデフレは、さらに進み相次いで各業界の会社は倒産していくでしょう。かつてあった中流家庭が貧困家庭に転落していき、日本社会の大半が下層階級になっていくでしょう。なぜなら、いまの中流家庭の大半が、サラリーマン家庭なので、そのサラリーマン社会が壊れていけば、収入を得る手段を持たない人が増えるということです。いまの既存の企業体制や日本市場(サラリーマン社会)では、製造・物流・サービスも安定した収入(現金化であり経済循環)にしていくのは難しいでしょう。
 近年の日本経済は、外国人を中心とした観光産業に支えられて、どうにか日本経済を回してきました。その観光産業が低迷して、外貨を獲得する手段を無くしたいま、何を次の柱の産業にしていくのか? ここで、もう1つ大きな問題は、日本経済のけん引をしていた自動車産業が低迷しているということです。北米では、シェアー・カーやウーバーの出現によって車を持たない人が増えてきています。若者が日本と同じような現象になり、車が売れる時代ではなくなりました。(フォードやクライスラーの2018年モデルが、新車の状態で売れないで置かれています。)それに加え、ガソリン自動車ではなくEV(電気自動車)に代わっていくのも時間の問題だと見ています。日本の基幹産業だった、自動車産業が中国・アメリカで売れない時代が来たらどうなるか。多くの人が、リストラになり働く場所がなくなります。日本経済は、益々低迷していきます。
 今回の武漢肺炎によって、成熟社会の大きな産業である無形産業(個人の嗜好をサービスにしたショウビジネス・スポーツ観戦・アミューズメント関連)の興行ができなくなったことで、大きな経済の動力を失ってしまいました。その輪は、無形産業に関連している外食産業やプロダクション等の広告関連が低迷することは間違いありません。いつ、武漢肺炎の収束宣言が出されるのかわからないまま、すべての産業が低迷することで、経済活動の機動力を失ってしまっています。
 いま現在は、外食産業と観光業が壊滅的に打撃を受けていますが、その波はありとあらゆるところに波及していくでしょう。この状態が、5月まで続いたらどうなるか? いま、検討されているのは東京オリンピックが、開催されるか否かです。私の推測するに、3月10日現在でいまのアメリカの状態をみると開催は出来ないに近いでしょう。CDCの発表とアメリカのニュースの報道は、コロナウィルスの取り上げ方を見ていると日増しに増えています。ニューヨーク州に続いて、3月10日現在シアトルでは250人以上の集会を禁止しました。少し前までは、コロナウィルスはアジアのこととして報道していたことを、自国の公衆衛生に舵を切り始めました。それは、ニュースの枠を見ていればよく解ります。2週間前までは、大統領選の枠を多く取っていましたが、いまは集会の禁止条例と封じ込めエリアの話題が、トピックになり始めました。この状況をみると、5月までに混乱を収拾できるとは思いません。仮に、オリンピックを開催しても海外からの来日客は減り、宿泊施設や観光産業はそうとうに打撃を受けるでしょう。2月の中国の春節と同じように、ガラガラの銀座状態になると思います。

 

「いま、バンクーバーで起きていること」

 去年は、香港デモによって香港人が多くVancouverに生活を移した話しをしましたが、それと同じように増えているのが、韓国の若い人たちです。彼らは、文在寅政権になってから、カナダに移民する若者が増えました。日本とは、国に対する考えがまったく違っています。カナダに来る韓国の若い人は、ほとんどが母国を捨てる覚悟で来ているように見えます。韓国経済の先行きを諦めているのか、母国での将来の見通しが出来ないのかわかりませんが、ここに来る韓国の若い人は移民をとる目的で入ってきます。その彼らの覚悟と決心は、日本人がちょっと外国で語学を勉強しようとか海外体験しようとかのレベルの話ではありません。何がなんでも、ここに残りたいという意思があり、命がけで来ているところがあります。日本の人には、大袈裟に聞こえると思いますが、20代の彼らが母国を捨てる覚悟で、他国で幸せをつかむという意思と、体1つで勝負するという覚悟があります。彼らの強引さと無鉄砲さは、いまの日本人には熱量として熱く感じるかもしれませんが、それだけ生に対して純朴に生きていると思います。ほとんどの韓国人は、バックグランド(資本や技術)がないなかで必死に生きています。残念ながら、カナダに来る20~30代の日本の人には感じられません。
 はじめは、日本人と同じようにワーホリや留学生で入りますが、そこからワークビザを前提で仕事を見つけます。ビザのサポートをしてくれるオーナーを必死に見つけ、朝から晩までがむしゃらに働きます。そして、オーナーに気に入られたらワークビザの取得をして、そこから移民の申請をしていきます。
 移民のために、3~4年をかけることに厭わないで人生を勝負します。その多くは、韓国人経営の日本食レストランで働くのですが、帰るところを作らない崖っぷちの人生は、彼らの精神を鍛え自分の意志で人生を切り開く姿は、いまの日本人は見習わなくてはいけないと思っています。(別に、韓国の人たちを賛美しているわけではありません。) 多少の苦しみや辛さから逃げない姿勢はどこからくるのか? 自国に戻ったら、もっと悲惨な現実が待っているという、自覚の中で生きています。
 そこで彼らは移民を手にして、職業として日本食レストランを産業の媒体にして生活をしていきます。そして、韓国人のほとんどが、韓国人経営のすし屋を出します。(Vancouverのすし屋の60%が、韓国人経営のすし屋です。それに対して、日本人経営のすし屋は、5%もありません。)カナダ人にしてみれば、日本人が作ろうが韓国人が作ろうが、よく理解していません。あれだけ反日感情を出しながらも、生活が懸かると韓国人は、日本文化をいいように活用して、日本人に成りすましながらすしを作っているのが、バンクーバーのすし業界の姿です。彼らは、自国の料理の店よりも、すしの方が金になるのであれば何でもします。逞しさと図々しさを備えた生きる知恵なのかもしれません。外国で、韓国人社会が生き残る方法を築きあげた結果かもしれません。これが、民族生存競争の中で生きていく実態であります。 

 

「ピンチはチャンス」-いまこそ日本人は、世界の中心につくことができるー

 いままでの秩序が壊れることを、「不安ととらえるか」「希望ととらえるか」、精神の表裏一体だと思っています。会社からリストラされて、収入がないことが不安ととらえるのか。会社を辞めて、社畜ではなく自由に自分の責任で仕事を選べることができるととらえるか。ある意味、精神の思考回路で人生の道は大きく変わっていくと思います。日本には、いくつもの世界に通用するコンテンツが眠っています。ただし、従来のやり方では無理で、創造的に組み合せる必要があると思っています。
 不肖ながら自分の仕事の話をすると、ただの包丁屋だったら、とうに淘汰されていると思います。包丁屋と商社を組み合わせた、ビジネスモデルだからこそ、今日まで続けることが出来ました。そして、圧倒的に白人の店には負けない研ぎの技術とメンテナンス。日本の包丁の文化の話しと食材と道具の組み合わせ(日本の食文化)の説明で、他店にはないポジションを取ってきました。それによって、コアな客とプロの料理人に支えられ今日まできました。私がこの企画を作った時には、日本の包丁産業は斜陽産業でした。海外という場所を変えて、組み合わせをすることで1つのコンテンツが出来上がります。
 日本の産業は、日本国内で切磋琢磨した競争社会のなかで、研ぎ澄まされたビジネスモデルになっています。サービス・モノ作り・経営モデルにいたるまで、ありとあらゆる方向からモノを売る技術が、多民族に比べ圧倒的に優れていると思います。海外に出ればわかると思いますが、「これで売れるの?」という商品がたくさんあります。外食産業に至っては、類似商品・メニューを現地の価格やボリュームにするだけで、コンテンツになるものはいくらでもあります。サラリーマンの思考回路ではなく、発想の転換をするべきであります。サラリーマンは、雇用主がいて社内の単一的な労働に基づいて、時間をお金に換えていくコンテンツです。毎月、定額と定期的に収入が入りますが、単一労働単一賃金体系は変わらないでしょう。であるならば、自分で自分の仕事場を投資して作ってしまうコンテンツもあっていいはずです。確かに、自分の仕事になれば、単一的な仕事ではなく多角的な仕事をしていかなくてはいけません。それは、自由に想像して自由に行動ができるということであります。自分の収入を上げたければ、仕事をたくさん取ってきて時間をお金にすればいいだけです。収入よりも余暇や家族の時間を増やしたいのであれば、仕事を減らしてお金にする時間を他に回せばいいだけの話です。自分で投資をして、労働の場を作れば自由自在に時間とお金の関係を操ることができます。単一の労働のマンネリズムではなく、多角的な仕事は人生と経験値をフルに活用した、自由を獲得をすることです。生きることにおいて、これほど素晴らしいことはありません。そろそろ、日本人は働き方も含めて、何を大切にして生きていくのか考える時期に来ています。
 これからはじまろうとする、壊れていく日本経済をどう捉えるか? 発想の転換で、まったく違った生き方ができます。それは、日本国内にこだわる必要はないと思っています。むしろ、海外で自分たちの文化や仕事や生活をゼロベースで設定することで、新しい日本人の生き方がはじまると思っています。
 日本人が持っている、繊細で勤勉・勤労というツールを武器にすれば、どこの場所で生きようが必ず現地の人たちに受け入れられる仕事を作ることができます。前回にも書きましたが、北米は国自体が屋台国家です。いろんな人種が、民族と宗教をバックグランドにして商売と生活をしています。そのグローバル社会に参加するということは、民族を鍛えることになり子々孫々に英知を与えることに繋がると思っています。