歴史から抹消してしまった国防と国益 XⅧ
-国際秩序の崩壊は、平時状態だけでなく経済の崩壊にも直結している-

今回のウクライナ戦争は、世界のすべての秩序を変えてしまいました。プーチン大統領の帝国ロシアの復活を夢見た独裁政治からはじまった戦争でしたが、結果的この戦争は失敗に終わってしまいました。さらにこの失敗によって、いままでの平和秩序のルールは一変してしまいました。戦争なき世界秩序は、第一次世界大戦後に生まれた人類の英知であるウィルソン体制にはじまり、第二次世界大戦以降この体制によって大戦なき時代を作ってきました。その根本の発想である集団安全保障は、ロシアの侵攻によって75年以上続いていた人類の英知に終止符を打って、世界をカオスにしてしまいました。
いまは、ウクライナとロシアの戦争になっていますが、今後はヨーロッパ全土に飛び火をして集団安全保障の分裂と分断がはじまっていくでしょう。いま直面している世界の危機は、パワーバランス(核の均衡)が壊れていつでも戦術核を打つことが出来る状態になってしまいました。アメリカの絶対的な軍事力の低迷が、核保有国の自決によって核使用が出来るようになり、アメリカを威嚇する時代がはじまりました。これは、民主主義国家や独裁国家などの国体に関係なく、核兵器を国家や民族自決によって使える国際社会になったということです。この戦争で世界秩序の局面(安全保障の定義)が大きく変わり、核を保有している国は民族生存競争において有利に立ち、持たない国を侵略することがいつでも出来る状況になってしまいました。
この国際情勢の大きな転換点に日本人は、いまだに理解できずに戦後レジーム(Regime:体制・制度―大戦後の国際秩序)の中で、精神と現実の乖離の中で国のまつりごとをしています。日本の世論や政治を見ていると、戦後の平和主義という言論空間に支配され、戦時のロジスティックがないまま民族生存競争に突進しています。これからはじまる危機は、民族のつぶし合いの中でどのように国を残し民族の子孫を残すのか。まさに、民族の生存を柱にした自国優位の国益と自国中心の国際情勢になっていきます。民主主義国だろうが、その大きな波に巻き込まれ、日本も避けることは出来ません。民主主義陣営は、国家間の経済と国際秩序を中心にしているので、他国への侵略や略奪をする可能性は低いですが、自国の治安や経済が不安定になれば、いつ何時、不可侵条約や不平等条約で他民族を潰し合うか解りません。大陸(白人社会)の過去を振り返れば、いつでも自分たちの優位なルールに切り替えてゴール・ポストを移してきました。国家であろうが個人であろうが、存亡がかかった時には崇高な理念はどこかに行ってしまいます。それが、生きるものの本質であります。近々の問題として、これからヨーロッパで起こる情勢は治安が不安になり食料危機になっていくでしょう。そうすると安定した場所を求めて、民族の大移動がはじまり民族間の帰属意識が強くなっていきます。同時に、他民族を殺害しても自分たちの民族は残るという大きな力が、ヨーロッパからはじまっていくでしょう。
その一部ですが、いまウクライナで起きている現実は、イデオロギーや文化の戦争でなく窮困になったロシア兵が、民族の倫理や国軍のモラルとは程遠い強奪と略奪をする暴徒化された集団になってしまいました。この現実が、民族生存競争の現実であるということ。
この令和という時代に、第三次世界大戦がはじまったといっていいでしょう。コロナによって、世界が鎖国状態になり民族の移動の自由が無くなり閉ざされた世界になりました。そして、世界同時感染症が収束に近づいたとたんに、大国であるロシアがウクライナ侵攻によって、第二次大戦後続いてきた世界秩序を壊し、ヨーロッパの国家と民族の分断化がはじまってしまいました。この民族の分断化は、世界に飛び火して各地で民族問題が噴出していくでしょう。それに加えて、エネルギーと小麦の不足が深刻な問題になっていきます。各地で経済不況と食糧不足が起こり、世界規模でモノの争奪戦が始まっていきます。日本だけが、感染症対策だけに目を向けて、いまだに過去を向いた政治・経済・社会に、日本人は引きずられています。すでに、世界は次のステージに入り本格的な民族生存競争の幕開けになっています。

 

―日本の政治の無能と、世界規模で考えない無知―

日本の政治は、コロナ対策に引きずられて抜本的な規制緩和やマスクの着用するか否かで、強い政策を打ち出せないでいます。そして、日本社会はいまだにメンタルに引きずられて、過剰な不安と不必要な感染対策をして経済活動にブレーキをかけています。世界は、感染症の対策でなく、食料不足と経済の立て直しに軸を移しています。先進国では、マスクの着用義務はなくなり個人の意思にゆだねられ、入国規制もどんどん緩和されています。カナダは、外国から入るときにPCR検査の証明書はいらなくなりました。空港での入国時も、PCR検査はダイレクトにして、すべての人にはしていません。外国人を大量に入れて、経済の立て直しに邁進しています。いまは、Vancouverは外国人と観光客を増やしてコロナ前の経済に戻しています。北米社会は、次のフェイズに移り経済対策を重視した地域経済の立て直しに必死になっています。テレビ中継でもわかるように、スポーツ観戦やアミューズメント産業(コンサート)は通常運営にもどし、マスクして観戦や鑑賞をしていません。地域経済を回すために何が即効性があるかを理解した上で、行政側は何をするのか民間は何をするのかを明確に持っています。
日本では、いまだに政治家やメディアに出ている人たちはマスクを着用していますが、そろそろ彼らから外して通常社会になったことを示していくべきです。武漢熱も風邪と同じような症状になっています。日本の通常医療でも完治できる症状になっています。いつまでも、感傷や過剰な恐怖に支配されるのではなく、科学的な検知から医療インフラを整えて感染症に引きずられない社会システムを作るべきです。2年半にわたり、まともに機能しなかった経済を何から戻していくのかを、行政主導で明確にしていく必要があると思っています。外食産業・アミューズメント産業・観光を通常化に戻すことによって地域経済から復活することを政府主導でしていくべきです。これから、世界的な物価高に日本も巻き込まれて、日本経済は大きな打撃を受けてスタフグレーション(物価が上がっているのに、所得が上がらず家計費を圧迫していく経済)になっていきます。この波が押し寄せてくれば、地方経済は景気が回復せずに物価高騰が直撃し、さらに地域経済は破綻し地方から沈んでいくでしょう。
この問題は、国と経済界がこれから日本の経済をどうしていきたいのか、ビックピクチャー作ることにあります。このコロナによって、すべてがリセットされました。ゼロベースで、日本経済を考える時期に来ています。既得権益(経団連・連合・オールド・メディア)を中心に、日本社会全体をコロナ前の仕組みに戻そうとしていますが、先進国ではITを駆使した社会システムに移行して、いままで普通にしていた業務をITと労働(業務・仕事)を組み合わせることで、いままでの働き方とは違う方向に移行し始めました。その一例ですが、Vancouverのオフィス街に人はいなくなりました。そして、オフィススペースが閑散となり、あるオフィスビルは30%の入居になっています。それだけ、1つの場所に集まり対面で仕事をするという環境は無くなっています。通勤時間とオフィスの賃料をどこに代替するのかを経営陣は理解し、人件費(給料)に転換して質のいい人材の確保に動いています。日本の給料のデフレは、終身雇用で不要な人材を置くことと、オフィス賃料の固定化によって社内資本の流動化の鈍化することが一番の原因になっています。それに加えて、ほとんどの企業が右上がりの収益を上げられない現状が給料のデフレにつながっています。これから、抜本的な労働改革と個人の意識改革をしないと、日本はどんどん社会が低迷して先のない未来に、心も体も壊し自暴自棄になる人たちが増えていくでしょう。
日本社会は、大きな転換点であることはまちがいありません。国や経団連をはじめ経済界は、コロナ前に戻る仕組みの中で日本社会を構築しようとしています。それらの人たちは、パソコンも使用したこともなければITの意味すら解っていません。2~3年後の未来を予測することすら出来ない経営陣や行政のトップが、日本経済の中心にいることがこの国を低迷させている原因になっています。これからはじまる、世界の異常な物価の高騰は既存の経済の仕組みでは太刀打ちできないでしょう。