No.27

「なんてことしてくれてんだ」

 

 

仕事終わり、妙に…鼻腔に繋がる喉が痛い、と気づいた。

 

おばあちゃんは朝から「寒気がする」とか言う。
そういや今朝、なんか一瞬体がだるかったな。熱はなかったけど。

 

流行りのコロナウイルスとかだと、軽症者でもものすごくだるいって聞くし、熱出るっていうし。
倦怠感のレベルからして、なんか違う気もする。

 

でも、まさか…。

 

最悪の事態が頭をよぎったその時、脳裏にぽんっと、いつぞやの疫病の神さまが現れた。

 

「どうも〜」
「!?」
「それ、コロナウイルスではなくて、レトロウイルスの風邪です」
「!? は!?」
「あなたの体で作らせていただきました。知ってましたか? 人間の体ってウイルス生産できるんですよ」

 

知りません。なんですかそのトンデモ知識。
てへぺろ、と言いそうなすごい軽いノリで、すごいこと言われた気がす…

 

ていうか、私が第一感染者かーい!?
待って。待って。待って。

 

私、今日、何人と接触したーーー!?

 

マスク、会社だと息苦しいからってほとんど外してるし、ご飯食べてる時、普通にマスク外しながら喋っちゃったよ!
妙に今日はくしゃみ出るなぁと思ったよ!

 

いきなりスーパースプレッダーやらかしてるやないかーーーー!
実行再生産数いくらよーーーーー!?

 

「ひ、ひ、人の体を、何勝手に使ってくれちゃってるんですかーーーーーー!?」
「まずは精神学協会の皆さんから優先して配布をと思いまして…ふ、ふふ、ふふふふふふ!」
「Σめちゃくちゃやるなあ!」

 

しかもキャラ濃いなこの女神さま!
言っちゃ何だけど、めちゃオタクっぽい!

 

はっ。

 

そういえば、AさんとSさん、この前「なんか体だるかった」とか言ってなかった!?

 

いや、でも、ねぇ、これ

 

えええええええええ…?!

 

………よし。

 

「私ハ…何モ聞カナカッタ…」

 

そして、何も起こらなかった。
うん、そういうことにしておこう。そうしよう。

 

… …風邪ジャナイ。タブンコレ、風邪ジャナイ。
ソウ、コレハ…タダノ 細菌感染…。