麻ちゃん

麻のおふとんを
さよなら
することにした

その麻のおふとんはね
おばあちゃんちに
あったもの

おばあちゃんは今
介護の施設にいるの

施設に入ったあと
かーさまが
たんすを整理していて
出てきたおふとん

その頃
ちょうど 麻のおふとんを
探していたから
その おふとんを
使うことにしたのよ

麻ってすごいのね
ひんやりしたり
あったかかったり
魔法みたい

昔のおふとんだから
少し ずしっと重かったわ

一年使ったの

古かったから
すみっこがびりびりに
なってきて
中綿がみてえきたの

どうしようか迷って
かーさまに聞いてみた

バイバイ しようか

おばあちゃんの大事なおふとん
わたしが勝手に捨てるのはできなかったから
その言葉で 決心がついたの

おもわず
おふとんをぎゅーーと
抱きしめた

ありがとねー
ありがとねー
ありがとねー

この おふとんは
いろんなことを知ってる
おばあちゃん かーさまたちの家の出来事
酸いも甘いも知ってる

わたしは一年しか
お付き合いできなかったけど
お世話になりました

しばらく抱きしめていたら

お話にしてほしい
忘れないでほしい

と伝わってきたの

麻ちゃん
忘れないよ
また わたしたちのところへ
きてね

おばあちゃん
かーさま
わたし

わたしで最後

次は わたしから 始まるの


あさ
朝が始まるの

麻ちゃんに
SEKI塩ひとつまみ ぱらぱら
お別れの涙と鼻水も
たくさん
こすりつけといたわ

おふとんとの お別れで
こんなに 切なくなるなんて

今夜 真夜中
可燃ごみのところに
持っていくわ

さよなら
麻ちゃん
またね

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