歴史から抹消してしまった国防と国益 Ⅷ
―ワクチン接種で国を2分化―

 日本では、そこまで問題になっていませんが、先進国の各地でワクチン接種の強制が国民を分断化し社会を崩壊させる方向に向かっています。そもそもの始まりは、ワクチン接種を自由としながらも特定の職種や公共性の高い職業に対しては、ワクチン接種を義務付ける法や条例が可決したことで国民の自由と権利が侵害されたと、怒りが噴出し社会問題になっています。
 カナダは、10月7日にトルドー首相が連邦政府で働いている人に、ワクチン接種を義務付けると発表しました。医療や宗教上の理由がある人(アレルギーや持病でワクチンを打てない人・点滴や注射などを認めない宗教を信仰している人)を除き、全職員にワクチン接種の義務になり従わない者には「休職扱い」にすることが決まりました。自動的に、レイ・オフになる法が可決しました。
 このほかに、国が監督する航空・鉄道(航空会社・空港・長距離鉄道駅)などの従業員にも接種の義務化がはじまり、乗り物を使用するお客さんたちもワクチンの接種の義務化が10月30日からはじまりました。11月1日からワクチンを打っていない人は、飛行機に乗ることも出来なければ長距離バス・電車に乗ることができなくなりました。(対象は、12歳以上の人。PCR検査を受けて陰性でもワクチン接種をしていなければ利用できない。ただし、市営の電車やバスなどは乗れる。)
 すでに9月からワクチン・パスポートがはじまり、レストランでの飲食はワクチン接種の証明をしなくては、外食をすることが出来なくなっています。

 このQRコードと身分証明書(免許書やパスポート)を入店時に見せて、QRコードをスキャンして本人確認をしてからレストランで飲食ができるという法・条例が施行されました。違反したレストランには、罰金などのペナルティを与えることをして、ワクチン接種による生活自由度の差別化がはじまりました。
 家族や友人に打たない人がいた場合、その人だけが来店できない状況になっています。コロナ禍で1つの楽しい団らんが、レストランでは出来なくなり打った人と打たない人の価値観の分断化を作ってしまいました。北米では、この問題は「自由権とプライバシーの侵害」になるとして、ワクチンを打たない自由を唱えている人たちの声が大きくなっています。これにより、夫婦・親子関係もバラバラになり家庭不和の状態にまでなっています。職場や知人の間ですら、分断化を招き「コロナからの恐怖」対「MRNAワクチンの信憑性」の対立軸になり、いままでになかった価値観の衝突にまで発展しています。

 先日、Vancouverでは大規模な「打たない人の自由」のデモがあり、市役所前と病院前で大量に人が集まり、救急患者が治療できないという事態まで発展してしまいました。そして、7~8月とレストランは活気を戻し売り上げを伸ばしていたのですが、9月に入りワクチン・パスポートの義務化が施行されて、売上にブレーキがかかり経済を止めてしまうという事態になってしまいました。
 ワクチン接種の問題は、新たな人の分断化が起こる不思議な時代に入ってしまいました。本来、社会には共有や相互扶助という機能が上手く潤滑して、信頼・良心で人が繋がっていたはずです。家族・友人は、お金や契約社会とは別の次元で超絶した人間関係で社会を支えてきました。それが、いとも簡単に壊され共生・相互を否定した社会に変わってしまいました。イデオロギーや宗教や民族という埋められない人類の溝が、人種差別や宗教観の対立になり、どうにか英知を絞り出し対立のない社会を北米社会は育ててきました。共有生存と包摂を中心にした社会を目指して長い年月で、少しずつ人類の溝を埋めるための社会を前に進めてきました。しかし、武漢熱がはじまり感染症の恐怖とワクチン接種で、家族や親友というコアな人間関係を分断化して、人が持っている嫌疑や憎悪を拡張し一瞬で世の中を変えてしまいました。いま、北米では子供にワクチンを接種させるか否かで、大きな論争になっています。ファイザー社はカナダの厚労省に子供5歳から11歳のワクチン接種の許認可を求めて動いています。
 もし、これが通ればカナダの教育現場も大きく2分化していくと思います。いま教育の現場では、カナダの大学生と職員にはワクチン接種が義務化になり、ワクチンを受けていない学生は原則登校出来なくなっています。(特例として、アレルギーや疾患がある人だけは、ワクチン接種の免除になっている。)ワクチンを打たないことを選択した学生は、授業を受けることもできなければ、実質単位を落とすか休学扱いになっています。
 メッセンジャーRMAワクチンの検証が明確にならないまま、ワクチン接種を進めていくことが賢明なのか疑問に思っている人たちが多いのは事実です。アメリカでは、2回目の接種率は56%で止まっています。カナダは、日本と同じように2回目を75%以上接種になっています。(アメリカでは、このワクチンに疑問を持っている人が多く、黒人を中心に接種を拒否しています。過去にワクチン接種を人体実験してきた歴史が背景にあり、ワクチン接種率が上がらない原因になっています。)ワクチン接種派と反対派によって、住民やソサエティ(職場・学校・コミュニティー)の共存と相互が難しくなり、民族間の分断で国が分裂するのではなく武漢熱によって分裂する火種があちこちで起きています。これから、経済をどのように立て直して通常社会に戻していくのか、分断化されつつある社会をどのように修繕していくのか? 経済の立て直し以前に、コミュニティーや住民自治の心の立て直しから、見直さなくてはいけない事態になっています。

 

―忍び寄る国の分断化―

 未だに、カナダは財政出動をしてバラ巻き政策をして経済を支えています。本来は、去年の9月に終わっていた助成金を今年の10月まで延長に延長を繰り返しきました。国家財政も大幅な赤字になっています。その財源をこれから、どのように回収をしていくのか、深刻な問題に直面しています。先月の選挙では、トルドー首相が勝ちこれまでの政治運営が支持されました。しかし、この奇怪な社会をどのように乗り越えていくのか、明確には示さずに当選を果たしました。2年近く経済が止まった状態が、正常化に戻ることが本当にできるのか? 先の見えない国づくりがはじまりました。いまカナダ全土では、コロナ後の危機や不安を感じる空気にはなっていませんが、不気味な静けさと鎮静化した世の中になっています。この静けさは、いつまで続くのか疑問視しながら見ています。(以前にも書きましたが、来年の2月には補助金や失業保険の支援がなくなり、確定申告がはじまり徴収課税がはじまったときに、財政政策で潤っていた景気が冷え込むからです。)その危機が近づいているにも関わらず、経済の立て直しをどのようにしていくのか政府はいまだに示さずに、武漢熱がパンデミックになるのか収束するか状況を伺っています。庶民の生活は、平常さを保ちながらも闇がいろんな箇所で出てきています。
 その1つは、いま外食産業で深刻な問題が起きています。それは、国が助成金や失業保険を出し続けることによって、レストラン業界が忙しくなりつつあるにも関わらず労働者が集まらない事態です。働くより生活補助を受けていた方が、安定した収入が入るので働くことをしないという選択を、国民に選択させてしまいました。個人単位では、さほどの金額(1人2000ドル:日本円18万円)にはなりませんが、夫婦2人とか家族単位で補助金を受けたら十分に生活できる状況になってしまっています。それによって、労働市場メカニズムが壊れてしまい、求人広告に時給18~21ドル(時給1600~1800円)というとんでもない給料設定にして、募集をかける事態になってしまいました。昨日まで、料理学校にいた未経験者や新人の子に高額を払い、以前から働いていた従業員の給料は据え置き(16~17ドル)にするという不思議な経済構造を作ってしまいました。その給料格差は、職場の従業同士の亀裂にもなり、長年働いていた人たちが転職するという悪循環になって、店全体の能力が低下し売り上げを落とすことになってしまいました。厳しいコロナ禍を支えていた従業員と経営者の関係が崩れ、人間関係の分断化が起こり経営を悪化させている状況になっています。これによって、初期のコロナを乗り越えた店も、第二の波によって経営がままならない状況になっています。景気が戻ってきているにも関わらず、労働市場が壊れたことによって店をたたむ経営者が増えてきています。公衆衛生から、二次災害による労働市場の崩壊と人の心の分断化にステージは変わってきています。コロナが収束しても、いままでのビジネスモデルが通用するのか疑問を持っている経営者は多く、抜本的な経営の仕組みを変えないと上手くいかない現実に直面しています。

 このように、小さな人間集団でも人の分断が起き、どのように修復していくのか? 生活をするための経済活動が、まともに出来ないといいう根深い問題は、日本だけでなく世界の各地で起きています。政府は、キャッシュを回すことばかり注視していますが、事業をする人たちが出てこなければ、働く場がなくなり貧困化にも繋がっていきます。この矛盾をどのようにしていくのか、過去の秩序(法)と経済(マネー)では社会を回すことが出来なくなっています。

 

―日本人が知らない、チャンスの到来―

 日本だけが経済的に打撃を受けているのではなく、全世界の社会が壊れているのは事実です。この冬にロックダウンの発令が再度起こるのか、誰もが注視しながら今年の冬を見ています。去年のように、ロックダウンをしたときには、北米内で「ワクチン神話」が崩れて各地で暴動がはじまるでしょう。ヨーロッパもそうですが、各地で時限爆弾をかかえた状況になっています。ワクチンとガバナンスの関係(国を挙げてワクチンの正当性を唱えてきた関係)が崩れると、世界は大きな暴動に発展して無秩序の世界(去年、シアトルのダウンタウンで起きた占拠等)に向かっていきます。いま、北米や欧州社会は、首の皮一枚で繋がっている状態であり、悪夢が起きないように願っているのが実態であります。日本のメディアは、株価や表層的な経済面だけを見てアメリカ経済の評価をしていますが、実際の現状は不安定であり、いつでも治安が壊れる状態になっています。一般の庶民生活と株価は、大きな乖離があり通常経済とは違うところで動いています。
 いま、日本社会は景気が冷え込み、デフレに進んで自分たちの環境が最悪だと思っている人が多いと思います。しかし、2022年以降の世界を設計する答えは日本に眠っています。そのことを、多くの日本人は気づいていません。そして、厄介なのは日本人にはその答えが見えず、他人種には見えるという悲しい現実になっていることです。一番の問題は、海外に出たときに自分たちの価値(お金だけでなく、技術・勤勉・誠実)が、どこにあるのかが理解できていないことです。そして、行政も民間もこれから何を中心にして日本民族として生きていくか、指針がないことが最大の問題であります。世界は、大きな産業構造の変革がはじまっています。そのときに、世界の各都市で産業の隙間が出来て、日本人の技術(特別な技術でなく、庶民が持っている労働力)を輸出するチャンスが来ます。その技術は、料理人から理容・美容師や肉屋や豆腐屋や大工など数上げれば限りない人の技術で、日本人が世界に進出して成功する機会がでてきます。日本は、過去30年間経済規模が変わらず、若い人たちの労働と時間を食い物にして民族弱体化をしてきました。いま、岸田政権は「新しい資本主義」という名の下で国の立て直しをしようとしていますが、昭和の高度成長期の「新居」と「正社員」(マイホームと正規雇用)という古い仕組みのなかで、国の立て直しをしようとしているように見えます。こんなことでは、国内のデフレ脱却は出来ないでしょう。そもそも、外貨を稼ぐ力が衰えている中で、どうやって内需を拡大するのか? 終身雇用の仕組みは、民族を消滅させていく装置になっています。唯一、外貨を稼ぐ自動車産業ですら、あと数年で外貨を稼ぐことは出来なくなります。そのときに、自動車産業にかわる基幹産業は何にしていくのか? その答えすらないまま日本は迷走をしています。
 いまの岸田政権になってから、非常に危惧しながら日本の行く末を見ています。日本の政ごとは、官僚主導の昭和の古い体質に逆戻りしようとしています。もし、コロナ後も次世代に低賃金で働かせる構造を作ったときには、日本はさらに弱体化して、他民族に従属した立場(奴隷のような社会)で民族は生きていくことになるでしょう。いまの日本の産業構造は、年配者を支えるストック要員でしかなく、日本人だけが貧困になっていく仕組みになっています。この構造を脱するには、既得権益に捉われずに次世代の産業構造を作りだし、未来に向かう社会にしていく必要があります。法とマネー(規制社会<法・既得権益>)によって若年者を潰し合う仕組みを変えるヒントは、海外に転がっています。
 その産業構造を脱するひとつの方法が、庶民レベルの技術や労働力を海外に展開して、北米に市場を作ることだと思っています。ノースアメリカは幼稚産業であり、日本のように成熟産業ではありません。庶民生活の必需品や技術(理容師・美容師・大工・料理人)を、高い質と安い価格で提供できる民族が日本人以外にはいません。世界には、いくらでも日本人が活躍できる場があり、自分たちを活かす場があります。そろそろ、日本人が脱していかなくてはいけない思考は、昭和・平成に作られた経済構造の「働く」という価値観だと思っています。このコラムは、「世界市場にすれば66億の市場が転がっている」という趣旨から書き始めました。コロナによって、北米も既存の社会がつぶれて新しいものに変わろうとしています。その隙間を狙って自分たちの誇りや技術や文化を輸出し、北米社会に浸透させていく大きな機会が目の前に現れています。
 日本には、勤労と勤勉という人をつなげていく人知を持っています。この人知をノースアメリカで再構築して、壊れゆく日本文化の立て直しをすることで、次世代に新しい日本人の生き方を示すことに繋がります。そろそろ、日本人はそこに目を向けるべきです。