No.55

こんな言葉が上がってきた。

お腹の中に小さな誰かがいた。

かみさまは、勇気と正義は教えてくれたけど、愛は教えてくれなかった。という。

もし、愛を知っていたら、ここまで来るのに、あの旅路で、あんなに辛い思いをしなくてよかった。

いまさら愛を知れなんて、ずるい、という。

愛されたいと希望しながら、愛などいらない、愛されない、欲しいものはどうせこの人生では手に入らない、と絶望している、矛盾のかたまり。

愛など知らなければよかったと言う。そうしたら、今生を通して、こんなに惨めな、寂しい気持ちになんてならなかった、と。

知ってしまえば戻れない。怖い。嫌だ、と。

どうせ手に入らないものなら、一人でいた方が、諦めた方がずっと楽だと、そう言うのだけど。

でも、かみさまの勇気と正義を知っているなら、君は前に進むでしょう。君は愛を知りたいのだから。

それが、君の旅への報いではないの?

そう問いかけたら、小さな彼女はしばらく躊躇っていたが。

「分かった。愛を、受け入れる」と言って、お腹の中でほどけて、頭の座へ上がっていった。

ホワイトに確認したら、ちょっと驚いた感じで。

「頭の波動が変わってる」

とは言ったけど、どう変わったのかは、まだ、よく分からない。

これで、何かが変わるのだろうか。。。