『中禅寺湖…そこへ』
力ない龍神と、玉を持つ鳳凰
=そこでないと去れないのですか=
日光へ向かう途中、別の者が水の中を泳ぐ龍のビジョンを見た。
=あなたではないですね。しかし、強い絆を感じます=
湖に近づくにつれ、雨が激しく車を叩く。
中禅寺湖へ着く頃には雨は弱まっていた。
…そして、雨があがった。
私は車を降りる。
龍神は白く、そして小さくなっていた。
しかし、湖に入ると、一瞬にして体が大きくなり、青緑のうろこが身体を包んだ。
髭とまつげ、それから角のようなものが生えて、瞳は美しく凛々しかった。
力強く泳ぐ龍神に、元々湖にいた龍神が近づいてきた。
すると、2体は螺旋を描きながら上へ昇っていく。
2体は同じものか。それとも、ペアなのか…。
上へ昇る龍神を鳳凰が見る。
鳳凰は持っていた玉を手放し、2体の龍へ近づく。3体が一緒になると、強く発光した。
『ここでなければ…』
最後に一言残して去った。
中禅寺湖に、太陽の光が射していた。