歴史から抹消してしまった国防と国益 62(号外)
―ウクライナ戦争の終結-
ヨーロッパでは、すごい事態が始まっています。ミュンヘン安全保障会議で、ヴァンス副大統領(JD Vance)が乗り込み、アウェイな状況の中で演説をして、アメリカの方向を明確に示しました。まずは、動画を見てから解説をします。
(英語の演説ですが、日本語訳にすることで字幕が出てきます。)
https://cruel.org/candybox/JDvanceMunich2025_j.pdf
(文字起こしをしてくれた方がいたので、参考に載せときます)
あの若さで、国家観と民族観を明確にして、自分の言葉でアメリカはどこの方向に進むかをしっかりと語る姿には驚いてしまいました。先日のトランプ氏との対談で、おどおどしていた首相と比べるものにならず、あの気概と堂々とした姿勢は、いまの日本社会では出てこないでしょう。アメリカの面白さは、あのような人材を生み出す力があり、ダイナニズムが潜んでいることです。日本では、次期首相に小泉進次郎と言っていますが、比較にならないぐらい器が2~3回ぐらい違います。たった、20分の演説でしたが、紙を読むのではなく前政権を否定して、全く違う国家観で自分たちは向かうことを表明しました。さらに、ヨーロッパ社会に対して、リベラリズムが自分たちの未来につながる「国づくりか?」という、大きな問いかけをして説教じみたことをしたことです。
そして、いくつものキーワードがあるのですが、
「ダボス会議の否定」
「グローバリズムの否定」
「リベラリズムの否定」
「環境問題の否定」
「トラディショナルな民主主義に戻せ」
「宗教観的な正義の道徳観を取り戻せ」
これを盛り込みながら、叙情的に彼の独自の世界観でスピーチをしました。ただし、ヨーロッパは歴史が古くアメリカ的に横柄に上から言われると、そのことが正しくても冷ややかに見ているところがあり、あの会場での空気はアウェイ感が伝わってきました。加えて、今までアメリカはウクライナ側に付いて、対露路線でいたにも関わらず、政権が変わるといきなり親ロ路線に変わる身代わりの速さにも、ヨーロッパ人は憤りと唖然が入り乱れる、何とも言えない空気がただよっていました。この演説のすごさは、彼の演説の内容もさることながら、あの雰囲気の中に単身で乗り込み、イデオロギーの喧嘩をヨーロッパ諸国としている姿を全世界に示したことです。日本のオールド・メディアは相変わらず表層的なことばかり言っていて、何が論点か報道をしていませんでした。
あの安全保障会議は、世界が大きく変わる分岐点になったことは間違いありません。そして、ヨーロッパの安全保障の大転換が、この日からはじまりました。
今回、1番の目的はアメリカの安全保障の姿勢をどうするのか?
ほとんどのメディは伝えていませんが、プーチン大統領に対してのメッセージが根底に組み込まれていました。その大舞台に、名も知られていないヴァンス氏に任して、世界の中心に立ちました。これまでに、副大統領が歴史を変えるような大役を見たことはありません。いままでの副大統領は、大統領が何かあった時のスペアーとしてのポジションで、大きな仕事をほとんどしてきませんでした。しかし、今回の副大統領は大統領にしてもおかしくないぐらいの実力と、国を動かす力を持っています。
あの目を見てもわかるように、ヨーロッパ陣営に自分は、鉄砲玉で行っている覚悟がありました。その人間模様とバック・グランドを意識すると、ミュンヘン安全保障会議がメディアが伝えていることとは、全く違うものとして見られます。
「ウクライナのための計画?」
(これも日本語の字幕がでるので、面白いです。)
ミュンヘン安全保障会議にて、ウクライナ外相、英国外相、ポーランド外相、リトアニア外相と会談するケティケロッグ米大将。
日本人は、直接関係することではありませんが、そこに国の代表として参加している大臣やポストの人たちが、「国を背負って」自分の言葉で話し、国家観と国益を中心に添えて話しているのがわかります。これを見ると日本の国会が、いかに茶番であることがよくわかります。役人が作った台本を、ただ棒読みをしている姿が、いかに馬鹿げた世界なのか。いまの日本の国会議員の中で、このディベートで日本の国益を語れる人はいるのでしょうか?
-ゼネンスキー大統領の豹変ぶり―
今回の大きな目玉は、アメリカ側とウクライナ側の代表団の会談でした。ゼネンスキー氏とヴァンス氏の両者の目と態度をみていると、どっちに軍配があがったのかがわかります。ゼネンスキー氏の方は、そわそわして目が泳いでいるのが解ります。それとは対照的に、ヴァンス氏の目は座っていました。
後日、ルビオ国務長官とキース・ケロッグ陸軍中将が、今後のウクライナ情勢は話すと言ってきれいにまとめていました。それ以外のことも伝えていたと思います。あのそわそわ感は、いままでのバイデン政権のときとは全く違い、ゼネンスキー氏の勇ましい姿はなく、アメリカの後ろ盾が続かないこと以外に、ウクライナ戦争が一体何だったのかをトランプ政権は握ったと見ています。今日は書きませんが、ゼネンスキー大統領は平和という看板を掲げながら、アメリカのディープ・ステイトと何をしてきたのか? 新政権はつかんでいて、彼に深層について迫ったんだと見ています。
―日本のオールド・メディア-
これまでの解説とストーリーから、日本のNHKの報道を見比べると、現実と日本の報道があまりにも表層的なことしか伝えていないことが、理解できます。日本の報道での論調は、ヨーロッパとアメリカの意見の相違があり、この溝を埋めるのは時間がかかるようなことを言っていますが。今回のヴァンス氏の演説が、すべてだったと思います。
ヨーロッパは軍事的にロシアと対峙している状況ではないと。
リベラリズムとグローバリズムの促進は、亡国になるので民主主義を戻す必要があるというメッセージであり、ここにアメリカのGrand Strategyが組み込まれていました。この肝心なところが抜けていて、国家間のズレと情緒論で日本に報道をしていました。これでは、日本の人たちは世界で何が起きているかを理解できません。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250215/k10014723491000.html
あの演説で、ヴァンス氏が一番協調していたことは民主主義の復活です。
この演説の冒頭でも言っていることを引用すると、
「私がヨーロッパについて最も⼼配しているのは、ロシアでもない、中国でもない、どんな外部アクターでもない。私が⼼配しているのは、内部からの脅威です。ヨーロッパが、その最も根本的な価値観から後退しているということなんです。アメリカ合州国と共有している価値観からの後退です。」
リベラリズムやグローバリズムの否定で、ダボス会議とかで出ている環境問題やふざけた議論に振り回されるなという提唱でもあり、アメリカはそこには戻らないという宣言でもありました。そこを、茶化してグレタ氏のことを言っていましたが。この演説の本質は、目の前の移民問題と、民族の価値判断ができなくなっている社会こそが敵である。と文明論にも触れていたことです。あの短時間で、国家安全保障・パワーバランス・文明論・歴史観・宗教観を盛り込んで国家論を語る人間が、アメリカ政治の中心になっていることです。日本が考えなくてはいけないのは、ヴァンス氏に対峙できる国会議員を生み出さなくてはいけないということです。そこが抜けていて、日本の報道をするから本質がつかめないのです。
―「戦争終結のレイヤ」と「両大統領の手打ち」―
冒頭の「ウクライナ戦争の終結」ということの理由は以下にあります。トランプ大統領が、移民難民問題の次に国家戦略に置いたのが戦争終結です。この戦争終結をするにあたり、3つのレイヤで出来ているということが、この安全会議ではっきりしました。実は、ミュンヘン安全保障会議の前に、プーチン氏とトランプ氏がお互い信頼できる関係であるのかを確認するために、国家間で証明するものを作りました。それが、第一レイヤです。
第一レイヤは、ロシアで教師をしていた米国人のマーク・フォーゲル氏の釈放でした。3年以上服役をしていた歴史の教師と、米国でロシア人のハッカー犯罪者として服役をしていた人の釈放をバターで、お互い帰国させるということでした。これが実現した後に、両大統領は1時間半にわたる電話会談をしました。そのときに、NATOの問題をどうするのかが話されたと見ています。次につながるのが、ミュンヘン安全保障会議です。
第二のレイヤが、ミュンヘン安全保障会議です。この時にロシアに対して、何をレイヤにするか? それは、ヨーロッパの安全保障と軍のGrand Strategyです。すでに、アメリカのシナリオはできていました。直接、トランプ大統領が行くのではなく、彼の懐刀のヴァンス氏を派遣し、ウクライナにすべて負を背負わせて、ヨーロッパで流れを作ることでした。
いまヨーロッパでは、反発と動揺でアメリカの姿勢を非難する人たちも多いと思います。しかし、戦火が広がれば難民問題と軍事問題とエネルギー問題が同時に起きて、国が存続できるかの死活問題になります。ドイツが批判をしているのは、バイデン政権の時は「対露姿勢で軍事強化しろ」と言い。新政権になったとたんに、親露路線にしてくれという国家戦略が真逆になることに憤っていますが。長いスパンで見たときに、何が正解かを彼らはわかっています。確かに、一時的に腹が立つのは当然のことです。
そもそも、ドイツにしてもフランスにしても、ロシアとは軍事でもめ事をしたくないというのが、本音のところであります。地政学的に見てもエネルギーの供給にしても、ロシア抜きではヨーロッパ経済は回らないことを知っているからです。今回のヴァンス氏の提言は、ヨーロッパ全体は「棚から牡丹餅」であり、早く停戦をさせたいという本音があります。
あの演説で、呆れた部分も50%はあったと思います。ただし、大半が度肝を抜かれ「誰もが言えないこと」を言った安堵感も同時に起きたと見ています。いまいち反応が鈍かったのは、呆れが50%と驚きが50%で、あの最後の拍手になりました。でも、はっきりしたことは、ヨーロッパの空気を一新させてアメリカの国家戦略に乗せたことです。仮に、ある国やNATO内部で「ロシアの侵略した領土をウクライナ変換しろ」という意見が出たときには、トランプ大統領はその国や代表に対して、「あなたは、自国の威信でこの両国の停戦ができるのですね。」
と言ってすべての責任をその人に任せて、何もしないことを宣言するでしょう。そのシナリオでいくと、いまのヨーロッパでイギリスもドイツもフランスも国家を挙げて停戦か終結できる国はありません。
実質、ウクライナはこの状況で終結するしかなくなりました。
ヴァンス氏が耳元で、「アメリカは交渉に応じない。資金も軍事支援も打ち切る。」ということを明確に伝えたと思います。ゼネンスキー氏のそわそわした態度は、そこから来るものだと思います。
さらに、プーチン氏への強烈なメッセージにもなりました。YouTubeで世界に流すことによって、ヨーロッパ陣営の姿が伝わり、プーチン氏が懸念していたNATOの方向がロシアに向いていないことが明確になりました。
第三のレイヤが、「米露首脳会談が近日中に行われる」という歴史的な会談が水面下で進行していることです。トランプ大統領とプーチン大統領とムハンマド・ビン・サルマーン皇太子兼首相(サウジアラビア)の首脳会談が、未定ですが3月中に行われるでしょう。ムハンマド皇太子が見届け人になり、ウクライナの戦争を終結する手打ちをするんだと見ています。
私の独り言ですが、安倍晋三さんが生きていたら、この対談に晋三さんも呼ばれていたと思います。なぜなら、中国の覇権をけん制する意味でも、コスト安のパフォーマンスになるからです。さらに、トランプ氏は義理堅いところがあって、一度信頼ができた人間には、好意的につながるところがあります。今回のムハマド皇太子を、見届け人に選んだのも友人だからです。トランプ氏の政治理念の中に、「戦争嫌い」と「効率とコスト安」で決めるところがあるので、米露首脳会談の見届け人として晋三さんも加えたら、一瞬にして東アジア問題の火を消すことができると計算したと思います。もしくは、見届け人に晋三さんを頼って、米露の会談を日本でしていた可能性もあります。
話しは戻しますが、すごい勢いで世界は進んでいます。ウクライナ戦争の終結は、3つのレイヤで構成されていて、2つ目のレイヤが成功した時点で、ゼネンスキー大統領の出てくる隙間はなくなりました。いまは、彼はいろいろと訴えていますが、ここ数か月で彼がアメリカのディープ・ステイトと何をしてきたか、表に出てくると思います。後に、自国民を犠牲にしてCIAのパンダとして私腹を肥やしたことが、表面化していくでしょう。
アメリカを中心に、世界はレジームチェンジをしています。そのことに気づいていないのが、日本の政治家とオールド・メディアです。岸田政権下では、ウクライナに莫大なお金を出して、政治家風情に酔っていたのが日本国のトップです。一体何に使われたかわからず、日本人の血税を渡し国益に全くつながっていません。いつまで、馬鹿げた政治を日本はしていくのか? くだらないリベラル思想や、古いアメリカの体制に捉われない価値観で、見ていかないと世界を捉えることはできません。