タケのバンクーバー通信

歴史から抹消してしまった国防と国益 47
-カナダ移民の裏と表-

 北米は、移民政策の失敗があらわになり深刻な状態になっています。その根幹にあるのは、地元経済と外国人の経済循環の2極化で、先住していた庶民が貧困化になっていく構造が作られました。これまで、アメリカの西海岸を中心に失業者と不動産高騰と物価高騰を書いてきましたが、カナダも同じ現象が起きています。先住者が、ホームレスか貧困になる確率は高く、都心部は地価が高くなってしまい生活が出来ないので、どんどん地方に追いやられています。さらに、ガソリンの価格高騰により物価高と不況(職が少なくなっている)になり、スタフグレーションとなって庶民生活はコロナ時より深刻になっています。今回は、現地の生の声としてカナダで何が起きているかを書いていきます。
 アメリカとカナダは類似点が多く、普通に住んでいても差は理解はできません。言語も同じで、移民で成り立っている国家なので、詳細に見ていかないと国の政策や特徴の違いは理解できません。ただ、パンデミック以降、カナダはアメリカとは違う方向に進んでいることが少しずつ見えてきました。ただし、この移民政策に関してはアメリカと同様に失敗し、アメリカほど格差社会にはなっていませんが、マイナス面があらわになりました。

 カナダは、1990年後半から中国系の移民を大量に入れてきました。上の図を見ても解るように、中国系移民の数が伸びているのがわかります。前回も書きましたが、香港返還を境に中国人移民をカナダも積極的に受け入れてきました。次の図は、毎年どれくらいの移民を受け入れているかの図になっています。2007年からですが、毎年3万人前後を受け入れているのがわかります。 

 90年代と00年代の大きな違いは、90年までは香港を中心とした移民が多く、本土からの移民は殆どありませんでした。アメリカに追随するかたちで、中国人の移住者を受け入れ、カナダも多くの本土の人を入れるようになりました。さらに、本土の人たちは大量のお金を持って(裸官と言われる人)、中国本土からお金を飛ばしはじめました。前回、アメリカ編でも書きましたが、彼らはそのお金で不動産投資をして、マネーロンダリングをはじめます。加えて、家族を移住させカナダの永住権までが、1つのセットなって中国人の民族大移動がはじまりました。
 図を見ても解るように、毎年3万人前後が入るということは、10年続けば30万人になり、20年続けば60万人になります。その大半が、この西海岸のバンクーバーに移民できています。
 想像してください、自分たちの街に異国の人たちが数年経つと何十万人にも増えている世界を。いま、世界の各地で起きていることは、バンクーバー周辺で起きている移民問題ですが、実際は民族の衝突(格差社会)がはじまっています。それを国家が先導してやっていることに、先進国の国民は気づきはじめました。
 では、なぜカナダは中国系移民を大量にいれているのか? 日本の感覚で見ると不思議に思う人が多いと思います。実は、アメリカもカナダも移民をビジネスとして捉えている部分があります。カナダも人口減少に、苦しんできた国で、移民を受け入れることで人口を維持し労働力の補てんをしてきました。これまでに、毎年25万人前後の移民を受け入れて、人口を増やしながら国家を形成してきました。しかし、8年前にトルドー政権になってから30~40万人に移民の数を引き上げて、積極的に移民を受け入れてきました。さらに、2023~2025年にかけては毎年50万人に引き上げる政策をうちだしました。その理由は、今後10年以内に900万人のベビーブーマーとされた高齢者がリタイアし、労働者不足になるという理由からです。
 トルドー政権は、人を増やせば購買力も上がり景気も上がると考えたのでしょう。しかし、実体は大量に人口を増やすことを、地域経済を考えずにしたので、大都市の住宅数と人口のバランスが壊れてしまい、常に居住する場所がない状態を作ってしまいました。そこに、外貨を持った中国人が不動産投資をしたことによって、トロントやバンクーバー周辺の不動産は高騰して高級住宅を中国人が買い占め、不動産バブルが起きてしまいました。以前から住んでいたカナダ人は、固定資産税の値上がりと物価高騰によって都市部には住めず、そこから離れる人が続出しました。いま、バンクーバーは30~40%の高級住宅地は中国系になっています。
 その結果が、顕著に出ているのは学校で、私立・公立学校では生徒の大半は中国系が占めて、大学はほとんどが中国系の生徒になってしまっています。教育費も年々高くなっていき、地元のほとんどの人が大学まで行けない状態になっています。
 では、なぜそこまでして移民を入れて、国を回そうとするのか? 先にも述べたように、北米社会は移住者をビジネスとして考えているところがあり、1人を移民で入れることによって、どれだけの経済効果があるかが前提になって国策としてやっています。カナダは、移民1人当たり最低でも1万ドル(100万円)は、個人が負担することになります。移民弁護士(又は移民エイジェント)を雇い、そして国に手数料を払います。1万人移民を受け入れるだけで、カナダに1億ドル(100億円)が落ちる仕組みになっています。
 ただし、多くの人はカナダの永住権を迅速にとるために、ここでの職歴や学歴を作ります。例えば、留学生は最低でも学費が年間1~3万ドルかかります。加えて、生活費を入れると3~4万ドルはカナダで使うことになります。4年間学校に通った場合、15~20万ドル(1500~2000万円)の金額を落とすことになります。就労ビザの場合は、ビザを取得するまでに2000~5000ドルの費用がかかり、労働不足のところに人が入り、2年間の就労ビザが出るので納税義務が発生します。そのプロセスをして、申請料として1万ドルの費用がかかります。この流れを見ても解るように、カナダの永住権を取得するのに、多額のお金と消費と労働も兼ねているので、どれだけの経済効果があるのかがわかります。
 そして、カナダ政府は移民の審査をするときに留学時や就労時に何の資格を取り、どれくらいの税金を払っているかもつぶさに調べます。加えて犯罪履歴なども調べ、危険人物でないかも調べます。その個人が、カナダ社会に適合して労働と納税義務を果たすのかを、留学・就労期間を見ながら厳正な審査をして永住権を出します。移民システムは、単純に「異文化と多様性社会を共存する社会」というきれいごとの話しだけではありません。移民をしたいのであれば、生産力と労働力があるのかを証明し、国のどれだけ忠誠をするのかをその期間で見せてください。そういった、狙いがあります。主導権は、あくまでもカナダ国にあり個人にありません。
 さらに、移民システムには外貨を持っている人には、優遇された仕組みがあります。上記のプロセスとは違い、富裕層に特化した移民プログラムになっています。中国人は、このプログラムを使い大量に移住をはじめました。そのプログラムは、投資移民という仕組みで、審査が簡素化されて永住権を取得する方法です。それは、200万ドル(2億円)以上保有していることが前提で、カナダにそのお金を持ってくれば基本誰でも永住権が取れるシステムに成っています。(200万ドルは、預金, 不動産, 株式, 保険契約等を含む配偶者の資産も計上可。)簡単に言ってしまうと、2億円の家を買えさえすれば永住権を所得できる方法です。個人移民のように、時間もプロセスも省いて移民になれます。言わば、金さえ積めば誰でも永住権を取ることが出来るシステムです。この移民システムを使い、多くの中国人が本土から資本を流出し、民族の大移動をして不動産バブルをおこしました。彼らの世界観は、一族を守るために永住権を取るので、「日本人のように海外生活したい」という単発的な価値観では見ていません。

 なぜ、ここまで中国人が民族の大移動に成功したのか? その理由は、2つの理由があると見ています。1つは、移民システムを熟知した上で合法的にしたこと。2つ目は、中国人はカナダやアメリカの移民ビジネスを逆手に取って、永住権と経済圏を取ったことです。この居住地の侵食をしたことで、結果、彼らだけが儲かる経済圏を作ってアメリカ人とカナダ人を貧困層にするシステムが出来上がってしまいました。やっと、その事実に気づきカナダ政府は、場当たり的な法整備に動き始めました。
 トルドー政権は、2023年から2年間時限法として外国人の住宅用不動産の購入を禁止しました。その政策は、焼け石に水レベルですが、外貨規制をはじめました。加えて、留学生の規制もはじめました。2024年度は、前年度の35%の留学生をカットして、36万4000人にすることを発表しました。少しずつではありますが、外貨による経済構造の見直しがカナダでははじまりました。
 当初政府は、移民ビジネスが国富を増やし、国民を豊かにする装置だとしていましたが、実体は移住者が経済的に優位に立ち、先住民は貧困になる装置になっていることが政府も理解したようです。いま、カナダのメディアや学者などは、そのことを取り上げて問題にしていませんが、必ずこの闇が表面化するときが来ると見ています。