タケのバンクーバー通信

歴史から抹消してしまった国防と国益 52
-労働史観と民族観と文明の衝突-

 カナダは、最低賃金の引き上げたことによって、地域経済が壊れはじめて街の荒廃が広がって、アメリカに追随しています。カナダの最低賃金は、広大な土地なので国レベルで決めるのではなく地域経済・人口・地域物価などのバランスで、各州の自治体で調査され地域の経済循環で決めています。しかし、コロナ以前から経済循環が壊れて、マネーだけが独り歩きをする社会になってしまいました。「移民国家の正体」が表面化し、移住者と外国資本によって地域経済が壊され、いままで経験をしたことのない社会になったということです。普通に暮らしていた人が、異常な物価高と不況で生活が出来ない状況になっています。今回は、カナダ行政を中心に2回に分けて実態を書こうと思います。1回目は、移民国家の労働史観。2回目は、最低賃金から見る経済政策の実体と庶民生活。多民族国家と行き過ぎた資本主義が、いま深刻な状態になっていることを伝えていくことをテーマとします。

 カナダの労働法規は、州ごとによって定められEmployment Standardsという日本にあたる労働基準局が、取り締まっています。日本は、労働時間と賃金の関係が曖昧で、サービス残業や契約賃金以下の支払いをしても、労働者は訴えることもしなければ、会社側も深く関与せず労使関係を続けています。しかし、カナダは契約社会で労働時間や賃金が契約通りでないと、すぐに雇用者が訴えて労働基準局の調査が入ります。そして、労働者の未払いが解ると、すぐに支払うよう行政指導が入ります。場合によっては、罰金刑にもなるので経営者側は、賃金や労働時間には神経質になり、なるべく残業をさせないような労働体制(残業代は、基本給の1.5倍になる。基本時給17ドルであれば、25.5ドルになる。よほどでないと残業はさせない。)を作って経営をします。ここでは、日本とカナダの労働価値の違いがあり、多民族と仕事をする難しさがあります。移民国家は、いろんな人種の労働慣習があるので、時間と賃金を柱にした労働を明確した労使関係で成り立っています。日本の労働慣習は、暗黙の了解で仕事を回す癖があり、賃金と時間と労働の関係が極めて曖昧なところがあります。日本は、単一民族(厳密には違いますが)で教育や言語の均一化で、生活環境や慣習がほぼ変わらないことが、労働規範など詳細な契約がなくても潤滑に回る仕組みが、できています。北米では、すべてを言語化にして役割と責任を明確にするところから仕事がはじまります。(他民族は労働価値観がまちまちで、日本のように繊細さ・仕事率・丁寧さを言語化しても、なかなか伝わらず仕事の均一化をすることは難しいです。)
 北米においては、何を労働の基準にするのかは難しく、日本のように高いレベルのサービスを求めても、まずそれ以上の仕事をする民族はほぼいません。「時間とお金」という2つの基準を設けて、労使関係を作っています。万国共通していることは、「仕事の時間」と「個人の時間」は明確に分けていて、時間内に仕事が終わらないと最後までせずに、途中でやめて帰ってしまいます。仕事の達成よりも、時間で切ることをします。北米社会は、労働は生活の手段になっていて、労働に情や深い感情を入れて仕事はしません。どこか、労働を割り切って見ているので、日本のサービス残業(ただ働き)という概念はなく、北米人が長期休暇で1~2週間は取るのは、自分の時間に比重を置いているからです。
 その価値で北米の労働システムは、出来上がっています。だから、労働者がすぐに労働基準局に申請するのは、会社に迷惑をかけるとか同僚との関係が悪くなるとか、深く考えていません。加えて、労働基準局もすぐに調査に入り、契約時の労働時間と賃金体系を見てすぐに判断をします。数日か数週間で結果と行政命令を出し、労働者を擁護する労働環境に成っています。日本のサービス残業で、1ヶ月100時間したとか、過労死は北米では理解できない世界です。

 そこだけを聞くと、北米は労働者に優しい環境に見えますが、その労働システムにも裏と表があります。それは、日本人には理解できない部分で、簡単に人を切ることが出来るシステムがあることです。業務時間内に仕事が終わらないと、いつでも解雇をさせることが出来ます。それに、少しでも経営が悪化すると労働者の時間と賃金をカットします。
 日本の労働システムは、複雑な労働慣習で終身雇用や年功序列賃金という、世界では稀な仕事の仕組みを持っています。すぐに労働者を切らない環境で、長く働くことを「美」とする価値観からなっているので、日本人の仕事観は単純化出来ない「情と義理」の世界観になっています。長い年月をかけて人間関係を作り、仕事を人生と一体化して独特の労働価値観を持っています。多くの日本人は、仕事を人生の大半にして「仕事=人生・命」にする世界観の中で成り立っているので、暗黙の規範や閉塞感が質の高いサービスになっています。
 いま日本のメディアでは、スタートアップとか起業を推奨して、北米型の能力主義や出来高制の賃金に労働環境にしようとしていますが、日本民族は、この働き方に向いているか、一度立ち止まって考える必要があるかもしれません。日本人は、仕事をお金だけに割り切ることが苦手で、稼ぐ手段として捉えられない人生観を持っています。日本の勤労精神は、仕事と人生が1つになり、仕事仲間や家族がセットになっています。
 仮に、日本で北米型のように、簡単に労働時間や給料を減らされたら、「個人の人格」を否定されたと想い、大方の日本人は精神的ダメージで鬱や精神疾患になるでしょう。それは、日本人が独特の労働価値観を持っているからです。ものごとには、常に裏と表が存在して、根っこがどこにつながっているのか?を考える必要があります。
 日本社会は、失われた30年と言われ、賃金が上がらずに貧困層が増えている現実もあります。斜陽産業や古い既得権が、日本経済の発展を止めて若年層を低賃金で縛り付けて、次世代に繋がらない経済体質になっているのも事実です。すべて、日本の労働システムを肯定する気はありません。どこかで、古い産業構造を壊して、新しい産業構造を作り日本の勤労精神を絶やさない方法があるのか、模索していかないといけない時期に来ているのは、間違いありません。民族の生存として、低賃金にしかならない社会を変えていく必要はあります。ただ、北米の労働システムを移植し北米社会に追随することが、次世代の仕事のカタチであるのかは疑問に見ています。仕事は、民族の性格の上に労働環境が出来ているからです。

 北米の労働システムは、人をモノとして捉えているので、いつでも切り貼りできる道具として見ています。日本民族は、人間関係を大切にして仕事に命を吹きかけて、生命体の一部にする特殊な能力を持っています。そして、人と人を繋ぎ労働で小宇宙にコミットする特殊な民族です。北米の労働史観は、労働を奴隷制からスタートした歴史からはじまっています。‟Black lives matter”や‟Cancel culture”は、北米の労働史観が根底にあり、過去の遺恨と「自由・平等」という矛盾が解決できず苦しんでいるのが、いまの北米社会です。
 日本では、20代の若い人たちは国際関係や国際金融マーケットを勉強して、マネーだけを追いかける学問をしていますが。アメリカ社会の実体は、上位1%の人がアメリカの国富の3割を握る社会を作っています。カタチを変えた奴隷システムを作って、国が崩壊しています。日本の次世代は、本当にその世界に進んでいくのか?
 私が、常々言ってきた「民族の生存競争」というキーワードですが、それは労働史観から見ると、世界の構造がよく解ります。そして、いま世界は「富の概念」の対立になっています。北米に追随する仕組みが、日本の富(マネーだけでない財産・文化・幸福)に繋がり日本民族の文明につながるのか、私は否定的に見ています。ワーホリや留学で来る人の大半は、北米式の経営スタイルが最先端の英知と信じています。貴重な10~20代に、北米で失敗した仕組みを必死に追いかけている姿は、猿回しのサルにしか見えません。敗戦後の日本は、拝米主義を政治から教育に至るまで洗脳させられ、民族大改造をさせられました。労働は、民族の言語や慣習や生活環境が柱になって文明になり文化になっています。そこには、民族観や国家観が背景にあり、長い年月の中で民族の死生観がそこにはあります。
 移民国家である北米は、人類の壮大な実験場でもありました。そして、白人至上主義が効かない限界の中でもがいて、マネーで大衆を奴隷化する仕組みを作り、その終焉が近づいています。
 いま、私の最大の興味は、移民国家が労働史観の違う民族と共存できるのか? ここに、とても興味があります。北米は、これからますます経済が壊れて、大きな分岐点に来ます。まさに、サミュエル・ハンチントンが言っていた、「文明の衝突」がはじまりました。北米は、多民族世界の縮図であり、アメリカの崩壊は世界の崩壊とリンクしています。
 その意識で世界を見ないと、次の世界を見ることは出来ないでしょう。2024年は、近代文明が終わろうとしています。本当に、日本から国際人を作るのであれば、労働史観に基づく日本人を育てることです。北米は、多民族国家で「文明の衝突」の最前線でもあります。そこで、民族観と労働史観を持って北米で仕事をすると、民族生存競争の意味がわかります。少なくても民族観が理解でき、他民族と対立(喧嘩でなく、日本民族の得意性)できる人間形成になります。その意味では、日本文明が外に出ていく大きな機会であることは間違いありません。次世代は、そこを目掛けて突き進む力を養うことが、次の日本人の姿だと思います。

 PS: 三徳プロジェクトを北米のVancouverからスタートをしました。いままでは、包丁文化を世界に出すことをしてきました。今回のプロジェクトは、波動農法と日本の食文化と次世代の日本人の労働を、1つのセットにした北米で日本文化の小宇宙を創るプロジェクトです。興味のある方は、参加してください。
https://note.com/takefuyu/