タケのバンクーバー通信

歴史から抹消してしまった国防と国益 XX
-ガソリン価格から見るてくる北米社会と未来の日本-

 北米社会をはじめ世界の各地で、異常な物価高騰によって普通の生活ができなくなってきています。その状態は、ヨーロッパでも起こり、エネルギーの高騰から食品・生活必需品・家賃に至るまですべて値段が上がり、過去の常識では考えられない事態になっています。バンクーバーを例にすると、ガソリン価格の高騰は常軌を逸し2倍にまでになり経済循環の根本が壊れてしまいました。以前は、1ℓ110~130ドル(100~130円ぐらい)でしたが、コロナがはじまり、じわじわと高騰しウクライナの侵攻がはじまったとたんに1ℓ2.30ドル(230円ぐらい)にまでなりました。北米は、四駆やピックアップトラックを使用している人たちが多くいるので、この高騰は生活そのものを揺るがす状態になっています。コロナ前までは、四駆車を満タンにすると130~150ドルでしたが、250~350ドルの出費になり、生活費を直撃し、郊外に住んでいる人たちは、一家に2~3台は所有しているのでガソリン代が一ヶ月に2000~2500ドルが当たり前の状態になっています。都心部を少し離れれば、交通インフラがないため通勤・通学するため車が生活必需品になっています。それに加えて、郊外はどこに行くにも距離があるので町中で走るよりもガソリンをつかうことになります。このガソリン価格の高騰は、都会に住んで車を持たない人たちよりも郊外に住んでいる人たちの生活に直撃しています。日本では想像しにくいのですが、北米の車社会は自動車の安定供給とガソリン価格が生活の柱であり、経済安全保障の1つになっています。その北米社会のガソリン価格の高騰や下落は、選挙にすら影響をするほど生活と政治と経済が複合的に絡み合っています。(日本の場合は、ガソリン価格はもとが税金で高くなっているので、いまは補助金で価格の高騰を抑えています。そして、経済安全保障の観点から大量の備蓄があるのでガソリン価格の高騰は日本では起きていません。日本は、国民の知らないところでエネルギー確保を国益として経済安全保障の立場から国民生活を守っています。)
 話しを戻します。いま北米は、6月の最高値(1ℓ2.30ドル)を境に1ℓ1.90ドル前後に推移するようにはなってきましたが、いぜんガソリン価格が高いことには変わりません。(写真:レギュラー・ガソリン1ℓ $233.9 表示)

 ロシアの侵攻とガソリン価格の高騰が同時に起きたので、ロシア侵攻の方に気を取られてあまり社会的なデモや非難は起きませんでした。もし、ロシア侵攻がない状況で、ガソリン価格の高騰があった時には、北米は至る所でデモと暴動が起きていたでしょう。いまは、静かにしていますが今後どのようになるかはわかりません。
 このガソリン価格の高騰で注目するべきは、すべての業界に波及して北米経済に大きな打撃を与えています。コロナがはじまってから2年、ロックダウンと規制の中で経済を強制的に抑制して、通常の経済活動を止めてきました。やっとコロナが収束して、通常社会に戻そうとした矢先にガソリン価格の高騰が起こり、すべての産業に大きな岩を乗せられた状態での復興になりました。ガソリン価格の高騰は、個人消費だけの問題ではなく社会インフラの最低コストを上げて、商品や物流・サービス産業(外食産業・観光業)にいたるまですべてに影響を与えて、北米がいまだかつてない物価高になってしまいました。
 先日、レストラン業界の人と話した時に食材の原価が40~70%は上がり、その中でもサラダオイルが120%上がったと言って嘆いていました。どのレストランもフライヤ―器を置いているので、レストラン側にしてみればサラダオイルはいわば車のガソリンと同じです。その価格の高騰は、大きな打撃を与えています。北米の物価高の現状は、日常品においては1~2ドル(100~200円)上がるのは当たり前で、モノによっては4~5ドル上がっています。日本では、10~20円上がったとか言って大騒ぎをしていますが、北米の物価高騰は日本の常識では考えられない値幅になっています。日本では、企業や生産者が経営努力によって高騰価格を吸収して、消費者に負担をかけないように一生懸命に経営努力をします。しかし、北米は価格が30~50%上がろうが「コストが上がっているからしょうがない。」という認識があるので、すべて消費者に価格を転嫁する仕組みで経済が成り立っています。それもあり、消費者も素直に受け入れ「買えないならば諦める」という暗黙の社会秩序でなりたっています。ある意味、消費者に忖度しないで価格設定しているので、需要と供給の変動がまともに機能しているのかもしれません。(日本の物流は、消費者価格が前提になっているので卸値を上げることが出来ず、理不尽な卸価格と労働者のサービス残業なので、自国の経済を締め付けている。)いずれにせよ、世界で起きているコロナ後の経済の体制は異常な事態になっています。

 

―2極化する資本主義―

 コロナ以降の経済を見ていて、面白いことに気づきました。それは、どこを向いて経済を回そうとしているのか2極化しているということです。日本は、経済の立て直しを消費者(庶民)目線で潤滑化を図ろうとしています。しかし、北米は企業や労働者に比重を置いて経済の立て直しをしています。日本で言う企業優位という考え方とは違うもので、労働者の雇用を増やすことで社会を潤滑にさせていくという北米式の勤労システムが機能しています。実は、北米は賃金も高騰しているので企業だけが社内留保できる仕組みにはなっていません。これは、面白い対極の経済の立て直しだとみています。日本も大変ですが、北米も大変な時代を迎えて誰も来年の社会を想像することすらできず、目先の景気だけを見て惰性で社会を回しています。
 日本という国の不思議なところは、これだけ世界はインフレで悩まされているにも関わらず、ほとんど物価を上げずに社会を回していることです。日本社会は、消費者の側に立ち、価格を上げずに生産者や労働者にインフレを吸収させて、経済と社会を回すことで「民のかまど」の原理をはたらかせていることです。しかし、北米やヨーロッパはすべて消費者に価格転換して経済を回して、労働者を介して隅々まで金流を流そうという仕組みの中で動いています。
 いま、北米の賃金体系は異常なほど上がっています。例えば、レストランで働くと経験がない人でも時給16~18ドル稼ぐことができ、経験を持った人なら時給20~25ドルの収入になっています。物価高騰になっていますが、人件費も高騰しています。ただし、その人件費の高騰が真っ当な景気の中で算出されたモノではないことは経営者の殆どがわかっています。2年前に多くの人はレイオフになり、どこの職場も人員削減をしたことにより人手不足になった状態がいまも続いています。今年になっても求人をしても人が集まらず、どの業界も人員が足りないまま営業をしている状態になっています。雇用主は、人員を集めるために賃金をアップして募集していますが、それでも人が集まりません。その人件費が費用対効果から捻出してきた労働価格でないことは経営者の誰もがわかっています。コロナ収束前の体制に戻し、必要な定数と人材の確保をしたいのですが、人材が足りないことで会社運営を止めることが出来ないとする経営陣の判断があります。多くの経営者は、人件費の大幅赤字と50%の稼働率でも次につなげることを優先してジレンマの中で会社を稼働させています。(その一例は、世界の空港で荷物が紛失し乗客の荷物の仕分けが搭乗者の便に載せられないというのは、すべて人材が確保できていないところから出ています。)
 日本のニュースでは、北米は景気回復をして賃金も上げていると言っていますが、実情は人手不足による賃金の高騰であり好景気によって生まれてきた賃金体系ではありません。ここは、日本のメディアが言っている情報と現実の実体が乖離していることは見ておいた方がいいです。
 ここではっきりしていることは、コロナ禍において経済がどうだったのか? という根本の違いを見ておく必要があります。片方は、レイオフをして人材を一時解雇して会社が空洞化した状態でした。日本の企業は、大変ながらも労働者を抱えて2年間耐久してきました。ここを踏まえて日本とは対極の経済復興政策があり、状況も環境も全く違うところからスタートしていることは念頭に置かなくてはいけないと思っています。経済評論家や株式評論家の話しを聞いていると、非常に浅いレベルでの社会認識で語っているところがあります。
 (蛇足ながら、なぜ北米の景気がいいのか? いまホテルの宿泊費もコロナ前の3~4倍の価格で全室が埋まっている状態です。北米・欧州の人は、夏休みに長期の旅行をするので夏の時期は必然的に景気が上がる仕組みになっています。それに加えて、2年間規制があったので今年の人の移動は、コロナ前よりも増えています。ただし、秋から冬にかけて今後の景気がどうなっていくのか? この半年は、規制緩和と自由渡航による2年間の反動が、特需になっています。この半年の需要と供給バランスは、歪なインフレ状態になっています。)
 日本は、いい意味で過剰な物価高騰にならず消費者側(庶民側)に立ちながら、経済を回しています。しかし、日本の場合は物価が上がり給料が上がらないスタフグレーションという最悪の経済体質を内蔵しています。ここで、私がすごく懸念しているのは、世界のインフレの波が日本に押し寄せてきたときに、日本経済はどう立ち振る舞っていくのか? 素朴な疑問を持っています。世界各国は、どこもインフレに悩まされ解決がない中で経済を必死に回しています。日本だけが独特の経済で、社会を回し物価高騰を抑えています。日本という国の不思議さは、常に世界の標準とは違う社会の流れで循環していることです。感染症にしても、武漢熱が蔓延して各国が最悪の状況になっていても圧倒的に感染症を抑えて社会を回してきました。今回の経済状況も日本だけが独特の経済で回しています。そして、2年前とほぼ変わらない物価水準を保ちながら社会を回しています。これは、世界から見れば神がかり的な社会の維持をしています。(日本に居ると自分たちの周りの状況で、社会を見ることしかできませんが、少し視点をずらしてマクロ的に見ると違った風景が見えてきます。日本と北米を知っている人間がありのままの事実を言えば、日本は世間で言っているほど経済も社会も打撃を受けていません。他国の方が物価高になって、住宅に住めないでホームレスになる人が増えているのは事実です。)

 

―荒れ狂う世界経済の波―

 しかし、これから来る経済の波に対しては日本人の英知が問われます。今度はインフレという荒波が押し寄せてきます。そのときに、上手く切る抜けることが出来なければ最悪のシナリオになり、日本経済は一瞬にして崩壊して日本社会の貧困化は加速していくでしょう。そして、さらに失われた30年が続き次世代は低収入と低所得者層の社会になっていくでしょう。そうすると日本は、後進国に転落して二度と這い上がることが出来ないと見ています。日本社会の大きな闇は、コロナ前から続いている学歴社会と企業体制だけに依存して、国家観や民族観がない金もうけ依存の国づくりで来たことです。端的に言えば、平成に入ってから何一つイノベーションをせずに、高度成長期に作られた経済モデルと企業体制を続け、未来につなぐ政治体制も基幹産業も作ってこなかったことが最大の要因です。それによって何十年に渡るデフレと低賃金体系で、日本人は低価格に慣れてしまいまともな価格設定ができなくなってしまいました。それは、日本企業が世界に出て行っても低価格設定にするので、日本の国益につながるシステムにはなっていません。いまの日本は、基幹産業も衰退して国際競争力もなくなり、労働対価(給料)もデフレになり後進国に近い賃金になってしまいました。その状況の中で、世界のインフレの波が来た時に日本人は何を柱にして民族観を持ち世界に打って出るのかが、問われる時代がはじまろうとしています。
 いまは、日本の国内でのガソリン価格や物価高騰はそれほど大きな問題になっていませんが、ガソリン備蓄の枯渇がはじまりこれから円安での取引がはじまれば、日本は北米で起きている状況にもなっていくでしょう。特に、ロシアの侵攻がはじまってから円安が進んでいます。円安は、外国のモノ(小麦・原油・資源)を買うときに不利な条件で取引される仕組みです。輸入に頼れば国内のお金が出て、貿易収支は赤字になり内需の疲弊(国内の貧困化を加速する)にもつながっていきます。
 各国は、経済の立て直しに迷走しながら民族生存競争に勝ち抜くためもがいています。どのようにして国民生活を通常に戻して、コロナ前の安定した社会に戻すのか。北米は、壮大な社会実験の中で物流鈍化による価格高騰・ガソリン価格の高騰・全体的品不足による高騰という、社会問題を解決しようと動いています。果たして日本は、どのような未来と社会像を描いて進んでいくのか、日本人一人一人にも問われています。日本には、幾つもの英知と未来につなげるワザ(業であり技もある)が潜んでいます。それを実体社会に投入するだけで、日本は大国になり世界の中心になります。その意味を多くの人は気づいていないことが、この国の最大の問題だと思っています。