歴史から抹消してしまった国防と国益 59
-世界は同時多発の不況-
2024年も終わりに近づき、世界は不気味な動きをしています。以前から、北米はすごい勢いで不況の波が押し寄せてきていることを報告してきました。特に酷いのはカルフォルニア州で、日増しに失業者が増えて強盗が至る所で増えて、日常生活が出来ない状況になってきています。カナダでも景気低迷は避けられず、今年のクリスマス・シーズンは時限的な減税を発表しました。カナダの首相がXで、11月に投稿をして執行は12月にという異例の速さで、減税がスタートしました。

内容は、JETROが簡素で完結に書いてあるので、そこを引用します。
<カナダ歳入庁(CRA)は12月13日、全カナダ人のための減税法(Tax Break for All Canadians Act)が前日の12日に議会で可決されたと発表した。同法は12月14日から2025年2月15日まで、消費者が物品を購入する際に課される連邦物品サービス税(GST)と統一売上税(HST)を免除する。
同法は11月21日、カナダ財務相によって「カナダ人のポケットにお金を入れるため」として、議会に提出されることが発表されていた。政府によると、同法の施行によって、推定16億カナダ・ドル(約1,728億円、Cドル、1Cドル=約108円)が控除されるとしている。
対象となる品目は多岐にわたり、食料品、飲料、レストラン・ケータリング・その他の飲食店、子供の服・靴、子供用おむつ、子供用チャイルドシート、子供の玩具、ジグソーパズル、ビデオゲーム・ゲームコントローラーおよびゲームソフト、紙の本、印刷された新聞、クリスマスツリーなどで、GST/HSTが免除される。
同期間中、税控除は自動で享受することができ、領収書を保存する必要がない。さらに、輸入品に対しても、特定の日用品ならばGST/HSTが免除される。>
詳しく知りたい人は、カナダ政府のCRA(財務省)のサイトを見るといいです。
https://www.canada.ca/en/services/taxes/child-and-family-benefits/gst-hst-holiday-tax-break.html
この景気の冷え込みは、11月時点でこれまでのクリスマス・シーズンとは違うと想定して、カナダ政府は緊急でかつ時限的な減税で民間経済の活性化に乗り出しました。このシーズンは、プレゼントや外食産業でお金が動くので、北米経済にとっては大きな経済活動のシーズンでもあります。どの店でもこの時期は、年間の1/4や1/5を売り上げるので、店によってはこのシーズンに売り上げが立たなければ、来年存続が問われる大事な売上時期でもあります。この2~3年は、コロナの影響もあり多くのレストランや店が潰れて、空き店舗が増えて‟For lease“のサインを至るところで見るようになりました。かつては、For Leaseのサインが出ていれば、すぐに次のテナントが入り街にも活性がありました。しかし、この1~2年は次の借り手が現れずに空き店舗がどんどん増えています。そして、1つ空き店舗が出てくると、その隣も空きになり連鎖し一角がゴーストタウンのようになってしまっています。北米の街が死んでいく光景は、日本のシャーター商店街とは違うので、説明するのは難しいのですが。空き店舗の前にホームレスが住みつき、景観は荒廃し普通の人が怖くてその周辺を歩くことをしなくなります。Vancouverのダウンタウンでも、そういった場所が増えてきています。

先日、2週間弱日本に帰って感じたことがあります。それは、北米とは比べものにならないぐらいに、普通に経済が流れていたことです。人によっては、日本も景気は低迷して大変と言っている人もいますが。北米から見ると都会には、多くの人が消費をしてお金が流れているので、どこが不景気なのかがよく解らないほどでした。駅にはたくさんの人が溢れ、異常な数の飲食店があり北米では考えられない光景でした。表面的な部分しか見ていないので、地方の過疎や貧困層の深刻さまでは見ていませんが、それでも都会の状況をみていると、まだまだ日本の経済は深刻なところまでいっていないと感ました。
この状況を日本の人たちも不景気であるとは実感しつつも、適度に生活が出来てしまう人が多いので、あまり深刻に捉えていないのかもしれません。これが、街の至るところにホームレスや強盗や窃盗が増えて、自分たちの仕事がなくなれば、見方が変わるのかもしれません。まだまだ日本は、不景気とは言っても購買力と人が動く力があるので、庶民にその実感はないように見えます。
今回、Vancouverのクリスマス商戦は静かで、どの店も活気はありませんでした。通年であれば、量販店でも人がごった返して忙しく、ショッピングモールでは買い物袋を3~4つも持っているのが普通でした。しかし、買い物をしている人も少なく、いつもの忙しさはどこに行ってしまったのか? と思うほどの状況になっていました。
今回、減税をしたことで1つだけ変わった場所があります。それは、レストランやファーストフード店です。そこは、減税をした日からどの店もお客は増えて忙しくなりました。通年であれば、12月から忙しく予約をしないと入れないのですが、今年は12月に入ってからもガラガラで暇な店が多かったです。それが、減税政策の開始日から、お客が増えて例年の忙しさに戻りました。もし、減税政策をしなかったら今年の外食産業は、ほぼ壊滅的になっていたかもしれません。それとは逆に、減税の対象になっていない商品(家電店やファッションや嗜好品)の店は、それほど効果がなかったように見えます。(蛇足ですが、先日レストラン関係者と話しをしたのですが、「忙しくなったとは言っても前年度の10~20%の売り上げは落ち、客単価が全体的に落ちているので、利益の出ない忙しさになっている。」と言っていました。)これが、北米経済の深刻な問題で、年明けからさらに多くの店が潰れると見ています。北米は、不況のスパイラルに突進していっています。
-日本の悪玉の正体-
いま日本では、「103万の壁」という低レベルの次元で国会が進んでいますが、日本の政治家と役人はどこに向かって進もうとしているのかが理解できません。北米は、経済が崩壊し日増しに景気が低迷して深刻な状況になっています。それにも関わらず日本政府は、何も経済政策をしないで、このままで行けると思っているのか理解できません。日本のメディアは、ついこの前まで北米は個人所得が増えて、景気が回復に向かっていることばかりを伝えてきました。しかし、実体は物価上昇が個人所得より上回り、決して生活は豊かになったわけではありません。むしろ、可処分所得以上のインフレになってしまったので、個人の生活は厳しくなる一方です。加えて、仕事がどんどんなくなってきて貧困者が増えています。この社会の不安定は、コロナ禍で経済のシステムが壊れてしまい「神の見えざる手」が機能しなくなったところから始まっています。さらに、政府主導で個人所得を上げたことで、民間経済はボロボロになってしまいました。政府が最低賃金を上げたことで、経営者はどこも厳しくなり倒産するところや廃業するところが増えました。この悪循環は、不景気であるにもかかわらず賃金だけを上げるスタフグレーションを起こしてしまいました。この異常な経済状態が、いまの北米の実体です。そして、若い人たちは仕事をしたくても仕事がない悲惨な状態になっています。
日本の政治家や有識者の不思議なところは、優秀な学者や官僚がいるにも関わらず、いま起きている世界情勢の分析をしている人の顔が見えないことです。コロナの時もそうでしたが、主体になっている人が何を柱にして、どこに進めているかがまったく解らないことです。いまの日本は、非常に危険な国になっています。この状況は、戦前の大本営の体質と似ていて、誰の価値判断で決めているのかがわからず、何のためにその政策が出ているかが理解できないことです。いまの日本を見ていると、大本営が財務省に変わっただけで戦前の政治に戻ったように見えます。
この時期に増税をするということは、日本でもスタフグレーションを起こし民間経済を止めて、日本人の失業者を増やすことを意味します。そうなれば、日本人の貧困者は増え幾つもの企業は潰れていくでしょう。いま日本がしなくてはいけないことは、早急に財政政策と経済政策をして民間経済を活性化することです。もし、増税をすれば1~2年以内に人とお金の流れが止まり、ヨーロッパや北米で起きている社会状態と同じになっていくでしょう。
いま北米で起きている現象は何か? コスト・プッシュインフレーションという、不景気(失業者が増えている)であるにも関わらず賃金と物価が上昇し、価格(サービス・商品価格)を引き上げる異常な経済になっています。今回、カナダ政府は減税で微小のインフレ緩和をしました。本質的な解決には繋がっているとは思えませんが、それでも、減税をしたことによって民間にお金を流したことは間違いありません。
いつも不思議に思うのは、カナダの政治家が出来て「なぜ日本の政治家は出来ないのか?」という素朴な疑問です。別に、カナダの政治が優秀であるとは、まったく思っていません。むしろ、日本人の方が優秀だと思っています。にもかかわらず、いつも政治決断が遅れ見誤ることばかりをしています。その状況は、どこから来るものなのか理解に苦しみます。
民族の体質なのか日本政治の体質か解りませんが、いつでも慣例に引きずられて状況分析をせずに「事なかれ主義」で改革をしません。日本には、多くの研究機関や人材がいるのに世界情勢を分析してイノベーション(革新・新機軸:よく使う言葉ではあるが、あまり日本にはなじみのない概念なのかもしれません。新しい価値や技術を入れて、刷新した社会に作り変える。)を非常に嫌う傾向があります。その体質は、これからの世界有事に対応できないと同時に、日本の弱点にもなっています。有事や国防危機になったときに、前例主義と慣例主義に引きずられ大きな改革が出来なければ亡国になるでしょう。
コロナのときもそうでしたが、各国は早急に緊急事態宣言をして人の行き来をロックし人の流れを止めました。しかし、日本だけが中国から大量に人を入れて、緊急対応をしませんでした。いつでも、瞬時の政治決定が出来ずに、各国の状況を見ながら政治対応をしていました。その体質は、いまだに続いているように見えます。
2025年から世界は、同時大不況に突入していきます。世界情勢は、さらに不安定になり、過去の常識が通用しない時代になっていきます。日本政治は「財務省の増税信仰」と「自民党派閥の談合」で、国を回していた時代ではなくなります。この体質を続けていけば、さらに日本は貧困国になり、民族の生存競争に負けて他民族によって奴隷社会になっていくでしょう。
敗戦後の日本は、多くの闇と自立出来ない社会構造が内蔵していました。2024年は、その闇が表面化した年でもありました。これから日本人に求められていることは、社会をイノベーションする力です。慣例や既存の組織に捉われず、リアリズムの中で社会を作り変える力です。そして、リアリズムで世界と闘える真のリーダーを日本の中から生み出すことです。この大不況は、コロナのときと同じ経路で世界が壊れていくと見ています。中国経済が壊れヨーロッパで惨事になり、次に北米に流れてきます。そして、最後に日本に上陸します。これから日本は、大量の失業者が出る社会に備えて準備が必要です。そのときに、1人1人の精神のイノベーションも必要になります。そのときに、学歴信仰と大企業信仰が個人のイノベーションを妨げるでしょう。そのときに、何を柱にして慣例に捉われない生き方が問われていきます。