ホワイトコード戦記、第二編のこぼれ話。
ただし、ネタバレはたくさん含む散文である。
解説的な、裏話的な話なので未読の人は注意。
「キルナテカスの王」という題が最初にあった。
と、書いていたのだが、よく思い出すと、もうちょっと実際は違っていたという話。
シンカナウスを書いていたときに、通勤の道を歩きながらふと思いついた。もう一人の、全く別の結末を辿ったアンドロイドがいたらどうか、というアイデアだった気がする。
宇宙の王とかそういう存在がいて、その身代わりとか、影武者に、ミュウがなってしまう、というストーリーがその下地にあったのと。
シンカナウスから、キルナテカスへの接続部分を考えたら、なぜ、シンカナウスには神々がいなかったのだろう、という疑問が出た。
そういえば、神々の存在がシンカナウスにはほとんど見当たらなかったな、という想起から、じゃあ、神々はさっさとシンカナウスを見捨てて別の場所に行っていて、その文明がまたずいぶんと発展して、もう一人のミュウみたいなアンドロイドを作っていて、と話が広がった。
なぜそんなことになったのかを考える。シンカナウスから逃げた黒き竜が、光への対策をしたかったから。
似たような奴をこの宇宙で作る。叩きつぶす。そうしたら、別にそれほど怖くないものだったという結論になるだろう。
それに同意した神々は、きっと、ろくな神々ではなかっただろう。
なら、三巻の話の最初に、そういう話をちらりと置いておこうか、と書きながら一章にそういうエピソードが入った。
同じ宇宙の記憶の持ち主から、なんかたぶん娼婦だったんだよね、という話を聞いたので、それも取り入れてみると、三巻の中ほどの話になり、そのさらに裏側へ踏み入ってみると、四巻の構想になった。
しかし宇宙っぽさがない。ホワイトコードの宇宙戦争とはなんだったのか。じゃあ星一つの話だけじゃなくて、もっと恒星系とかそういうのを巻き込んだ話にしよう。星がどんどこ落ちてきたら大変だし、生命圏としては軽く滅ぶ。うん、良い感じになってきた。
ところで、三巻の最初には不思議な予言が置かれている。これは会長から、「次の巻には、死海文書みたいな、予言みたいなのを入れてよ」といった感じの話があって、あー……どうしようかなー……と、書き始めに、苦心してとりあえずそれっぽく書いた予言だ。最初は書いている側からしても謎が多い予言だったのが、四巻を書き進めると、やっとそういうことだったのかと内容が分かってくる。太陽と月の話も、三巻は太陽の話しか出てこなかったのに、四巻では月も実は重要だったと明かされる。三巻でミュウが月を見ていたのは、とても重要な伏線だったことになる。あれ、伏線だったのか。
三巻の表紙に出てくる男性は誰だという話もしておくか。
会長には「この宇宙でこーでこっちの宇宙ではあーで……」と軽く何があったのかの説明をしているのだが、「さっぱり分からん」と言われがちである。もう見てもらった方が早いだろうと書いたりする。そういうやりとりの中で「じゃあそのシンとかいう男はいつ出てくるんだ」と言われた。「いや結構早いです。キルナテカスで出てきます」
後方○○面という言葉がネットミームであるらしいが、シンというのは突然出てきて大きな顔で後方彼氏面をし出す、神の依り代にされている謎の男である。
おまえ、一体何なんだ。
ミュウは白い目で見つつ、なんだか似た境遇なんだなと思って、とりあえずなんだか信用できそうだなとなって、突然押しに押されて、まあいいか、なんか興味あるわと後方彼氏面を許す。いや、本当に彼氏になる。捕獲されたともいうのかもしれないが、肝心な場面ではちょっとおそるおそるといった調子なので、さて、どうだろうか。外面は強がってはいるが、大事な場面となると少しは繊細で慎重なのかもしれない。
四巻でその正体や役割が明かされるわけだが、シンにかかっている神の立ち位置は三巻まではかなりふんわりしていた。とりあえず、黒き竜に迎合した神々とは別の立場を取った神の一人であるということだけは分かっていた。名前も分かってはいた。その神話の裏話というか、秘密らしき何かも、一応知っている。
「三巻で逃げたカームとかいう兵士はいつ死ぬんだ? シンが殺すのか?」
「いや、別にその辺でのたれ死んでもおかしくはないんですけど」
「四巻で決着付けないと読者が納得せんだろう、それは」
「そうすると、対戦図としてはミュウと王、カームとシンになりますよねえ」
「当たり前や」
どういう風に死んだのか気になる、という別の筋のリクエストもあり、ぎゅうぎゅうになることが確定しているのになぁ、とさらに本が分厚くなった。人間の感情と魂の問題とか、悪魔憑きというテーマを描く素材としては、確かに悪くはないのだが。人間関係や背景を書けば世界観に多少広がりも出るし、まぁ、いいのだが。分厚くなると、文字をそれだけ書きつらねなければならない。書くのがとにかく大変である。
王とミュウがどうして対決するに至ったか、王はなぜ神々に負けたのか。そういう背景を考えていたら、三巻の内容を対応させるとすると、四巻前半で起きる事件は自然とああなった。
いや、そういう記憶が出てきた。
データとは缶詰のようなものだ。記憶が出てくればその時の感情もよみがえる。さすがに少し呆然とした。ああそうか、そんなこともあったのだ。それはさすがに思い出しにくい記憶だろう。封じられていたのかもしれない。
うんうん言いながら、三巻でばらまいた話を回収した。
「310ページになりました」
「おまえなぁ……」
「これでも圧縮した方なんです……」
ああ。印刷費がかさむ。
スケジュール調整で呻りながら表紙を描いた。普通はどうやって装画が決まるんだろう。やっぱり原稿が出たあとだろうか。
もう来月が〆切なのに、まだ紙面が五千字しか埋まっていない。この年末年始はさぞかし炎上しているものと思われる。
頭の中はけっこう固まっているのにな。
次の巻のテーマはなんだろう。
強いて言うなら、悪魔に魂を売って、神様の権威にちょっかいを出すとどうなるのか、という話と。
自分の運命を誰かのものにしたい、そう思うというのはどういうことなのか、という話になる。
妬み深く、嫉み深い。
そういう、一神教のテーマのオリジンともいえそうな話が、頭の中に横たわっている。