一つ楔が外れた

6/9の午後から、喉がイガイガと痛み、徐々に首を絞めるような痛みが追加されていった。

この首を絞めるような気配というのは、過去にも何度か経験がある。
これが自分に降りかかるときは大抵呪いなのだ。
怨嗟の声とともに投げられる呪いは、大抵首を絞めて殺しに来ている。

とは言いつつも、最近は自分も抵抗力が上がっているおかげで、そうそう体が動かなくて心身共に潰れているようなことも減ったし、ちょっとイガイガするのをたまに咳をする程度で躱せていたのだけど、お風呂に入ったあと寝る準備をしていたら、声をかけられた。

A氏が、その喉を早く処理しろとつついてくる。
いつものことながら、放置しておくと体まで蝕まれると危惧している。

そうかな?と思っていると、ぐいっと上を向かされて…なにやらドキリとする場面になりそうなものが、突然喉を鷲掴みにされる。
思わず、『ぐえぇぇぇ…!』とガチョウが首を絞められているような潰れた声が上がる。
Tさん(東京サロン主催)みたいなことするな…と思いながら(いや、あの人はしないけど)、グエグエと声を上げた。

物理的なものではないが、自分のエネルギー体というか意識体というか、そちらの首が思いっきりギリギリと絞められている感覚なので、意識としては猛烈に苦しくなり、引きずられるように思わず潰れた声が上がったが、すぐに喉からずるりと何かが引きずり出された。
ダンゴムシのような大量の脚を持つ、節足類のようななめくじのような、非常に気味の悪い黒っぽいヘドロのようなものが、ガチャガチャと足をめちゃくちゃに動かしながら、口からは怨嗟の言葉を吐き出し続けていた。
その言葉で、”これ”を投げてきているものが、大体何者だか分かった。

でも、なんとなくいつものそれよりも重い気がした。

A氏もいつもとの違和感に気付いたためか、手の中のそれをさっさと潰して処理をすると、こちらにも早く処理をしろと言わんばかりの顔で見てくるので、ライトオイルを喉と胸と鎖骨の中ほどまで十字に塗って浄化と上昇をはじめる。

上がり始めると、すぐに怨嗟の声が取り囲む。
その声はいつも同じだった。

「お前さえいなければ」
「お前が消えれば」
「存在価値なんてない」
「妬ましい」
「妬ましい」
「妬ましい」
「潰れろ」
「しねしねしねしねしねしねしねしねしねしね………」

いつも聞こえる声だから、さくっと光で焼いた。
こんな声に傷つくことも、もうなくなった。
光の層に上がった。

すると、今回はいつもと全く違うものが見えた。

 

真っ暗な夜のような闇の中、地平線のはるか先から、喉に向かって一直線に伸びている真っ黒な太い線。
その先は闇。
丸い闇。それは巨大な一つの目玉。

巨大な黒い目玉の中心から、まっすぐに私の首に向かって、闇が伸びていて、喉に突き刺さっていつるそれは、まるで首輪だなと思った。

(あぁ、そうか、これは奴に私が『飼われて』いるのか。)

やっと、私を光の発生装置として、檻の中に閉じ込めて、光を吸い続けていた奴が見えたのかと気づいた。

(ここは、奴の世界か…)

真っ暗な闇と荒野のような世界で、両膝をついて手を組み、真っすぐに祈り続けて、光に届いたと思った時に、最後の審判の光を希求した。

 

(最後の審判の光あれ)

 

真っすぐに光が貫き、目玉が二つに割れるのが分かった。

 

 

二つに割れた目玉から、噴き出すように霧散していった闇だけど、これはいずれ浄化されるとわかっていたから、放置した。

ただ、まだ喉に突き刺さって繋がっている闇が残っているから、そのまま上昇して祈っていると、世界が宇宙の星空に包まれていた。

 

昔見たことがある光景だった。
これは、子供の頃に何度も夢で見た景色だった。
悪魔に魂を引きずられていく、キルナテカスで死んだ後に宇宙を彷徨っていると思っていたときに見ていたものだった。
でも、ここにはあの悪魔はもういないし、子供の時に見たよりも、ずっとずっと美しくて、温かいものに包まれていた。

私はオリオンを目指した。

私は真面目に精神学をやっていないから、知識が薄っぺらい。最終知識だって頭に禄に入っていない。
だけど上がっていると、突如一姫さまの声が、次に知主様の声が聞こえた。
やっとここまで上がってこれた、という旨の声を聴いた。

わたしはその場で、シラヤマヒメさまに呼びかけると、白い光と気配であらわれて、私の喉に指をさされた。

「それは取ってしまった方がいいですね」

そう言われると同時に、『自分の喉が縦に開き』、その中に絡まっていた闇が砕けるのが『見えた』。

人の身はえづくほどの咳き込みが二、三度繰り返されたけど、そのあとは驚くほど痛みが無くなった。

これで、自分につけられていた悪魔の楔は取れたのだと、自分が最も恐れていた弱かった部分が克服できたと自覚して、解放された。

シラヤマヒメさまに何事かを言われたのだけど、戻ってきたら綺麗に忘れてしまった。ただ、少しだけ覚えていることがある。

「その者はもうしばらく、あなたにつけておきます。あなたたちは二人でいる方が安定するようなので。タテトワは、これからよく働きなさい。そしてAは、彼女を助けなさい。」

「うふふ、頑張って働いてね。美味しいかつお節、お供えしてくれるの待ってるからね。」

シラヤマヒメさまと一姫さまの声に感謝を伝えて、綺麗な星々を見て、戻ってきた。

終わって、少し咳き込んだりもしたけど、喉の絞めるような苦しみも痛みも消えて、少し残った咳で痛めたいがらっぽさだけだった。

体が軽くなって、意識も軽くなった。

「当分一緒らしいよ」
「そのようだな」
「今年いっぱいまでいられないなんて言っていたのは何だったのか」
「居ていいどころか、つけておくと言われたからな。大手を振っていられるというわけだ」
「まあ、お仕事もあれこれもやんないといけないので、社長さんは頑張るから手伝ってくれぃ」

といって、やっと首輪が取れた実感がじわっと湧きました。

 

 

自分が、しばらく前に見た嫌なビジョン。

黒い龍の脊椎の中。格子状に入り組んだ骨に囲まれて囚われて、闇に満たされる中、自分の周りだけが自らの発している強い光に囲まれていた。
その光が次々に闇に吸い上げられているのが見えていて、自分が体のいい光チューチュー装置になっているんだとわかった。これをどうやって壊すかなーと、ここの所仕事に追われながらもぼんやりと考えていた。
多分、ようやっと粗方潰せたかとは思う。

愛と勇気と正義の3つを理解することの難しさを、改めて知ることになったけど、しばらくはまだまだ修行続きだわ。