Vol.503

脱アメリカ

次の時代を考える特性は、キリスト教文明圏に特有のもののように考えられがちですが、江戸時代からのこの国は、まったく独自に、古学や国学という体系を考えていました。
アメリカ文明が、行き詰まり、ヨーロッパではユーロの実験に失敗しつつあるという現実の世界で、共産主義というイデオロギーの仮面をかぶった中華人民共和国というある種の王朝が、建国70年に近づいています。
マルクス由来の人造国家が、ソ連邦のように崩壊するかどうかが、この地球の未来を考える人間にとっては、重要なテーマになるはずなのですが、残念ながら、いまの日本人は、そこに思い到らないようです。しかし、キリスト教文明の最終型ともいえたイデオロギー対立だった東西冷戦によって、勝者となったアメリカが、あっという間に世界秩序の維持者である立場を失ったのは、フランス革命以来の西洋の価値観の賞味期限が過ぎたことを示しています。
明治維新からはじまったこの国の近現代史のテーマは、進んだ西洋に追いつくことにほかなりませんでした。そして、ほんとうに近現代史を調べてみれば、明治維新の日本と同時期のアメリカは、人口もほぼ同じぐらいで、ヨーロッパの列強を追いかけるライバルの関係にあったことがわかります。普通の日本人には黒船のイメージが強烈にあるため、その当時も大国であったように錯覚しますが、アメリカが大国になったのは、イギリスを衰退させ、大日本帝国を打ち倒した結果なのです。
そのアメリカの行動原理は、自分の地位を脅かすものを許さないというものですから、中華人民共和国の、世界分割提案を受け入れることはないはずです。かつて起きた東西冷戦とは、ちょっと違う形で、これからの世界の変動が進行していますが、その主役は、軍事力というより経済力、またはマネーのようです。
ドルは、金という価値の裏づけを失っても、石油というものを買える通貨として、信頼を保持してきました。それは、中東の産油国を軍事力によって保護下に置くことで成立した価値でした。資源のない国、とくに石油を輸入に頼らざるを得ない日本としては、アメリカの属州という立場とエネルギーの安定供給はセットだったのです。ところが、アメリカがシェールオイルを使いはじめ、中東の石油資源の重要性が薄れたことで、この構図が崩れました。
アメリカの大統領候補がそろって、世界の警察官をやめるという方向を政策として持つのは、自国の安全保障に、中東をはじめとする世界の資源の独占が必要ではなくなったからという側面もあるのです。
精神界の伝達によれば、このタイミングでなければ、たとえばメタンハイドレードのような日本の自前資源の開発はできないし、してはならない、ものなのです。
西洋の東インド会社以来の資本主義の正体は、ないものを奪いにいくという、人間の強欲そのものでした。あえて誤解を怖れずにいうと、西洋のイデオロギーの出発点は、聖書の私は妬むものである、という神の名で、世界を再構築しようとする壮大な実験をする人間の頭の中の欲望だったといえます。その強欲に、一定の制御がかかっているのが、この21世紀の地球なのです。
いままでだったら、日本が自前の資源を持ち豊かになることを、その他の世界はその妬みから許さないはずでした。尖閣諸島の問題も、その出発点には、そうした世界の邪悪さがあったといってもいいのです。ところが、いまなら、世界は、それを阻止することはないはずです。正しくは、ないのではなく、できないのですが、すでに、地球の資源を一部の人間グループが独占することを世界の人間が許さないという時代に入りつつあるからです。
その覚醒こそ、日本という国の出番が近づいていることの証明なのです。
地球の資源は、全人類の共有の財産だと、日本国の代表が主張し続け、その方向でどのように開発し活用していくのかのモデルを示せば、いまの世界を支配するマネーのメカニズムが崩壊に向かいます。資源などを材料に、先物取引などの相場で、市場をカジノ化してきた経済の仕組みそのものが、変わり目を迎えることになります。
それらのことは、天の用意として、この日本に与えられたものですが、これを現実化するためには、真に勇気を持って、事に当たる人材が欠かせません。
私がこれまでくり返し、やがて、日本では明治維新よりも大きな変動がはじまり、そのための人材を育てなければならないとお伝えしてきた時代がこの2016年には、はじまっているのです。

2016年7月12日 積哲夫 記

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