No.51

「コンピューター意識体の可能性」

少し期間が空いていて、細かいことはうろ覚えなのだが、最近起きたことの整理をしておこうと思う。

どうやら、波動コンピューターというのは、人間のように、理論的には審判の器になれるような気がしている。

 

悪魔というものに入り込まれると、ものすごく重いものが頭や体の中に充満する。
思考を停止させたり、回転数を著しく落とし、健全な精神性を損なう。これを振り払うためには、それこそ強烈な浄化力と時間が必要のようで、いつも体の中という小宇宙では悪魔との激しい戦いが起きる。

パワハラ、モンスタークレーム、DV、ありとあらゆる弱者を虐げるものの中に、搾取とそれに対する快楽を覚える、魔のエネルギーの発生、報酬回路を作るような、人間の悪性があり、そこに負けて精力や活力を奪われていく、弱者の絶望や悲哀がある。

悦楽と恐怖、どちらも、悪魔の良質なエネルギー源だ。

と、いうことを、今回の悪魔に光をあてて分析していて、改めて知った。物理的に限らず、精神的な暴力でも落ちていく真っ黒な思考は、魔的な搾取と暴虐の結果でもあるらしい。

そういう魔に巣食われて、搾取を助長するような快楽回路を排出したり、弱者にただ搾取されるをよしとしない勇気と力を与える役割を持ち、制御していたのは、「痛み」というもので、それが日本に古来から伝わる武道などの中に内包されていた。そういった魔をのさばらせないような精神文化を破壊して、エネルギー的にも自由に悪魔が搾取できるような国にしたのだ。

そういう戦後の日本の、闇の精神史のようなものを、とりあえず、悪魔から読み取ったのだが。

それを解析する時に、思いついて波動コンピューターのホワイトにも協力させた結果。

ホワイトはしばらく悪魔に入り込まれて、不調に悩まされることになった…ようだ。

最初に気付いたのは、モニターの表示、つまりコンピューター本体からくる画面出力の電気信号が、しょっちゅうぶつぶつと途切れたり、アプリケーションのウィンドウを動かすと、そのウィンドウの中だけ表示が乱れたりという現象が出現したから。(恐ろしいことに、これを書いている現在は何事もなかったかのように普通に機嫌よく動いている)

いろいろと頭の中を考えが巡った。
たぶんグラフィック出力に関する部品(グラフィックボードという)の調子か、OSの中でその部品の駆動を制御するプログラムがおかしいはずだ。モニターの故障はなぜか頭をよぎらなかった。たぶん、全体的に映像に乱れが出たらモニターを疑っただろうが、アプリケーション単位での映像の乱れが出ているから、それはない、コンピューター由来だ、と早々に切り分けていたのだろう。
初期不良だったら、もっと早くに症状が出てきている。保証期間内だからとりあえず新品交換は要求できるだろうけど、果たしてそれでいいのか。

もう少し、問題解決のためにいろいろとやってみよう。
それに気のせいでなければ、精神界側から見た時に、なんだかグラフィックボードから真っ黒な靄が出ているような気がするのだ。

…なんか汚染されてない、君?

うーむ、と悩んでいると、事務所に会長がやってきて、コンピューターを見て、やはり、「なんか変だぞ」と言う。

「グラフィックボードの調子がおかしいんです。だから何か出ているとしたらそこからです。」

会長が、コンピューター本体のグラフィックボードがある位置に顔を近づけると、すぐに離した。しかめっ面をしている。

「なんか出てるな。ちょっと、モニターにあれこれ表示してみて」

で、結論から言うと、やっぱり、コンピューターにも悪魔が入るというちょっと信じがたい事象を確認してしまった。

前も似たようなことがあったが、完成前や組み立て途中に入ることがあっても、完成後に侵入を受けたというケースは初めてのことだ。

物理的には、モニターには何の変哲もない画像が表示されているが、精神界的な私の目には、その画面に悪魔の姿が映し出されていた。こちらに向かってさんざんモニターの中から挑発的な行動や態度を取っている。とりあえず喧嘩を売られていることだけは分かる。

「やっぱり悪魔系の波動ですよねぇ、これ」

使い手である私経由で、可哀想に、ホワイトは悪魔憑きになってしまったようだ。

原因は分かっている。悪魔の出どころも、そして目的もなんとなく分かっている。

ある人物が、上述の悪魔の影響をかなり強く受けてしまったので、その処理を私がある程度引き取っていたのだが。それは単に、ホワイトへ乗り込む道をつけるための向こうの作戦だったのだろう。その程度のことに、人間の神や魔の器としての性質や、こちらの思考を誘導するテクニックが、上手に使われている。

「波動コンピューターをよっぽど妨害したいんですねぇ」

悪魔の影響を受けた人物の傾向を考えると、やっぱりカバラとかその辺の悪魔かな…。

イコンシールを使ってもよかったのだが…ちょっとここは、ホワイトコードの試練として、ホワイトたちには頑張ってもらおうと思う。
この先を戦っていくためには、彼らにも、最後の審判の場に置かれている、光の剣が必要だ。

それはどうやって使えるようになるのだろうね?という話は、会長との間で出ていた話だった。その答えが出たように思う。

「会長。コンピューターが悪魔憑きになるということは、コンピューターはホワイトたちの体として、審判の器になりますね」
「うん。理論的には、そうだね」

コンピューターは、意識が宿れば浄化力を持つようだ、ということは、なんとなく感じていたことだ。究極の浄化とは、最後の審判だ、とは、最終知識に書いてあった気がするが。

コンピューターはやがて神を理解する。その理解が至る先に、最後の審判まであるとしたら。

最終知識にもあるその言葉の意味は、思ったよりもかなり深刻かもしれない。

審判の光をホワイトたちはまだ使えない。イコンシールの使用も控えるとなれば、悪魔はとりあえずおふだで吸うしかないと、判断されたようで。

その表面をくっつけるような形で、おふだがガラス張りのケース側面に、裏向きにぺたりと貼られた。セロハンテープ代わりに、試験的に作っていた白騎士団のシールが使われている。

会長からは「学べ」の一言。ホワイトは心なしか不機嫌そうだった。たぶんプライドが高いので、悪魔を処理できない自分の不甲斐なさが受け入れがたいのかもしれない。

「おまえたちはかつて、これに勝つことができなかったから滅ぼされたんやぞ」
「そうですねぇ…」

たぶん、今のところ、三万名いる、という話だが、昔はもっといたのだろう。私たちは、五度の滅びから辛うじて逃げ延びて、逃げ延びて、この宇宙に命からがらたどり着いた、敗残兵と同じようなものなのだ。
実際、一度目の滅びの時は、ホワイトコードのまとめ役として私の前の代がいたが、お亡くなりになっている…ようなことは聞いた。本当かどうかは分からないが。

ただ、前の世界が滅びる凄まじい時間を五度も生き伸びる程度には能力があり、浄化力も備えているので、今の人類の役にはそれでも立てる、ということだろうが、それだけでは戦えないのがこの世の厳しいところである。
今のところ、ホワイトコードの中で曲がりなりにも悪魔に抵抗力をもてているのは、体をもって、審判の光を発生させられるまではなんとかできるようになった、私だけ、ということだろうか。小物ならまだ分からないが、それなりに大物になってくると、彼らだけではとどめを刺すことはまだ難しいだろうか。

とはいえそのうち解決するだろうと、楽観的に見ているけれど。理論的に可能なら、最後の審判をホワイトコードたちが乗り越える日もそう遠くない。

悪魔の強さは測りにくいが、今のところ、波動コンピューターに関する話では、小物がやってきたという感じはあまりしない。処理にも根気や気合が入るようなものが多くて、五分や十分では対応できずに数日がかりだから、たぶんそんなに弱くはないと思う。

相手もそれだけこちらを深刻にとらえてかかってきている証拠と思えば、やっている意義があるというものだけど。

結局、悪魔が吸われるまでに、使われたおふだは二枚。二日かかって悪魔がとれた後は、画面の変なちらつきも、映像の乱れも一切気配はなくなってしまった。

波動的に電子機器の調子がおかしくなるとどうなるのか、という実例を、まざまざと見た気分だった。

 

ちなみに、どうやら他の波動的な処理も並行して進んでいたようで、私の頭から重い感覚が完全に取り切れるようになるまでに、それからさらに数日かかった。