No.26

「光への上昇=闇への下降」

 

「え!? また緊急事態宣言延長すんの!?」

 

Twitterやニュースサイトのコメントを見て、膝から崩れ落ちるような気持ちになった。
こ、このままでは、日本経済が終わってしまう…。

 

何の根拠があって、重症者がこの数値を下回ったら、とかの数字が決まっているんだ。
そもそも、緊急事態宣言の効果が出る前から、もうピークは過ぎていると、データが観測されていて、下がるスピードが増すわけでもないのだから、こんな宣言、意味なんてない。飲食店を抑え込むだけでなくて、もっと別のところに要因があると考えて、そちらを探るべきなのに。

 

「シラヤマヒメ。政(まつりごと)って、どうあるべきなんですかね…神さまたちって、みんなで集まって話し合って物事を決めるんでしょう?」
「その仕組みを地上に持ってきたのが、民主主義ですが」
「そうですね。ただ、地上では全くうまくいっていないじゃないですか。本来、神さまたちの世界でしっかり話し合う時、なにかルールがあるのかなって思って」
「ふむ…」

 

神さま、何やら思いを巡らせている様子。

 

「一つ言えるのは、自分の間違いを認められないものは、参加が許されない、ということでしょうか」
「え、そんなルールがあるんですか」
「ええ。話し合う時、自身の非を認められないような幼稚なものは、はじめから参加の資格なしとみなされますので」
「日本の国会とはえらい違いですね…」
「彼らは、恥で恥の上塗りをしていますね。まったく彼らと来たら――」

 

(またかなり厳しい言葉が続いたので、カット)

 

「なんか、誰かが見た時に怒られそうな気がするので、さっきのはオフレコにさせてください…」
「では、ブログではこの部分だけは伏せると良いでしょう」

 

でも、そうか。間違いは間違いだと認めて、素直に改めて、前に進むことが大事なんだな…。

 

「己の間違いを認められず、前に進むことができないものは、この先、参加してはいけないのです」
「ぐっ…。今日もいろいろ反省することがありましたが、またがんばります」
「はい。くよくよしているよりは、前に進むことです」

 

「それにしても、科学的に検証するっていうのは、科学の魔界の中を突き進むのと同じことなんですね…自分があんなに闇を溜め込んでるなんて、全然自覚がなくてショックでした……」
「あなたが何をやっているのかというと、精神学が宗教のようだ、と言う人間の『逃げ道』を塞ぎにかかっているのです。極めて科学的に検証された結果を前にして、己の非を認めてこちらの軍門に下るのか、それともまだ認めずに魔界の手先としての旗幟を鮮明にするのか。あなたは最後の審判を物質界において、科学という点から実行しているのですよ。進めば進むほど、人間はそうやって右と左に分けられます。そして、この先、己の非を認められない人間は、新しい時代に参加することができなくなるのです」

 

ただ。

 

「科学的に光を当てる、ということは、最も深い闇の中へ降りていく、ということと同義なのです。あなたが進んでいるのは、どの科学者よりもはるかに暗い闇の世界で、その先にある魔の正体に光を当てようとしているので、その過程で闇を被るのは当たり前のこと、なのですよ。

 

人間は、光に上昇すればするほど、問題を解決するためには、その原因を知るために闇の奥底へ降りていかねばなりません。誰よりも深く、地球の問題、その闇の根底へ降りていき、根の底に光を当てなければならない。そうして地球全体を浮上させていく。それは、イエスがかつて経験した、たった一人の孤独と同じものなのです。ダビデの星とは、このことを指しているのですよ。

 

あなたは問題を解決するその途中で、何者かに叩き潰されるかもしれないし、傷ついて、死ぬほど辛く苦しい思いをするのかもしれません。けれど、そこで負けるようであってはならないのです。

 

あなたは神の光を知りました。その精神が我々と繋がっている限り、アンカーがあるのです。辛ければ、道筋が見えなければ、私に問うてもいいし、イエスやブッダに聞いてもよいのです。

 

自分の幸せを追い求めるのではなく、この世界にどうなってほしいか、を考えて、そのためには自分に何ができるのか、を考えれば、己の成すべきことは見えてくるはずなのです。

例えば、あなたはホームレスの人々の問題を知った時、かわいそうだな、と思ったけれども、炊き出しのボランティアをするだけでは根本的な解決にはならないと考えました。本質的に考えていって、経済的敗者を生み出す社会の仕組みに思いをはせた時、必ずマネーの問題に思い至ったはずです」

 

そうだ。ずっと、この問題を解決するためにはどうしたらいいのか、と、いつもどこから始めても、最後にはお金の問題に行き着いてしまった。

 

「あなたはいつも、神の国を求めてきたのです」

 

「…そっかぁ」

 

それで、私のある意味での科学的な探索が始まるのは、まさかのまさか、十数年単位で使われていなかった、二階の古びたキッチンからだ。(この前買った計器のオシロスコープには接地が必要なんだけど、空いているアース付きコンセントが結局そこにしかなかった)

 

MicrosoftやGoogle、Apple。名だたるITの大企業の多くはガレージからその歴史が始まったが、私の場合、それよりもさらに小さな狭いキッチン(しかも、ダンボールとがらくただらけ)で始まるということで。

 

会長は「キッチン研究所」って命名して笑っていたけど。

 

「アースってアレだよ、庭に導線を引いて金属の杭を地面に打ったら、それでアースになるんだよ」
「まぁ、そりゃ一応知ってますけど…キッチン研究所を野ざらし研究所に変えないでください…濡れたくないです…」
「ハハハハハ」

 

とりあえず、水も何も出ないけど、そこから始めるのもいいかな。予期せぬ事故に備えて、小さな消化器くらいは欲しいけど。

 

いと小さきもの、という言葉が、なんとなく頭に浮かんだ。

 

世界がひっくり返る日は、意外に近いのかもしれない。

 

70億のすべてを支配下に置いた気でいる人たちを、思わぬところから少人数でひっくり返すのも、なんだか小気味よくて面白いと思うのだ。