Vol.565

帝国の亡霊

北朝鮮が、水爆級の核実験をして、それを大気圏外で爆発させるEMP攻撃の能力を持ったことを宣言したことで、現行の全世界の通信情報システムが、人質にとられるという事態が生じています。すべての電子機器が機能しなくなり、銀行のコンピューターの記録が消滅すれば、預金者のマネーも消えることになります。
すべての面での安全保障というものを考えてこなかった日本という国家も、この攻撃で消滅する可能性があります。
いま起きていることは、悪夢ではなく、現実化する可能性の高い戦争への階段だといえるのでしょう。
この問題のルーツは古く、私の知らされているデータでいうと、大日本帝国の各階層に浸透していた共産主義者のグループの播いた種と、大日本帝国内での活動を封じられた共産主義的思想を現実化するために大陸に渡って、満州国に夢を賭けた日本人たちが伝えた、日本語に翻訳された共産主義文献のことだま、おとだまの影響を、日本語の精神界的エネルギーの領域で正しく認識しないと、この危機の深刻さが理解できないばかりでなく、対応も誤ることになります。
旧大日本帝国は、朝鮮半島北部と南満州地域を先進的な工業地帯にすべく、莫大な設備投資をしたばかりではなく、現地の人材教育にもエネルギーを割きました。
こうしたバックグラウンドがあって、出口王仁三郎は大陸に渡ったのです。
ヨーロッパで生まれたマルクス・エンゲルスの共産主義は、ロシアでマルクス・レーニンの共産主義になりましたが、それが日本で漢字混じりの言葉に翻訳され、それが、大陸や半島の教科書になったのです。
精神学的にいうと、ここに、ソ連共産党が崩壊した後も、中国共産党も朝鮮労働党も残り続けている理由があることになります。
戦後の日本は、事実上、この共産主義政党が支配する国家を経済的にも支え続けてきました。
日本の国内に、この大陸と半島の国家に強いシンパシーを持つ人間グループが存在し、彼らが、事実上この国の世論を形成するちからを持っていたともいえます。その背景にあるのは、戦前の大日本帝国の教育の基本にあった、同じ黄色人種という、誤解にほかなりません。もちろん、その背景には江戸時代を通じて教育の基本を、孔子などの中国の古典に置いてきたこの国の伝統があるのですが、大陸の王朝の交替は、民族の絶滅史でもあったという、現実の歴史を無視した観念的な教育でしかあり得なかったという負の側面があったのです。
戦前の大日本帝国の軍人たちが、反乱を起した五・一五にしても二・二六にしても、彼らをつき動かしたのは、天皇の名のもとの社会主義革命または共産主義革命に過ぎないものでした。
ソ連のスパイであった、ゾルゲの協力者として、逮捕された尾崎秀実が獄中で書いたのは、天皇制共産主義への讃美だったのです。
敗戦後のGHQの対日政策が、現在の日本の姿をつくっているわけではなく、明治維新から今日まで続く、西欧文明が唯一の未来への扉であるという思い込みが、その出発点にあるといえるのでしょう。
日本人がそれを理解すると、ただ日本が嫌いで大日本帝国を打ち負かして、三十八度から北を、共産主義者の勢力に提供したアメリカのルーズベルト大統領がつくり出した世界の支配地図が、これから崩れはじめていく構図も見えてくるはずなのです。
私は、何度もくり返していますが、かつての日本の立場に置かれたアメリカ合衆国は、自分たちよりも狡猾で、長期的な戦略にたけた民族に向き合うのです。アメリカはベトナムで負けたことを忘れていないはずです。
アメリカを頼みにする日本の世論形成は、何者かにコントロールされているらしいと考えれば、いまの世界が見えてきます。

二千十七年九月七日 積哲夫 記