Vol.545

文明戦

今回の朝鮮半島の危機で、大日本帝国を打ち倒したアメリカが、半島と大陸に向き合う役割を担うことがはっきりしました。これは人知の話でいうと地政学的な話になるのでしょうが、精神学的にいうと、この国が白村江の敗戦以来、この国体を維持してきた理由を、世界帝国として膨張を続けるはずだったアメリカ合衆国が、精神文化的に追体験することを意味しています。
北朝鮮も現在の中華人民共和国も、明治日本のつくり出した漢字文化の影響下で生まれた国家であるという視点を持たなければ、いまの世界を正しく理解することはできません。
東アジアにおいて、国民または人民が、国家目標のために殉じるという文化を、教育によって植え込むということをはじめたのは、大日本帝国であり、現在の主人公となっている国家群は、その真似をしているに過ぎません。
理念や理想に忠誠を誓わせ、それによって国民を統合したヨーロッパ近代の国民国家の概念を、もともとの国民国家であった日本のみが成功裏に導入できたのは、絶対的な民度の高さがあったからでした。この基盤なしに進めた近代化では、教育の目的が、権力者の正統性を主張するための歴史物語に変質してしまいます。
その限界が、いま世界中で、現実化しているのです。フランス革命を美化し続けてきたヨーロッパ文明は、そこから生まれたマルクス主義とその結果であるソ連邦の誕生と崩壊の物語をいまだ冷静に分析する歴史観を持ち得ていません。そして、そこから逃れた人間たちが、理想の神の国を夢見たアメリカは、先住民の大虐殺と、メキシコから太平洋までの領土を奪い、独立していたはずのハワイ王国を吸収し、スペインという当時の覇権国を打ち破って、フィリピンを植民地化し、大日本帝国を敗戦に追い込んで、国際条約を無視した属国化政策を断行して、ついに朝鮮戦争で無敗の歴史に終止符を打ちました。その戦争は、いまも休戦中に過ぎないことを、多くの人間が忘れていますが、それは続いているのです。この停戦のあと、無敵のアメリカは、ベトナムをはじめとする多くの戦争で、希望したような完全な勝利を手にすることができなくなりました。
アメリカは、大日本帝国に勝利して、その地政学的な地位を引き継いだ結果、勝てない国になったのです。
精神界では、これもまたプログラムだと主張しています。
聖書的ないい方をするなら、古事記や日本書紀が示した日本国の国体を破壊して、半島や大陸に領土的野心を抱いた大日本帝国を、神のブレスを受けたアメリカによって叩かせた。その結果の日本は、民がその国土を追われることこそなかったものの、精神に大きなダメージを受けました。
これは、実は聖書のバビロン捕囚の再現ともいえるものなのです。そして、この国の民は、すでに分けられてしまっています。
民は民に、国は国に、立ち上がる、マタイの言葉が現実になる日が来たといってもいいのかもしれません。
いま進行しているのは、第二次世界大戦のときに、出口王仁三郎がいった悪神と悪神の戦いにほかならないのです。そして、日本に勝利したアメリカは、これから、あの敗戦後から今日まで、この日本が苦しんできた半島出身者の移住者、および居住者、大陸出身の移住者、および居住者に、移民国家ではあっても文明的な差異を発見して苦しむことになります。
現実にカリフォルニア州で独立運動が起きていますが、その背後には中国共産党の存在があると噂されています。
アメリカはたぶん、膨張主義時代の日本の苦しみを追体験しなければ、文明的な反省期に入ることはないのです。このベクトルは、半島や大陸との問題がどの方向に動いても変わることはありません。

二千十七年四月二十日 積哲夫 記