「だれも言わない国家の存亡」

「日本の衰退の理由」

 気がつけば、カナダに来て20年が経ち私自身も日本よりカナダの生活習慣の比重が大きくなってきた。それによって、日本で暮らしている人たちとは違う視点で日本を見るようになってきた。いいのか悪いのか、解らないが日本社会の不自然さに驚くときがある。
 日本に、いる知人と話すと。「アベノミクスは失敗だ。」とか「安倍は、何もしないから若い人の正規雇用が生まれない。」ということを耳にする。
 最近では、北朝鮮の核実験や中国の領海侵犯の国として危機がせまっているにもかかわらず、国会では「もり・かけ問題」を討論している姿がメディアから全国に流れる。そして、庶民は「カケ問題・モリトモ問題何も解決をしていない。」だから「政権を変えるべきだ。」という話しがでてくるが、日本人はどこに向っているのか? 「海外から見ると本当にその意見は正論なの?」 と疑問に思うことがある。特に、親世代の人たちに多い。
 私は、海外から見ていて日本の首相が、これだけ世界のメディアに流れ注目された人はいない。2015年アメリカの上院下院の演説は、アメリカ国内に強いインパクトを与えた。それは、カナダでも放送され注目された。伊勢志摩サミットでは、なりたての若き首相であるトルドー氏を迎え入れ、世界のガバナンスのあり方を問うた日本の首相としてカナダ全土に流れた。いまだかつて、国際社会の中で重要視される日本の首相がいただろうか。かつては、1~2年で変わる日本の首相に、世界各国はさほど注目をせずに、国としての発言権はほぼ重要視されてこなかった。
 世界が求めている日本は、お金の援助やODAという経済支援だけでそれ以上を望んでいかなった。世界に対して、意見を言うことをいけないとしていた国民国家があった。しかし、今回の安倍首相は、世界にモノを言い、日本の国益を守る外交を展開してきた。日本のメディアは、あまり安倍首相の外交実績を語ろうとしないで、国内の安倍政権の批判ばかりを伝え。世界で何が起きているか、その真実を伝えていない。それによって、多くの日本人はグローバルの視点で見ることを自ら閉ざしてしまった。というよりは、オールドメディアによって閉ざされてしまった。世界で、何が起きているのか? 本当の真実は、どこにあり日本はどこにむかっているのか? 世界は、不気味な時代に日本を巻き込んで、大きな流れになっている。文化や民族という国境の壁を低くし、ボーダレスがあたかも正しいという世論を作っている。この大きな波は、日本人にどのように影響をしていくのか、誰も予見することすらできず、しのびよる存亡に日本は向っている。
 その1つは、国内で話題になっている「移民受け入れ問題」です。今日は、そのことについて「各国の賃金について」話していこうと思います。(ここでの各国は、カナダ・アメリカ・オーストラリア・ニュージーランドと定義します。)実は、日本人が知らないほど各国の賃金は上がっています。物価についても、中国の主要都市の方が日本より物価は高いです。(一例になるが、大連のすし屋では、一人2万~3万円を使うのは普通で、すし屋の板前も日本より給料は高い。)
 安倍政権は、国際情勢に精通し国益を守ってきた政権だと思っています。しかし、この法案だけはとても理解出来ない。この法案を推し進めている人・団体はどこなのか明確にすべきだと思っています。この法案は、国力を落とす引き金に必ずなります。まず、各国と比べて賃金がどれだけ違うか、日本の人は事実を知るべきです。かつて、日本は世界では給料がいいとされていた時代がありました。それは、過去の栄光で世界の賃金は上がってきています。いま、日本の賃金は世界に比べたら低賃金の部類に入ります。長時間労働や仕事の正確さ規範は、世界の人たちはそのレベルに応えることはできません。日本は、他国とは仕事に対して特殊な価値観を持っています。これは、日本独特の慣習や文化に近いところがあるので、日本人が伝えようとしても短時間では伝わることができません。

 話しは、賃金の話しに戻します。
 私は、カナダに来たのは94年でした。その時の最低賃金は、$6(カナダドル)でした。徐々に最低賃金が上がり、いまでは$12.65(カナダドル)になりました。2020年には、BC州は$15を設定しています。(カナダは、州によって最低賃金設定が違っているので差額はありますが。現状は、12~15ドルになっています。)
 私が、94年日本にいたときに、時給800~900円の求人広告をよく目にしました。私もラーメン屋とコンビニを掛け持ちしながらの仕事でした。その当時で、時給1100円もらっていたと記憶しています。それから、同じ月日が経ちました。いまの日本は、最低賃金が2倍にも上がっているのか? 好景気で、「いい」とはいいつつも上がっていない現実です。
 カナダでは、白人のレストランでは、皿洗い時給13ドル出しても来ないので、16~18ドル出している現実がある。日本は、どれだけ賃金のデフレになっているのか。私は商売をしているかたわら、いろんな国の人たちと話すことがある。オーストラリアから来た人で、5年前に調理人の時給は、18豪ドルになっていた。それでも人いい人材が見つからず、探すのに苦労すると。ニュージーランド人も同じことを言っていた。シリコンバレーで、働いているIT関係の人と話したときも、アジアやインドからプログラミングする人が増え、「日本の給料は話しにならないぐらい低い」と話していた。

 そんな話しをしていたときに、バンクーバーで働いている日本の20代の人たちと話すことがあった。彼ら彼女らは、優秀なバイリンガルでなく、どこでもいそうな普通の日本人です。
 そのときに聞いた話しが、「カナダと日本の仕事の環境はどっちがいいのか?」 「賃金は、日本とカナダどっちがいい?」 すごくシンプルな話しでした。そのときに、日本の賃金の低さと労働条件のひどさに、驚きを隠せなかった。

 <ゲームデザイナー>
 20代後半の女性です。日本で、大学を卒業した後にゲームソフトの会社に入りました。大学では、コンピューターでグラフィックやデザインをしていた関係もあり、日本の会社に就職しました。
 就業時間は、9:00~17:00で週5日と、どこにでもあるような時間帯での仕事でした。ところが、入社したら残業は当たり前で、定時の17:00で終わることはほとんどなく、終電ギリギリまで仕事をしていた。終電がなくなると会社に泊まることもしばしばあった。それに、土日も仕事が終わらないときは、仕事場に行ったり、家でやることも度々あった。そんなこともあり、歩いて通勤できるよう会社近くに引っ越しをした。家賃が上がっても、それが最善策とした。そんな生活も長くは続かずに、入社して5年で辞めてしまいました。それから、海外で生活をしてみたいという気分転換もあり、カナダにワーホリでわたってきた。はじめは、語学学校で三カ月通い。それから、自分の履歴書を持ってコンピューター関係の仕事を探しました。日本で、働いていた会社が有名なこともあり、採用されすぐに働くことになりました。はじめは、就業時間に驚いたようです。時間きっちり終わり、土日は休み。
 はじめて給料を手にしたとき、「日本とさほど変わらないな」と思っていたら、2週間後に給料を渡されてまた、びっくり。(カナダは、給料を月2回渡すシステムなので日本から来た人は、ありがたく思う。)その時に、彼女が実感したのは日本と同じ仕事量で、収入は3倍近くになり、労働時間は減り、日本での仕事は何なのか? そんな疑問を持って、いまは充実した日を送っている。その彼女も、ワークビザを出してもらい1年半働いている。そんな彼女が、最後に「私、全然英語しゃべれないんですよね。だから、休みの日に勉強して、英語をしゃべれるようになりたいです。」すごく、その言葉が印象的でした。
 (蛇足になりますが、コンピューターのプログラミングはアルファベットと数字の打ち込みなので、それほど英語でのコミュニケーションがいらない。デザイン・コンテンツ<イメージの図>と機能を、特殊記号で打ち込んでいく作業なので、日本の中学レベルの英語で仕事が出来る。プログラミングの特殊記号は世界共通なので、その専門的な知識は必要である。しかし、英語が使えないから仕事ができないということではない。)

 <調理人>
 20代男性。高校中退後。飲食店を転々として、居酒屋で5年勤め店長にまでなった。その後、退社をしてカナダにワーキングホリデーとしてわたってくる。
 彼の労働時間は、9時~12時過ぎまで仕事をし、家にはほとんど寝に帰るだけの生活を5年していた。店長になったときには、従業員が欠勤すると出勤することも多々あり、20日間休みがないときあった。給料や待遇も良くなると思いや、手取りで20万円ちょっとでほぼ変わらず、先をみたときに希望が持てずに退社してしまった。
 それから、新しい自分の人生転換するために、海外で働いてみようと思い来加した。はじめの一ヵ月だけ語学学校に行き、すぐにレストランで働き始めた。日本食レストランの寿司場に立たしてもらい、月給で$3500(カナダドル)をもらい週休2日の仕事をしている。いまでは、貯金もでき時間が出来たので、料理の勉強や英語の勉強をしている。後々は、独立して店を持つ準備をしている。

 いま、日本の賃金は世界レベルでいうとすごく低賃金になっている。今回紹介した人は、特別に英語が話せるわけでもなく、どこにでもいそうな日本の20代である。会話だけでいったら、ほぼしゃべれないに近いです。そんな若者でも技術を持てば、海外では通用する。日本で働くより、収入や労働条件はるかにいい。
 日本で5年真剣に働いて、技術を持てば海外で通用する現実があると私は思っている。いままでは、海外で働くことが特殊なことであったが、そんな時代ではない。SNSで情報が飛び交う時代に、自分の能力と雇用主がマッチングすれば、日本を飛び出すことだって普通に起こりうる。そういう情報を上手く共有する時代に入った。若い人たちの賃金問題は、国別に関係なく誰も持っている。この問題は、今回の「移民受け入れ」問題にもつながる。

 いま、海外からアジアの人たちを受け入れても、日本人が思っているような有能な人材は来ません。大学を出てそれなりの人材は、北米かオセアニア、ヨーロッパに行きます。これから募集をかけて来る人材は、ランクの落ちた階層の人材が来ます。日本政府が考えているほど、日本の労働市場は付加価値のあるモノではありません。日本で働きたい外国人は、貧困から脱したい人というレベルの人が来ます。彼らは、命がけで日本に出稼ぎできます。家庭環境が裕福で、学歴があり技能者は、給料や労働条件がいい他国にいくのは当然のことです。日本人ですら、過酷な労働条件で働いて社会の歪みになっているのに、その部分を外国の人で埋め合わせることが、本当の解決策なのか? 私は疑問に思う。

 給料も安く劣悪な労働条件で働けば、必ずヨーロッパのようなテロ活動にも結び付き、犯罪が多くなります。貧困・異文化の生活は、移民で来た人たちの大きなストレスになります。言葉が通じないということが、どれだけのストレスになるのか。彼らが、疎外感や差別という意識を持った時には、日本人に敵意を持ち危害をくわえことだってあることを覚悟しなくてはいけない。日本人に、そこまでの覚悟が出来ているのか。行政側や地域社会は、大量に異文化の人が居住したとき、マニュアルもなければ対応しきれないと私はみています。グローバルの視点で見ることは、つねに想定外で見なくてはいけない。日本の常識や経験値では、理解出来ないことがおおい。
 日本人は、「異文化の歩み寄り」を重視しがちだが、それは時として日本の文化を壊すこともある。「日本文化として許容出来ないこと」このガイドラインがないと異文化の人と日常生活の決めごとは出来ません。

 話しは飛びますが、数年前にお客さんでドイツ訪問したときに何が起きたのか、聞く機会がありました。2年前にメルケル首相が、難民受け入れを言ったとたん大量の中東・アフリカ難民がドイツに押し寄せてきました。日本ではどのように報道されたかしれませんが、イメージはこうです。
 初詣のときに、大勢の人が神社に行く光景が、異文化の人たちだったらと想像してください。何十キロにもわたり列ができ、浮浪者のような異文化の人が道を歩いているのです。道は、たばこを捨てたり痰を吐いたり空き瓶を捨てたり、玄関先には浮浪者のような人が座り込み、外に出るのも不気味な状況だったら、日本人はどう思うか? ドイツでは、それが現実に起こりました。
 その街に住み付いた人たちは、たむろして異国の言葉で会話し、夕方帰宅する道すら一人では怖くて歩けない状況になりました。ある場所では、電車から若い女性が降りたとたん、人が群がり洋服からバックを奪って、強姦強奪が起きました。住宅にも強盗が入り、警察の呼んでもすぐには来ないので住民が集団を組んで対処する事態にもなりました。一階の窓や玄関は、鉄格子をつけて自分たちで防犯する事態に。街の景観も壊れ、どこの家も収容所のような外壁に変貌してしまった。そして、ドイツ国民の血税を使って、彼らに居場所と食事を与え、いまも難民のケアーをしている。この話しをすると、「難民と移民は違う。」という日本人が出てくると思うが、異文化の人と共存するというところはこのような問題も含んでいる。
 普通の暮らしをしている日本の人には想像できない。これこそ国会議員や学者やメディアが取り上げて、異文化の人と共存するということは、負の部分もあるということを伝えなくてはいけない。その上で、普通に暮らす人たちと考えなくてはいけないことである。安易に労働者不足で外国の人を入れるということは、余計に税金の投与にもつながり、街の文化や長年続いた生活様式を変えなくてはいけない事態にもつながる。そこまで、掘り下げた話しにしなくてはいけない。