そら:の引き出し

そら:に母の顔を見に行くようになってはや二年二ヶ月すぎた
そら:
は母が入所している居宅型老人ホームの施設の名称

そら:の母が居る部屋の小物たんすの引き出しには
一ヶ月先まで担当するむすめの名前が記入された
卓上カレンダーと連絡ノートが入っている

この二年二ヶ月
一日もあけることなくむすめ(三人娘:わたしは三女)が顔を出している

そら:に入所したばかりのとき
ホールを突き抜けていかないと母の居る部屋に到着しないことが
とてもなじめず
「ここはうちじゃないー」と心の中で叫び
感傷的になるのだった

母の顔を見るわたしのからだ
の半分はため息で
あとの半分はカレンダーに記入したやくそく

出来上がっていた
いこじだった

スタッフのかたの
「ありがとーございまーす」を何回も聞く訪問体験

なぜ母に会いに行くのにスタッフのかたからお礼言われるのだ?
とかたくなな自分だった

そら:の引き出しに
いただきものやらおみやげ品やらの品が
メモ書きを添えてときどき入る
いまでは
とにかく「3人のわたしたち娘で母を守ろう」体制に純度があがってきた

わたしのいこじ かたくなさ がこの一年半で薄れてきた

薄れるまでにはつらいことたくさんあった

なぜこうまでして気の合わないできるあの人たちと組んでいかなきゃいけないのか
失語症の母を呪った
発語を絶たれた母だけど
「ちょうちょ 飛んでたよ
「夕焼けがすごいきれいだよ
「きょうは満月だよ
、、、と対話したくて泣いた

in大阪のSBMを受けるときインストラクターさんに
おもわず発したこともあった

「死んじゃえばいいのに、、、」

SBMがおわって自分が言ってしまったことを後悔した
インストラクターさんは
「いいんですよー おもいのたけを口にすることは
大切なんですよー」
とおしえてくれて 
脳に新鮮な血流が流れるありがたさをかみしめた

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