海をみにいったよ

むかし むかし

大地の精霊とともに
生きる
先住民の男の人がいた

その男の人は
足元に広がる
美しい大地を
ふかく ふかく
愛していた

雨のふる日も
雨のふらない日も

たくさんのありがとうを
伝えるとき
男の人は
大地に
キスをした

それから
ながい ながい
年月が流れた

いつからか
その美しい大地に
侵略者たちがあらわれた

侵略者たちは
あっという間に
先住民の人たちの
弱味をにぎり
命令をした

大地を えぐれ
ふかく ふかく 掘り起こせ
あいつを
お前たちの 手で
目覚めさせろ

先住民の人たちは
その大地を
決して 掘り起こしてはいけないと
代々
伝えられていた

黄色の大地を
目覚めさせては
ならない と

その
黄色の大地は
ながい ながい 年月
地中の 奥ふかくで
しずかに
眠りについていた

侵略者たちは
逆らうものを 次々 殺していった

美しかった
大地は荒れはて
えぐられ 大きく 傷ついた

黄色の大地は
目覚めてしまった

先住民の人たちは
誓った

最後の一人になっても
この大地を救う

傷つけてしまった
大地へ
償いを

叫びにならない
叫びを
あげていた

むかし むかし
その大地とともに
生きていた
男の人は

きっと
生まれかわっている

よみがえった
大地に
ふたたび
キスをするため

きっと
どこかで
償いと祈りを
胸に秘めながら

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