7の巻 <はじめて起った超常現象・・・1>

それは、出張先のホテルで起こった。
2日後のプレゼンで配布する資料を作成しようと、早めにホテルに戻ってきたが、首や頭に激痛が走り、作業が捗らない。頭が全く働かない。浄化をして、頭を働かそうと数時間試みたが、効果がない。しかたなく、あきらめて、ノートパソコンの電源を切った。一晩中かけて浄化をしてみよう。
浄化をすると、眠ってしまうことが多いが、この日も例に漏れず、すぐにうつらうつらし始めた。それではダメだと思う気持ちが強く、何度も目を覚ましては浄化を試みた。何時間ほど経ったのだろう、突然、「ドン、ドン、ドン」とドアをたたく音がして目が覚めた。指の関節を使ってノックをするというよりは、グーで叩きつけるような音だ。「こんな時間に、一体なんだ?」ベッドの上で身体を起こし、振り返って入り口の方に向き直る。と、その時、透明に近い白っぽい気体が、閉じたままのドアから部屋に入ってきたような気がした。その気体が、ベッドの頭の側の壁に吸い込まれていったかと思った瞬間、白い壁に形が浮き上がってきた。ランニングと短パンをはいたポニーテールの女の子が、壁の中で走っていた。夢でも見ているのではないか?でも夢のはずがない。だって、私は起き上がっている。
あまりの恐怖に、鳥肌が立ち、がたがた震えた。この恐怖から解放して欲しいと願いながら、ただただ目を閉じて浄化のことばを唱え続けた。
結局朝まで、パソコンが唸るような音が聞こえたり、照明器具に電流が流れるような音が聞こえたりして眠れなかったが、何とか一夜をやり過ごした。
翌日、その部屋から逃げるように、早朝から外出した。仕事がひと段落した夕方に、Sekiさんに電話を掛け、昨夜起こったことを話した。

ワタシ「あと2泊、同じホテルに泊まらなければならないのですが、怖くて、戻る気になれません。どうしたら良いでしょう?」
Sekiさん「とにかく、一度ホテルに戻ってから、連絡してきなさい。」
ワタシ「はい。分かりました。」

急いで、ホテルに戻り、Sekiさんに電話を掛けた。
ワタシ「今、ホテルに着きました。」
Sekiさん「うーん。頭痛がするね。昨日、ミコトモチに会ったみたいだね。」
ワタシ「ひょっとしたら、あの人かも知れません。昨日は、朝に新幹線に乗った時から背中や首が異常に痛く、東京に着くまでにどんどん痛みが増してきて頭まで痛くなり、一日中痛みが取れなかったのです。あまりにひどいので、仕事を早くに切り上げて、夕食を取りに、銀座を歩いていると、道に托鉢のお坊さんが立っていました。まだ若いお坊さんでしたが、暑い中汗もかかず、涼しげな顔で、1点を見つめて、微動だにせず立っていました。その人の前を通ると、その人の前だけ、以前Sekiさんに初めて浄化の方法を教えていただいたときと同じように、空気が波打っていたのです。」
Sekiさん「そうかも知れないね。若くして、それだけのエネルギーが出せるということは、真剣に修行をしてきた人なのでしょう。でも、その修行の成果を君は一瞬にして、取ってしまったようですね。」

取ったって???でも、その結果が昨夜の現象なんだったとしたら・・・。もうこんな怖い思いをするのは、いやだー。サンプル待遇ってお得かも、なんて。ゴメンナサイ、間違ってました。

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