「日本は、世界で優位に立つ瞬間が来る Ⅰ」
-官僚が作る愚策は、日本を滅ぼす-

 3ヶ月前に、「Go Toキャンペーン事業(仮称)」の内容を目にしたときに、内容の安易さもさることながら、国家の中枢の政策として、あまりの稚拙な政策のレベルに驚いてしまいました。さらに驚いたのは、そこに付いた予算が1兆6794億円というとてつもない金額に、この国の滑稽さが解ってしまった。政策と投資の因果関係がつながっていないことがわかってしまった。世界各国は、武漢熱の対応と沈静に尽力して、行動規制やワクチンの開発に全力を注入している最中に、「国内旅行をして景気回復をしましょう。」という国家政策のレベルに、日本の縦割り行政が浮き彫りになってしまった。この国は敗戦後75年もの間に、国家観で考える思考が無いことが、政官・財・メディアに誰もいないことが露呈してしまった。過去をたどれば、阪神淡路大震災の時も3.11の時も同じように、国としての指針が立てられない日本の状態がいまだに続いている。
 国として経済活動を中心に体制に舵をきるならば、医療体制の改善と「疫病の搬送と隔離」の体制を各地域に作り、自衛隊を巻き込んで地方自治と軍事医療で国防のシステムを作ることを一番にしなくてはいけなかった。人の往来をすれば感染が広がるのは当たり前のことで、感染者をどのように隔離して法的な拘束力と情報開示をして政治主導の公衆衛生の体制を作るべきだったと思います。個人の自由規制と公共の安全性のガイドラインを明確にして、緊急時の法整備と政策を作るべきだったと思っています。経済に舵を切ること事態は、私個人は賛成ですが、あまりにも国家観のビジョンと政策と国費の注入が、かみ合わない無駄な投資と労力になってしまったと見ています。そもそも、日本の感染状況は世界に比べれば低く、メディアは過剰に危険を煽り騒ぎすぎだとは思って見ています。本来は、死亡者数と重篤者数を基準に危機管理のガイドラインを引けばいいものを、累積患者数だけと取り上げて、あたかも多いかのように発表するオールドメディアは、意図的にメディア主導の情報操作をして、国民感情を煽り必要以上に恐怖と不安に陥れているように見えてしまいます。
 今回の武漢ウイルスの感染は、徐々に解明されて、人の密集度とモノから人に移ることが、感染する原因だということが見えてきているので、正しい知識に基づいた対応をすれば大きな問題にならないと思っています。一番危険だった2月の時点では、ほとんど武漢ウイルスの危険を報道しなかったにも関わらず、いまになって危険を煽るのは、地方自治・メディアがその場しのぎの大衆迎合をしているように見えてなりません。もう少し視野を広げて、ものごとを点で見るのではなく、時間と状況を線で捉える人が出てこなくてはいけないと思っています。
 いまの日本を見ていると8年前を思いだします。メディアと政治が、当時政権だった麻生内閣を徹底的に否定して民主党政権を作りました。しかし、民主党政権は政策も出鱈目で、ポピュリズムに依存したがゆえに、各省とメディアだけが得をして、日本という国を崩壊する1歩手前まで導きました。(尖閣での中国漁船の追突や法を無視した中国人の釈放。福島原発の事故が起きたときの国としての対応。財務官僚のシナリオを大臣が発表して、急激な円高を引き起こして日本経済を低迷させてしまった。数えれば、切りがありません。)その状況の中で、庶民の踏ん張りと民間経済の活力があって、崩壊には至らずに日本の国力が証明されました。日本という国の面白さは、一般国民の良識判断が高く、政ごとのトップが無能でも、庶民レベルで国を動かす力があることです。今回の武漢熱を見ていても、同じような状況に映っています。一般家庭の生活空間の中で公衆衛生を守り、必要とあれば「自ら手洗いとモノの消毒とマスク着用」をして、法律的な規範が無くても困難を乗り越える人知を持っていることです。
 いま、日本の問題は医師会を含めた、一部の既得権益の情報に惑わされ、国益という単位で語る人がいないことが大きな問題です。オールドメディアが、PCR検査が必要だと取り上げると、大衆はそればかりを注視しPCR検査を推進しない政権を批判するという、おかしな流れを作っているように見えます。本来は、治療が出来る態勢を作ることがはじめにあり、復帰した人たちを社会に戻すことが医療の大原則である。いまある資産(自衛隊・地方大学医学部・地方自治・民間の協力)を最大限に活かしながら、地方が政治の力で街づくりをすることだと思っています。それを阻んでいるのは、古い体制の既得権益と間違った情報を流しミスリードをして、世論を作っているオールドメディアの体制だと見ています。各地域にある資産をフルに使い、東京からのトップダウンを脱して、国づくりをする必要があると思います。感染しても治療と社会復帰という安心感を地方の政治の力で作れば、誰もが必要以上に恐怖や不安を持つことはなくなると思います。
 この武漢熱の問題は、感染症だけでなくどのようにして経済活動を復活させるのか、非常に大きな局面を迎えていると思っています。いまの日本全体の空気は、「都会から人の移動を拒む。」世論で満ちていますが、感染したときの医療体制と法の設備をして、「個人の自由の規制」と「公衆衛生の公共の義務」を明確なガイドラインの線引きをして、各自治体に地方の英知に委ねる政ごとをさせるべきだったと思います。いまのオールドメディアの不思議なところは、沖縄や大阪や東京で感染者が増えた後の状況を報道しないことである。「重篤なのか? 完治したのか? 死亡したのか?」そこを明確にせずに、「感染者が増えた」という言葉の誘導が、危険という心理だけを煽って、次のステージに導こうとしないのが、大きな問題だと思っています。正しい認識と何をしてはいけないかを、地方行政は明確に示すべきだとおもっています。そのためには、地方行政が選任した専門家の顔を出し、行政・医療・地方経済・政策を住民に共有してもらい、科学的な根拠の下で誰が決断をしたのかを明確にするべきだと思っています。日本は、もっと顔が見える政治をするべきだと思います。いまの日本の政治の問題は、国政・地方自治ともに「政ごと」に参加している専門家の顔が見えないことです。本来は、開かれた政治をするのであれば、地方自治でも医療・経済・自治の代表が、ポピュリズムに迎合するのではなく自分の人生を掛けた言葉を持たなくてはいけないと思っています。いまであれば、YouTubeなどで随時科学的な検証データーを発表して、方針を示すことが容易に出来る時代になりました。ITを上手く利用すれば、時間を短縮して情報の共有化をすることが出来る時代になりました。その時に、未知を切り開くことには失敗も付いてきます。何が良くて何が失敗したのかを、検証する政治をしなくてはいけないと思います。民間企業では、当たり前のことが「政ごと」になると、誰も責任を負わない言葉だけが浮遊して雰囲気だけが世論を動かすという、不思議な空間を作っているのがいまの日本の「政ごと」です。この状況を続けることが、日本の国力を低下させている原因になっていることは間違いありません。
 話しは、「Go To トラベル」に戻します。「なぜ、この政策が愚策か。」いまの日本の体制を見ると、国政と地方自治の明確な区切りがなく、なぜ国政がこの仕事をするのか理解しにくいところがあります。今回は、国として「消費減税」や「期間限定の高速道路の無料化」や「ガソリン税減税」などをして、全国一律に民間にお金が流れるシステムにすればよかったと思います。そして、各地方自治体の民間経済に委ねるべきで、東京からのトップダウンの経済体制は中央集権の古い体質で、コロナ後には通用しない体質だと思っています。いま、日本経済の大きな問題は、国政と地方自治に経済的な概念がなく、地方自治体が主導になって地方経済を活性化さえることを国政が関与して、経済政策をうっていることであります。そして、「Go To トラベル」で武漢熱後の景気回復が出来るという安易な発想が見えてしまいます。そもそも、この政策は旅行関係者を救う1つの方法として打ち出されたものだと思っています。航空会社・旅行会社・ホテル・旅館・外食産業などの雇用促進と、地方にお金を回す手段として作られた政策で、武漢熱によって地方経済が崩壊をくい止める最善策として作ったと思います。しかし、世界どこも鎖国状態によって、お金と仕事の流れが大きく変わってしまいました。前の回にも書きましたが、行楽・娯楽ビジネスでお金を回すことが出来ない社会になってしまいました。いま起きている現象は、昭和・平成に信じられていた高学歴と大企業神話が崩壊し、サラリーマン社会が続かないことを意味しています。この8月以降、北米は航空会社や大手のホテルの大企業が何社もつぶれていく時代に入りました。実際に、多くの観光業界で働いていた人たちは、レイオフをされ職を失ってしまいました。(レイオフ制<一時解雇>と言うのは、日本にはないシステムなので、簡単に説明します。企業利益が減ると、正社員だろうが首を切られるシステムです。ただし、収益が戻り人材不足になり雇用をしなくてはいけなくなった場合は、レイオフされた人から雇うことが前提になります。北米企業は、パート・正社員も削減することで経営を立て直し、仕事量とキャッシュのバランスで経営をしています。企業収益が上がらなかった場合には、レイオフをされた人は永久解雇になってしまいます。日本には、終身雇用体制があるので、正社員の保障が必要以上にされていますが、他国はそのシステムがないので、常に解雇通告があります。そこには企業規範と法が、公平に記されているので入社するときに被雇用者も理解しています。)いまは、北米社会はレイオフと失業保険で場をしのいでいます。しかし、彼らは半年の失業保険が切れたら、新しい仕事先を決めないと生活が出来ない状況になっています。実は、北米では大問題が起きるのは、8月以降で、北米内で労働者の転職の大移動が始まろうとしています。
 職種も限られ働き口もない中で、定職に就く戦後最大の椅子取りゲームが始まろうとしています。中には、転職をする人や資格を取り直し学校に行く人など、大きな産業変動と労働者の大移動が起きようとしています。北米社会は、産業として成り立たなければ、次に転職をすることに厭わない社会風習を持っています。居住・転職の人口移動が一斉にはじまり、都市型の人口集中社会システムが壊れようとしています。当然、仕事も限られる中での定職になるので、前職よりも収入が減る人が多く出てきます。この現象は、世界各国で同時に起り、労働のデフレといままでの現金の流れが全く別なものに、変わってしまうことがはじまろうとしています。いま、日本の官僚を含め政財界も考えなくてはいけないのは、経済循環が既存のシステムでは回らなくなっているという現実を受けとめなくてはいけないことだと思っています。
 今回の「Go To トラベル」は、古い既得権益である観光業界と航空会社と広告代理店を含めたメディアが、大きな圧力団体になり、この奇怪な政策を推し進め、間違った国づくりに導いている最悪のシナリオだと見ています。メディアがこの政策を非難しない裏には、観光業界と航空業界と広告代理店の古い経済連携(コングロマリット的な体制)を維持させえるため、誰もが見て見ぬ振りをしている闇が潜んでいると思っています
 海外から見ていて、すごく不思議に思うことは古い既得権益の団体や大企業が、武漢ウイルス後に存在出来ているのか? という素朴な疑問です。大手の企業を含めて、倒産するところが後を絶たないと思います。この鎖国状態は、各国がブロック経済状態になっている中で、国内だけでは景気を回せない、世界恐慌に匹敵するものだと思っています。半年間、経済活動が止まり国の助成金で回している状況の中で、経済を再開したからといって半年間のマイナスを補えるほど、民間資産があるとは思えません。しかも北米の見通しは、さらに半年は通常の経済活動は厳しいという見方をしています。すなわち、ブロック経済状態が1年続くことを意味します。
 そうなれば、日本の国づくりにおいても残す産業と潰す産業が出てきます。そして、資本と労働力の流動をはじめる時期に来ていると見ています。それにもかかわらず、日本の経済の血流を観光業界と航空業界を柱にして、回すのは何を意図としているのか、まったく理解に苦しむ国策であります。この問題は、世界各国が同時に起きている問題で、この問題を解決したところが次のステージに入れる国・民族だと見ています。そして、北米の人知は観光業と航空業界には依存しない、経済政策を出し、うって出てくると思っています。
 いま、日本の政官は何を柱にして、国づくりをはじめていくのか問われていると思います。勤勉・勤労の価値観で生きてきた民族に、仕事が出来ないという現状がはじまろうとしています。ほとんどの日本人は、仕事の中で自分の人生を確かめ、勤労信仰の中で社会が成立している特徴を持っています。その日本の精神である、勤労する場所を奪ってしまったら、日本人はどこで自分を確かめることをするのか? いま「政ごと」をする人間に求められているのは、日本人の精神を保つ場を作ることであり、次にくる産業のフラットフォームを作ることだと思っています。
古い省益や財界の既得権益にとらわれるのではなく、柔軟な発想と新しい産業を作る時期に来ていると思えます。