歴史から抹消してしまった国防と国益 XⅧ
-見えない戦争 <食料とエネルギーの争奪戦>-

 世界では、食料とエネルギーの争奪戦がはじまりブロック経済に世界は突き進んで行きます。そして、多くの日本人は「カーボンニュートラル」「SDGs(エスディージーズ)」という言葉に踊らされて、世界の環境に良く先鋭的な思想だと思っていますが、ほとんどの日本人は言葉に隠されている意味を理解していません。世界的に、「カーボンニュートラル」という言葉を作って大きな流れを作っているのは、ヨーロッパや北米をはじめとしたガソリン自動車から電気自動車に移行させるエネルギー戦争と自動車戦争になっています。この「カーボンニュートラル」を日本国内で進めることは、日本の基幹産業である自動車産業衰退していくことを意味しています。

 (右の写真は、公園の敷地に充電のターミナルを置いて無人かつキャッシュレスになっている。この2台のEV車は、ボルボとポルシェでテスラ―だけではなくなっている。最近は、KIAの韓国車も充電をするようになってきている。)
 この数年ガソリン車は、世界の覇権争いに負けてEV自動車にシフトしています。日本は自動車産業の1本柱で国際経済の中で、どうにか経済大国を維持してきました。この自動車産業が無くなるということは、コロナ以降外貨を獲得する手段が無くなり、さらに日本国内の貧困層を増やし大量の失業者がでることを意味します。そして、モノ作りの技術者と世界に誇る工業製品を作る中小零細企業を潰すことを意味します。これは、最悪のシナリオで世界唯一無二の技術をなくすということは、日本のモノ作り文化を捨てることに繋がっていきます。外国の電気自動車が主流になれば、国内からお金が出ていき国富の減少はさらに貧困層を増やすことにつながります。そして、世界的異常なインフレが日本に直撃すれば、さらに給料は上がらず物価だけ上がる最悪な経済がはじまります。そうなれば、次世代の20~30代は家庭をもつことすら困難な社会に向かっていくでしょう。その結果、家族すら持てず「和を以て貴しと為す」という日本の精神ですら育むことができない社会に向かっていきます。コロナ後の経済対策を一歩間違えると、日本は2つの価値観を自ら捨てることになります。もの作り文化である勤労文化と、日本人独特の人と人がつながる「結」という精神文化です。いま、この経済戦争は単純に自動車産業の戦争でなく、日本文化と欧米文化の目に見えない戦争になっています。

 

―個人が社会とどう接点でつながるか―

 いま、日本人一人一人が向き合わなくてはいけないのは、社会が大きく変革しているときに、過去の社会システムに捉われないことだと思っています。毎度ながら言ってきましたが、年功序列賃金体系と終身雇用システムで、1つの会社に帰属する社会構造は終わりました。これから、昭和・平成に作り上げてきたサービス産業の崩壊がはじまります。これは、イギリスの産業革命で起きた現象と全く同じ状況になり、その職業で働いていた人たちの大量失業時代がはじまります。イギリスの産業革命期に起きた現象は、自動織物機が出来たことで大量失業が生じ、多くの人が路頭に迷いました。これからの日本社会は、産業革命で農夫が職を失ったようにサービス業で働いている人たちが淘汰される時代がはじまります。「ITが人を食ってしまう」(IT技術の普及で、人材労働の削減ができる)時代に突入しました。産業革命期のイギリスでは、「羊が人を食ってしまう」という言葉がトーマス・モアによって作られました。(別に、羊が人食をするのではなく。毛織物時代の到来によって農地から牧草地に移行したことで、多くの農夫が職を失い強制的に転職をしなくてはいけなくなりました。)
 これとまったく同じ状況になっているのがIT革命です。コロナ禍で分かったことは、「オフィスに多額の費用をかける意味があるのか?」「仕事内容と就労者の比率が合っているのか?」これらのことがIT技術によって、どれだけ削減できるのかが解ってしまいました。特に、オンラインでミーティングをすることで、毎日出社をして同時に大量の社員が同じ場所で仕事をする意味すら無くなってしまいました。このIT革命によって、「通勤ラッシュ」や「オフィス街」というモノが不要だということに気付いてしまいました。
 これからは、会社中心の生活から居住中心の生活に社会の仕組みが変わってきます。オフィス街で働いていたサービス業の労働体制が変わっていくことは避けられません。さらに言えば、国内のサービス業の牌が小さくなり同業種の統廃合がはじまっていくでしょう。その最たるものが、金融業界でどんどん統廃合していくはずです。電子マネーや外国の投資ファンドが入ってくれば、日本の国内の現金だけを管理する体制では太刀打ちは出来ない時代になります。
 このIT革命によって、産業の編成は加速していきます。第二次産業と第三次産業の融合や第一次産業から第三次産業まで1つのセットとして統合された仕事になっていくことは避けられません。もの作りの業界では、すでに融合されたビジネスコンテンツに移行しています。私の関わっている刃物業界や砥石業界は、第二産業と第三産業をセットにしたビジネスモデルで産業構造の改革をしています。そして、一部の日本酒の製造元やワイナリーは、第一次産業から第三次産業すべて融合したモデルで世界に販売しています。
 じつは、ここに次の日本人のビジネスコンテンツがあると思っています。多くのサービス業で働いていた人は、第一産業や第二次産業の特殊な技術や労働を身に付けていませんが、これを身に付けることによって新しい働き方と労働市場の抜本的な改革が個人レベルではじまります。農家をしていた人も食品加工と販売をすることで、第一次から第三次産業を1つにすることになります。そして、売れ残りの農作物を加工ができ廃棄を無くし、商品にして物流に載せることができます。これが、個人レベルで出来る産業構造改革です。いま、日本の経済構造の根本の問題は国内市場を広げることばかり考えていることです。「IT革命の本質は何か?」 仲買人がいらず(中間がいらない社会)ボーダレス(国境がない社会)になっていくことで、貿易の壁が低くなり世界市場に販売することが個人ベースで出来るようなったことです。商社やディストリビュータ(配給者・卸業者)を使わずに、海外に生産者が売りに行くことが出来ます。実は、その本質を多くの日本人は気づいていません。起業するほとんどの人は、日本の国内市場のマーケットをリサーチすることばかりして、世界市場をターゲットにしたコンテンツでものごとを考えていません。世界市場に打って出ることは、世界の市場をターゲットにして外貨を稼ぐことです。IT革命によって、情報伝達が国境を越えて誰でも出来るようになりました。コロナ以降は、個人が世界市場に出てサービスや商品を売る時代になっていきます。
 日本人の大きな問題は、他民族社会と比較したときにどこに日本の価値があるのかをわかっていないことです。多くの人は、大企業の価値観やサラリーマン社会の世界観で世の中を見ているので、その本質をわかっていません。海外に出て多民族社会を見れば、一番価値があるのは中小零細企業の技術や商品であることが理解できます。日本国内では、大手や大企業の価値観でサービス業優位の経済の仕組みを作り、第一次産業と第二次産業の労働価値を低くしてきました。生産者と製造元に光をあてることで、既存の日本社会の仕組みが一瞬で変わります。そして、第三次産業を国内市場から世界市場にすることで日本の産業は簡単に復活します。多くの日本人は、明るい未来が見いだせず将来希望が持てず、どんよりと曇った社会しか見えず苦しんでいる人が大半だと思います。しかし、光を違う角度から照らすと、まったく違った景色になり世界で一番可能性と夢を秘めている国は日本であること誰もが理解します。