歴史から抹消してしまった国防と国益 XIII
-2022年をレイヤーで見る国際状況-

2月 北京オリンピック
3月 韓国大統領選
7月 参議院選 (日本)
中国共産党大会 (習主席 3期目の政権継続かを決める共産党大会)
11月 アメリカの中間選挙

 

 国防と国益について十ヶ月にわたり書いてきましたが、2022年から時代の流れが大きく変わり戦後、避けてきた「軍と国家」の本質が日本人に問われる年になりました。ロシア軍の侵攻により、平和と戦争が表裏一体であることを多くの人が理解したと思います。自国が平和を望んでいても隣国の侵略により、いつでも戦争に巻き込まれ、平和を維持することが出来ないことが証明されたのです。ウクライナ政府は国家として、自国民を守る権利(個人の生命だけでなく領土や民族の尊厳)があることを、日本人に気付かせてくれました。敗戦後の日本は、敗戦責任洗脳プログラム(WGIP)によって国防概念がない国家観を植え付けられ、武装しないことが平和であると信じてきました。また、日本人は、世界のパワー・オブ・バランスの概念もなく世界の常識とは乖離した国家観で、今日まで平穏な生活を送ることが出来ました。しかし、これからの世界は荒野化された世の中になり、常に危険との隣り合わせの世界情勢になったことを自覚しなくてはいけないと思います。コロナ以降の世界は、通常の世界に戻ることは出来ません。
 実は、この内容を年初めに書いていたのですが、民族差別と受け止められる要素が強かったので時期尚早と思い没にしたところでした。しかし、2月下旬にロシアのウクライナ侵攻がはじまり国際社会の変化が加速し、以下の内容が遠い未来でなく近い現実になっているので、この内容を載せることにしました。そして、多くの人が民族と国家を意識しなくては生きていけない時代に突入しました。日本人の中に、国際社会は牧歌的・平和な社会であると信じているものもいますが、すべては言論空間の桃源郷の中でしかありません。敗戦後の日本は、アメリカの洗脳プログラムによって国際秩序のリアリズムに即した意見を持つことすら許されませんでした。世界は、人間の欲望と支配力が横行する秩序で成り立っています。国際社会の変動は、すべて過去と情勢(欲望・時事)と時間軸のパラダイムによって未来が作られていきます。そのパラダイムをひとつひとつ詳細に見ることで、日本人の民族間と国家観を取り戻すことが出来るはずです。

 上記にも書いてある各国の日程・行事は、世界の誰でも共有できる情報です。しかし、これを「世界のパワー・オブ・バランス」や「国益・軍事」というパラダイムで見ると、まったく違うものになって2022年が見えてきます。このロシアの軍事侵攻1つ見ても、決して突如現れたものでなく兆候があり世界のパワーバランスが崩れる過去があって現在に至っています。そのパワーバランスの根幹は、アメリカの覇権が日を追うごとに弱体化していることです。オバマ政権以降のアメリカは、大統領の覇権能力が衰退し世界の警察が出来ないところまで来ています。2014年を振り返れば、ソチオリンピックが終わったと同時にロシア軍によるクリミア半島制圧が起こり、オバマ政権は何もすることもなく黙認で終わってしまいました。それ以降は、トランプ政権に変わってもアメリカの弱体化は如実になっています。その1つが、北朝鮮の核実験を許し核保有国になるまでになってしまいました。これは、アメリカの権威が目の前で崩れていくことの象徴であり、各国はアメリカの衰退を理解しているからこそ、小さな覇権勢力が好き勝手に秩序を壊している状態になっています。北朝鮮が、核を持ったことは何を意味するのか? 世界は、核抑止力が意味をなさない世界情勢になり、核は貧困国でも独裁者の意志で持つことが証明されています。日本は、被爆国として核について議論や意味を理解することすら許されず「核」というパンドラを開くことを不道徳としてきました。いまのオールド・メディアや国会を見ていても、世界情勢とはかけ離れた議論しかせずリアリズムがない人たちが言論空間を仕切り、「核」の意味が変わったことすら理解していません。アメリカが、世界を取り仕切ってきた時代の終焉がはじまり、力と覇権による国家が横行する時代になりました。
 その上で、今回のウクライナ侵攻を見ると、戦争の形が大きく変わり、核を保有している国家が代理戦争でなく直接侵略と殺戮をして、世界のモラルやルールを変えてしまったことです。そして、アメリカという国は「核」を保有する国家に対しては、何も手出しが出来ないことが証明されてしまいました。いままでの核の本質は、核保有5大国(常任理事国)が高いモラルと大国同士が戦争をしないという軍の均衡で平和を保つという共通理念を持っていたことです。その大きな柱は、パリ講和条約(1920年)から続いていた集団安全保障(ウィルソニアニズム)を基軸にして軍事の均衡で平和を維持するという思想であります。敗戦後の世界は、核保有+ウィルソニアニズム(1920年に「民族自決主義」と「集団安全保障」の基本理念で世界秩序を保つ理念)のハイブリット理念が大国同士の戦争を回避してきました。しかし、ロシアの軍事侵略が核保有国のモラルを下げ、ウィルソニアニズムが通用しない世界秩序になったことを理解しなくてはいけません。過去の倫理と秩序では、世界の現状を維持することの出来ないのです。
 国際社会の根幹は、強者が弱者を襲い潰してから支配するという人間の闇で成り立っています。明治維新前の世界を見れば、キリスト系文化を持っていた民族が世界に出ていき、植民地化と大量虐殺をした歴史があります。貪欲で「隙あらば横取りをする」という動物的本能の中で国際社会は成り立っています。強者が弱者を吸収する弱肉強食社会であり、取られる側の責任という大原則がボーダレス社会の基本的な価値観です。この価値観を理解すれば、日本のように「みんなで仲良く」という桃源郷の世界(国際的に言えば、集団安全保障の理念)では、世界は成り立っていないことを理解できると思います。「軍事・国益」「世界のパワーバランス(アメリカ支配の秩序)」をレイヤーで見ることで、オールド・メディアで伝えている世の中とはまったく違った社会が見えてきます。そして、多くの人が「世界で何が起きているのか」実態を知る必要があると思います。

 

―朝鮮半島で起きている現実―


 3月は、韓国大統領選です。日本のメディアは、深堀をして韓国国内の情勢を伝えていませんが。いま、韓国経済はコロナによって仕事がなくなり、20~30代の韓国人は国外に出る人が増え、韓国に残りたいという若者が減っているという現実があります。実際に、カナダにワーホリや留学ビザを使い渡航して、移民やワークビザで働いている人たちが増えています。その韓国の若い人たちの意見は、韓国に戻っても「まともな生活が出来ない」ということを異口同音にして言っています。それに加えて、韓国政治は朝鮮半島化(韓国と北朝鮮の統合)をする動きを大統領が変わるたびに加速させている状況で、それに対して懐疑的な感情を持っている若者が増えています。これから韓国は、若者と中流家庭の空洞化が表面化していきます。海外に出る人たちは、高学歴と特殊技術を持っている人たちが多く一度海外に移民で出てしまうと、ほとんどの韓国人は自国に戻ることはしません。これから、10年という単位で見ると韓国国内は民族の弱体化が進んでいくでしょう。韓国が弱体化すれば、北朝鮮が侵攻してくるのは当然のことであり、南北統一の朝鮮半島の夢の現実化が近づいてきます。そうなれば、韓国という緩衝地帯がなくなり日本の喉元に、独裁国家が隣接して世界のパワーバランスが大きく変わります。民主主義陣営の境界線が南下して38度線から対馬列島に移るということは、国防体制を変えることになります。ドイツのように民族統一が、よかったという仲良し信仰の話しではなく、日本人にとっての脅威が目の前に現れて、いつでも侵略や進攻が出来やすい状況になります。
 さらに朝鮮半島は、民族教育で北も南も小学校のときから反日教育をして日本を敵国として子供たちに洗脳教育をさせています。この教育は、将来何を意味するのか? いまの民族観のない日本人には、その教育による民族間の摩擦がどれだけ日本民族に被害がでるか、未来を予測することすらできていないと思います。小さいときから日本人と聞くと「憎悪と憎しみ」を呼び起こす装置を無垢の子供の心に植えこんでいることは、必ず朝鮮民族と日本民族の軋轢ができ、日本人が描いているような牧歌的な社会空間でなくなると見ています。日本では、韓流スターを芸能人として特殊な扱いで取り上げていますが、彼ら彼女らはビジネスの対象物として「日本人をマネー」として見ている節があります。日本人は韓国人に対して好意的・親睦的に見ようとしていますが、彼らは違った価値観で日本人のことを見ています。「みんな仲良く」という牧歌的平和的な感覚で、「日本人と韓国人は同じ価値観を共有して一緒である」という思考ではないということを理解した方がいいです。これは、別に朝鮮民族を差別して言っているのではなく、小さいころから違った歴史観や価値観を植え付けている教育は、時間が経つにつれて違った人間形成になっていることを理解する必要があります。私個人も多くの韓国人のお客さんや友人を持っています。ほとんどの人たちは、礼節を持ち日本人を差別することはありません。しかし、民族が違うと価値観も大きく違ってきます。歴史の歪曲と反日教育を小さいときに受けた教育は韓国人にとっても決してプラスになることはないのです。(誤解を招かないためにも付け加えますが、必要以上に民族差別や嫌悪を持つのではなく、異文化や他民族との距離の取り方の教育が日本人はされていない現実を見るべきであります。どこの民族も距離感と達観した価値で他民族との共存をしています。これが国際社会の民族の共存の仕組みであります。)そろそろ日本の教育も一辺倒の「みんな仲良く」という教育だけでなく、他国の歴史的な背景や達観する国家観と民族観を持つことの出来る人間を育てていかなくてはいけないと思います。(他民族の民族観については、日を改めて書こうと思います。)
 話しを地政学的に戻します。朝鮮半島の深刻な問題は、統一をすることになれば共産主義や独裁政権を嫌う大量の韓国人が日本に押し寄せて入国してくることです。それは、香港やいまのロシアを見ていれば現状を理解できると思います。はじめは、観光ビザで入国しますが期限が切れれば、不法滞在者になり日本社会の中に紛れて行方が解らなくなっていきます。不法滞在と不法労働が横行し、日本の法設備では管理できなくなれば日本の社会の治安にも影響してきます。いまの日本人は、人道上「行き場のない人を助けるのは当たり前」と言って善意で対応をするでしょう。しかし、彼らが貧困と閉塞社会への不満を持った時には、幼少時代に憎悪を生む装置を持った人たちと日本人が同じ価値観で生きられるとは思いません。いつかその装置が起動し日本社会を壊すことだって簡単にできます。そのときに、日本人はどのようにして他民族との共存をしてくのでしょうか? そろそろ日本人は、短絡的な情緒論や感傷論で国際社会を見るのは止めるべきです。過去と現在と未来の時間をロジスティックに見て、民族の生存競争の本質的意味はどこにあるのかを知る必要があります。
 韓国の大統領選は、朝鮮半島を統一の方向に進んでいく選挙だと思っています。それが早いか遅いかの違いで、どんどん北にすり寄っている国づくりをしていることは、日本人は理解するべきだと思います。今回の5年間は統合がなくても、いずれ統合していくことになるでしょう。先にも言ったように、韓国の優秀な人材は国外への流出が止まらない現実は何を意味するのか? いずれ韓国は、経済力・統治力を落とし、いまよりやっかいな隣人となるはずです。