歴史から抹消してしまった国防と国益 Ⅸ
―オミクロン株に隠れた地殻変動―

 世界は、オミクロン株によって新たな局面に入っています。ワクチンを推進してきた国は、コロナによる死亡者数と感染者が激減して、このクリスマスを通常社会に舵を切る分岐点として考えていました。しかし、新型ウィルスによって社会は逆戻りしてしまいました。ノースアメリカでは、武漢熱やデルタ株のときほど危険だという報道をしてきませんでしたが、人流の勢いは11月より落ち通常社会に戻る機会を失ってしまいました。
 以前は、新型ウィルスが出ればロックダウンや経済の規制(レストランやスポーツ観戦)をして、法的に罰してきたのですが今回は全く政治的な動きはありませんでした。アイスホッケーやアメフトは、9月に出された規制(ワクチンパスポートを持っている人:前回に書いた内容)の中で普通に観戦をしています。それに加えて、アメリカとカナダの国境を閉鎖せず人流を止めない状況を見ると、オミクロン株の感染力は強いものの弱毒性に向かい普通の風邪に近づいているのかもしれません。今回の国家政策は、人流を止めて社会に規制をかけるより、経済重視に政治は舵を切ったと見ています。
 しかし、オミクロン株が出てきたことによって繁華街での人通りが激減して、トラウマからか自ら外出を控え自粛ムードになっています。このシーズンになれば、レストラン・ショッピングモールも忙しくなり店によっては、年間の売り上げの20~30%になるところも少なくありません。今年のクリスマスシーズンは、通常社会に戻ることを期待したにも関わらず、クリスマス商戦にならず経済が低迷の方向に向かっています。
 今回のクリスマス商戦で見えてきた、北米の経済事情が2つあります。1つは、経済的に窮困層が増えていて個人の購買力が落ちているという問題。もう1つは、外国のサプライチェーン(中国を生産拠点に置いていること)を組み入れたことで、衣服・嗜好品から子供の玩具に至るまで、輸出入の物流が鈍化してモノが足りない状態になっている問題。それによって、今回のクリスマス商戦は大幅なセールが出来ない店が多く、物流が通常に動いていない品不足状態になっています。クリスマスパーティーが解禁されていているにも関わらず、物価が高くなっているので家族や友人にプレゼントを渡すことが困難になっています。
 前回は、働き手がいないので賃金が高くなっていると話しましたが、今回のクリスマス商戦は物が売れないという経済の悪循環になっています。いま、株や資源の先物取引などで経済が担保されていますが、株価が暴落し為替のバランスが崩れたときに、北米の実体経済が一瞬にして壊れてしまう時限爆弾を抱えています。
 
 さらに大きな問題なのは、見出しにもある「隠された地殻変動」がはじまっているということです。その意味は、冷戦から続いていた世界秩序が大きく変わり、パックスアメリカーナの時代が終焉し新しいパワーバランスがはじまったということです。冬の北京オリンピック以降の世界は、戦争と侵略が表面化して日本国が存亡の危機に立つことは避けられない状況になっていくでしょう。いまの日本のメディアや国会を見ていて不思議に思うのは、世界秩序の変動が起こっているにも関わらず、危険な状況であることを日本人に伝えていなことです。この状況は、武漢熱がはじまった時にすごく似ています。(事実を正確に伝えないということ。)
 世界経済が、丸2年まともに経済活動が出来ないことがどのようなことなのか? 各国は、疲弊の状態になり貧困者数は増えて、いままでの人知では国を立て直すことが出来ない国が続出してしまいます。日本は、厳しいなりにも民間経済を回してきました。しかし、他国は財政出動をして民間経済を止めて国がマネーを補てんしてきました。その財政が底を付き、民間経済を支えられなくなってきています。2022年は、その不足したマネーをどこから調達し、埋め合わせをしていくのか? これが、最大の問題であり各国とも共通の課題であります。そのときに、出てくるのは自国の富(国民生活を保障する)をどのように維持していくのか、国益と国防が最重要課題になっていくでしょう。過去の歴史を振り返ると、自国を守るために隣国や他国から富を奪い殺戮をする行為を人類は繰り返いしてきました。その状況が、形をかえて日本に訪れるということです。北京オリンピック以降は、さらに表面化して軍事と外交の比重が大きくなり、間違った政治決断が許されない時代に突入していくと見ています。日本人は、性善説の中で世界が成り立っていると思いますが、アメリカが世界の警察を辞めた時点で、冷戦後に続いた世界の秩序ではなくなり弱肉強食の荒野の時代に入ったと考えた方がいいでしょう。
 私が世界の状況を洞察するに、2年間の経済の空洞化を埋めるためには、どこかを潰してお金(資産・領土)を奪い自国に補てんするというマネー戦争が、2022年から本格的にはじまると見ています。それが、中国なのかアメリカなのか日本なのかヨーロッパ圏か解りませんが、どこかをひとつ潰せば世界が潤い自国の存命を維持し亡国から免れるために世界は動くでしょう。民族の生存競争がはじまってしまったと洞察しています。

 

―オリンピックの政治的ボイコットの本質―

 先日、アメリカが北京オリンピックの政治的不参加を表明しました。イギリスまでも、政治的は参加を発表しました。
「これは何を意味することなのか?」
「その先にある世界の図式は、どうなるのか?」
 これは、ただ単に政治家が中国の五輪に参加しないという話しではなく、政治面・経済面で中国と真っ向から対立する意思表示を示しました。日本の言葉で言えば、果たし状を渡したことと同じです。中国に対して「民主主義で行くのか、それとも独裁主義で行くのか、国家として意思を示せ」というのが本質の問題です。これは、中国にとって習近平体制を解体しろということであり、臨戦態勢に入った同じです。
 いままで日本は、安倍政権が先頭に立ちこの大きな流れを世界に作ってきました。それが、いまはアメリカとイギリスが先陣となりイデオロギーの対立の火ぶたが切られ、民主主義陣営が続々とアメリカ・イギリスに追随しています。(ただし、イギリスが動くことになれば必然的にカナダ・オーストラリア・ニュージーランドが自動的に追随する。なぜなら、イギリスの連邦国家であり国家元首はクイーンエリザベスだからです。日本的に言えば、ヤクザ社会と同じで、親分に従い同じ行動をするという図式。)次にヨーロッパ諸国が、どのように動いていくのか非常に興味深く見ています。今回は、ドイツのメルケル首相が退任して、ドイツが中国に依存していく経済でいくのか、世界は注意深く見ています。ヨーロッパ圏の親分であるドイツの意向が決まれば、EUの方向も決まります。いま現在は、フランスだけが政治的なボイコットをしないと表明しているが、果たしてその本心はどこにあるのかよく見えません。外国人の気質は、情勢が傾けば幾らでも強い力になびく性質を持っています。(日本人は、日本の気質で世界を見ない方がいいです。一度決めたら、方針を変えないというのが日本の美学ですが、フランス人にそんな美学があるとは思いません。ヨーロッパ人は、常にご都合主義なので自分たちの有益の方になびく性質があります。そこは、日本の外交は逆手に取って、日本の国益につながる外交を展開するべきだと思っていす。)
 なぜ、日本は岸田政権になり歯切れの悪い外交をしているのか、不思議に思いながら見ています。安倍政権と菅政権が続けてきた外交政策を続けていけば、日本はまた遷宮一隅のチャンスが来て、世界の中心になることが出来るにもかかわらず、一体なにを躊躇しているのか。政治指針を世界に示し、これから起こりうる軍事衝突時に日本が主導権を握って、日本の国益になるよう世界を誘導していける立ち位置に立っています。これからの世界秩序は、日本が設計できる立場であるにも関わらず、中国に歩み寄る政治姿勢は自らチャンスを放棄しているように見えます。そろそろ日本の政治は、予定調和をする外交から卒業するべきだと思っています。その優柔不断な外交は、決断できない民族であることを世界に示すことであり、決断が出来ないということは常に責任を取らない民族国家であることを示していることでもあります。
 近年の中国の覇権政治に対して、日本外交は話し合いだけで国益を守ろうとしてきました。しかし、本当にそれが出来ただろうか? 数か月前の総選挙では、中国海軍とロシア海軍は日本人の目の前で、軍事行動で明確に意思表示しました。北方領土問題や尖閣問題で軍事的緊張状態である対立国の軍艦が、青森と北海道の津軽海峡を堂々と走っていくという現場を日本人は立ち会いました。民主主義の根幹である選挙期を狙って、軍事挑発をするということは何を意味するのか? これが、北米であれば連日連夜「Breaking News(緊急速報)」として、国民の中に危機であることを認識させるでしょう。そして、軍事作戦を展開して一触即発の緊張状態に国全体がなり、政治対応においては政権がひっくり返ることだって辞さない事態に発展していたでしょう。世界の常識では、今回の岸田政権のような対応<何もしない政治>をしていれば、必ず政権は終わっていました。その意味は、政治が国益と国防を放棄したからです。日本では、何事がなかったかのように危機を軽減化して、自分たちで国を守る主意すら起こさせない風潮にしてしまいました。果たして、この姿を独立国とよべるのか、世界は日本の姿をずっと見ています。1年前香港の民主主義がのまれるときには、日本は国家としての姿勢を明確にしませんでした。また、北京オリンピックで同じような姿勢を取った時に、2022年以降からはじまる尖閣有事に日本サイドについてくれる国が出てくるのか? 一国でも多く国際世論を日本サイドに付けておかないと、香港のように呑み込まれて部分支配が日本の各地で起こることだってありえます。(竹島のように実効支配される状況が本土内でもはじまり、米軍基地のように日本人が立ち入ることが出来ない土地が出てくる可能性すらある。この問題は、離島だけでなく地方の過疎になった土地を、実効支配されることも視野に入れる必要がある。)これから、日本の政治は国の存亡をかけた戦いの場になっていきます。政治家だけに任せるのではなく、一人一人が国づくりに参加して世論をつくり、政治とメディアの底上げをする必要があると思っています。北京オリンピックの政治的ボイコットの意味は、実はそこにあります。表面はスポーツの祭典ですが、水面下は覇権主義対民主主義の熾烈な戦いがはじまっています。この戦いに負けたら、日本は中国の属国になり日本民族は奴隷化されて、民族として立ち上がることが出来なくなるでしょう。この北京オリンピックは、日本という国と民族の存亡の分岐点であることは間違いありません。