Vol.589

時代の正体

ジョージ・オーウェルがその作品のなかで記述したビッグブラザーを、忠実にモデルにしているかのような行動を、中国共産党が、その十数億人の国民に対してはじめているようです。サイバー空間における情報コントロールだけではなく、ひとりひとりの人間の行動が、完全に監視される社会の入口に、いま、この世界は向き合わされています。その先にあるのは、ひとりひとりの頭の中にある情報すらコントロールされる、オーウェルの作品を超える管理社会でしょう。この社会のベクトル、または、二十一世紀初頭の世界の方向性は、どこから生じたのでしょうか。
いま、この世界に生きているほとんどの人間は、フランス革命は良いものだったし、ロシア革命は、抑圧された人間を解放する時代の必然の方向だったと、たぶん教育され、そのように信じ込んでいます。ところが、二千一年のアメリカにおけるテロとの戦いのスタートの結果、この世をコントロールしてきたある種の人間グループの姿が、歴史の闇のなかから、多くの人間の意識上に登るようになりつつあります。
そして、この二十一世紀に入って、資本主義と共産主義といったイデオロギーの対立が、実は、一般の人間の意識を欺くひとつのプログラムらしいということも、覚醒した人間には理解されつつあるともいえます。
精神学的にいうと、これは聖書の時代の闇のプログラムです。近現代史の見方でいうと、西欧のキリスト教文明が、世界を植民地化した結果、そこで生まれたヨーロッパ列強の王権による支配を打倒するムーブメントが、フランス革命によってはじまり、マネーの支配者が、王権やバチカンに代表される神権の所有者の上位につくという事態を生じさせたのです。それを指摘すると、多くの場合は、陰謀論者のレッテルを貼られ、社会的に排除されるというシステムが機能していることで、その背後にある何かを、推測することは可能なはずです。
アメリカのFRBが、純民間の存在であるということは、アメリカ政府は、通貨発行権を持たないということになります。それを極論すると、アメリカ合衆国の金権は、民間のFRBの出資メンバーの所有物ということになるのです。そして、いまの世界で、マネーの暴力を最も行使している中国共産党という組織は、あるイデオロギーを持った党派的人間グループであり、そのグループが国家を所有しているのです。
よくいわれるように、二十一世紀に入ってからの中国の急激な成長の影には、世界の金融資本との連携があります。とくに、リーマンショック後の世界において、全世界的に金持ちを救うために供給された超低金利の政策によって、破産寸前だった金融資本家は、その資産をさらに増加させ、各国における貧富の格差は、信じ難いレベルに到っています。
フランス革命やロシア革命が、歴史の必然ならば、いまの世界で、この格差を生み出した金融資本家たちは、打倒され、その富は、再配分されるはずですが、現実は、そのように動いてはいません。
これが一神教が伝えている終末期の姿であることは、いうまでもないでしょう。その世界のなかで、唯一、まだこの日本が、このマネーによる世界秩序の再編に抵抗しているというのが、私の認識です。まだ、ほとんどの日本人は無自覚なままですが、伝統的に、天皇には権威を、武士の幕府政権には権力を、商人に代表される経済活動者には富を、というように、日本流の三権分立を皮膚感覚で知っているこの民族は、マネーの支配を受け入れることをしないはずです。
それこそが、この日本列島に隠された、最後の一厘の仕組みの原動力なのです。
資本主義者も共産主義者も、私にいわせれば、死んだら終わり文明を信じる無神論者で、たましいの永遠性を否定するために、何者かにその欲望のために使われている、闇のものたちに過ぎません。彼らが、この地上の支配権を確立したら、この世は闇に閉ざされるのです。
そうこの世がならないように、この世に光を送るのが、日の本たるこの列島に育った日本人のたましいの仕事だということに、ことしは多くの人が気付くことになるのでしょう。平昌オリンピックでの、精神性の差が、その証しなのです。

二千十八年二月二十二日 積哲夫 記