Vol.567

中国共産党のATM

長い間、中国共産党の対日スローガンは、中日友好でした。それによって、彼らは近代化のための資本と技術を手中に収めることに成功しました。これを達成した後に、彼らのスローガンは、一帯一路なるものに変化し、ユーラシア大陸の陸と海に、彼らの信じる中華文化圏をつくろうとしています。
日本という不思議な国は、アメリカ合衆国の占領統治時代の洗脳工作を受けたまま、その当時のイメージのまま、講和条約以降の時間を過してきました。
不思議なことですが、そのアメリカという国には、戦前の国民党支援の時代から、一貫して、中国に対する親近感を持ち続けています。同じように、中国に歴史的な親近感を持ち続けている国として、ドイツがあります。そして、どうやら中国共産党が、ユーラシア大陸とアジア地域での夢を実現するためのパートナーになるという地政学的な運命に、ドイツが巻き込まれつつあります。
昭和天皇は、日米開戦の原因を、一九二四年のアメリカ側による、排日移民法の成立にまで、さかのぼるとの認識をお持ちだったようですが、当時のアメリカ大統領は、セオドア・ルーズベルトでした。
昭和天皇の歴史観によれば、日米戦争は、一九二四年にアメリカ側によってはじめられ、その後二十一年続いて、日本の敗北に終ったことになります。
中国共産党というものは、選挙という民意を問う必要がないので、その世界戦略を、一貫して追求し続けることが可能だという特性を持つことを、ほとんどの日本人は知りません。歴史的に、共産主義者や社会主義者が、その言葉で主張するような理想主義を実現するためにはたらくものではないことは、すでに証明されているにもかかわらず、そのイデオロギーにシンパシーを持つ日本人が数多くいるのは、なぜなのでしょうか。
精神学の立場でいうと、そうした価値観を持つ日本人が多くいるいまの日本こそ、最後の一厘のしくみの最終シーンにおける姿ということになります。
もし、いまの日本に真に知性的な人間が残っているならば、この世界の状態を次のように理解するはずです。
資本主義国の中央銀行制度の闇と、日本の土地バブルの幻想経済のしくみを学んだ中国共産党が、中日友好というスローガンで手に入れたいまの世界的地位を維持するために、崩壊しそうなチャイナバブルをさらに先送りする手段として選ぶのは、小さな戦争という可能性が高い。その対象は、日本または、台湾と考えられる…。その先、中国共産党が狙うのは、現在の世界でアメリカのATMとなっている日本経済という打ち出の小槌です。
この地政学的な大変化を実現するために、中国共産党は長いスパンで、アメリカ合衆国に、中国系の大統領を出現させるところまで考え、手を打っています。このような、長期的な戦略思考ができることが、彼らの存在目的からすれば、共産主義というものの民主主義に対する勝利の道なのです。
大統領制のアメリカ合衆国は、これから、過去の国家戦略の誤ちによって、急速に求心力を失っていくはずです。そのひとつの過程が現在の大統領に対する、マスメディアの反乱なのですが、同様のことが、いまの日本でも、起きています。
中国共産党の指導部は、アメリカの権力がマネーによって買えることをすでに充分、見てきました。いままで、アメリカの主人であった人間グループと、彼らは本当に敵対するものなのでしょうか。
もしかすると、今回の総選挙の過程で、日本をどこかに売り渡そうとする人間グループの姿が、国民にも見えはじめるのかもしれません。

二千十七年九月二十一日 積哲夫 記