#26 気がつけば移民国家?にならないために

前回の記事にあるように、日本で財政健全化目標の中身を「プライマリーバランス(PB)黒字化目標」に変えたのは竹中平蔵氏でした。
小泉純一郎政権の頃のことです。

もう少し詳しくおさらいしますと・・・
骨太の方針(ほねぶとのほうしん)という名目で、内閣総理大臣であった小泉純一郎氏が「聖域なき構造改革」の着実な実施のために経済財政諮問会議において決議させた、政策の基本骨格がありました。
その第二弾(二〇〇二年)で、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇二」(基本方針二〇〇二)が発表されました。
内容としては、経済活性化戦略として、六つの戦略と三十のアクションプログラム、税制改革として「デフレの克服」とともに「二〇一〇年代初頭に国と地方を合わせた基礎的財政収支(プライマリーバランス)黒字化を目指す」という改革案でした。

「基礎的財政収支(きそてきざいせいしゅうし、Primary balance)」をWikipedia で見ると、学者の見解として、下記のような解説があります。
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経済学者の竹中平蔵は「名目GDP成長率が名目金利よりも高かった場合、基礎収支が赤字でなければ、財政の破綻回避できる」と指摘している。竹中は「通常の場合、金利よりもGDPの伸びは高くなるため、(経済成長すれば)財政健全化が進むこととなる。しかし、プライマリーバランスが赤字のままだと、財政破綻する懸念が高まる。重要なのは、金利を支払う前の財政収支をゼロ以上にし、国債残高が増えないようにすることである。金利の方が経済成長率よりも高い場合はこの通りにはいかないが、通常は金利以外に新規の国債発行をしないようにすれば、債務の負担は年々相対的に減ることとなる」と指摘している。

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「財政の破綻回避」を目的としてPB黒字化をしなければならない、というのが竹中氏のご主張のようですが、国債残高が増えないようにするのではなく、国債を発行して国民が安心して暮らせるようにすれば、PBは黒字化しますし、国債発行を増やしても財政は破綻などしません。
資本主義がベストだとは私は思っていませんが、現在は日本を含め、先進諸国は金融資本主義国家でもあります。

日本以外の国々は対外債務を多く抱えており、対外債務に関しては極力増やさないよう注意をしなければなりません。
日本は、状況が異なります。

資本主義は、そもそも「資本を受け入れる」つまり会社が負債を負うところからスタートしていますので、負債があるのは当然のことです。資本をどんどん投入してもらって、収益活動を広げ、株主に還元しながら更に収益を上げていこうという形です。
国の会計も、会社など法人の会計と似ています。一般家庭の家計とは最初から異なるのです。

竹中氏の「学者の見解」とは、国家財政ではなく、家計もしくは対外債務のかなり超過した国の話のようです。
福沢諭吉塾長が開設された慶応大学名誉教授、東洋大学教授をしておられるようですが、大丈夫なのでしょうか?

竹中氏は、いま加計学園で話題になっている「国家戦略特区諮問会議」の民間議員でもあります。

  民間議員・竹中平蔵氏に“退場勧告” 戦略特区に利益誘導批判
  https://dot.asahi.com/wa/2017053100019.html?page=1 

PB黒字化目標を掲げて、日本企業が固定費をスリム化していかざるを得ないようにする、という方向性は、ご自身が会長職にある派遣会社、パソナにとっては非常に有益です。しかし、結果を見れば明らかなように、国益に反していました。

固定費をスリム化するには、人件費を抑えることが一番最初に考えられる部分ですが、これを続けていくことで、日本の正規雇用や終身雇用は激減しました。就職難となり、経営状態悪化による解雇も多発し、非正規雇用が増えていったのです。
人材派遣会社は急成長しました。

今度は、「介護職が人手不足なので、アジアから安い労働力を・・・」ということで、東南アジアからの派遣社員をテストケースで入れ始めています。
そして、「ようやく慣れたところで帰国させるのは合理的ではない」という理由で、数年後には移民としての受け入れも視野に入れているようです。

地方都市ではすでに、広島県安芸高田市のように、人材不足から外国人労働者の積極的受け入れを進め、定住支援を行っているところもあります。

秋田県大潟村では、農業特区として規制改革の一環で「海外からの労働者」の受け入れを行う方向で話を進めています。

  農業特区で外国人受け入れ 政府、法改正へ 労働不足に対応
  http://www.sankeibiz.jp/econome/news/161213/ecd1612130500001-n1.htm 

これまで農業に関しては技能研修生についても三年という制限がありました。

沖縄では外国人(主に中国系を想定か?)を離島、島嶼(とうしょ)部に誘致する特区を設けたいという申請を翁長知事が提出しているとか。相変わらず親中ぶりの激しい県知事です。
離島に中国人などが多くなれば、安全保障の部分で危険であるという想像は容易にできます。

こうしたところで、移民が増えていくことを、どう始末つけるつもりでしょうか。

こんなところにお金をかけるのではなく、日本国内の労働状況を改善するとか、介護職に対する給与などを上げるほうにかけたほうがいいです。
そもそも、認知症の原因の大きな元となっている生活習慣病に対する取り組みを変える(血圧降下剤を簡単に出さない、コレステロール値や塩に対する適切でないプロパガンダをやめるなど)ほうが先です。

日本の入国管理は緩すぎますし、その後の不法滞在管理もザルのようです。
見せしめのように卒業を目前にした中学生を強制送還させたりしたこともあったと思いますが、抜け道をよく知る人たちは難なく滞在を続けているようです。
沖縄などでは観光ビザで入国し、そのまま帰らない中国人が多数いると聞きます。

  「帰らない」中国人旅行者が急増。沖縄の現状は日本の未来か?
  http://www.mag2.com/p/news/254684 

ビザ申請を行い、却下されたら即時再申請を行い「申請の返事待ち」という形でつないでいくという方法をとる者も少なくない様子。

また、東京池袋などでは、中国語のチラシで不法滞在の人向けに、「不法滞在の方へ。おまかせください!必ずビザを取ります」というような宣伝がたくさんあるとも聞いています。こうしたところにこそ、法務局は入国管理上の問題として監督監視を厳しくしてもらいたいものです。

昔から、日本の国是は鎖国です。

日本が好きになり、日本に残り、帰化した先人たちは、長い年月をかけて日本人に同化していきました。
日本語という言葉を使うだけでなく、言語の背景にある心情や、習慣、食べ物、しきたりも含めて、さまざまに同化していったから、重大な問題もさほど起きずに日本人社会に溶け込み、受け入れられてきたのです。

教育のゆがみがあり日本人自体危うくなってきていますが、日本語もろくに読み書きできず、日本の歴史も正しく知らず、国体を習うこともないままに経済的な理由で移民となる人々を増やすことは、日本にとって将来的に良い結果をもたらすとはとても思えません。
いまでさえ、日本語ができない移民の子供たちを抱える行政の問題が増加しているのに、日本人の子供たちの教育をどうするつもりなのかと問いたいです。

帰化したいと希望する人たちには、せめて日本語の読み書き試験と、日本の歴史の試験、生活習慣、社会ルールなどの試験を実施してもらいたいものです。

私はまだ読んでいないのですが、参考になると思います。
  『今や世界5位 「移民受け入れ大国」日本の末路』
  三橋貴明著  徳間書店  千三百円+税

日本が大好きで、虎ノ門ニュースでもおなじみ、八月から木曜月一回レギュラー参加の石平(せきへい)さん。
中国から帰化された石平さんのインタビュー記事をどうぞ。

  「日中友好は日本だけの幻想だ」誰よりも中国を知る男からの警告
  http://www.mag2.com/p/news/256100 
 

もうひとつ、台湾出身の日本人(帰化人?生まれた当時の台湾は日本領であった)、黄文雄さんの記事。

  中国企業の日本進出が加速。買収される「メイド・イン・ジャパン」
  http://www.mag2.com/p/news/255812 

平成二十九年七月二十八日
阿部 幸子
協力 ツチダクミコ