#29 種子法廃止、ふたたび。

本来は、「ポスト・グローバリズムのその先に向かって ~その2~」に進むのですが、今回、ふたたび、種子法廃止関係のお話をしたいと思います。
( 以前の記事→ #17 種子法廃止? 日本はどこへ行こうとしているのだろう。

枯葉剤のメーカーで、今は穀物メジャーにもなっているモンサントの話題を含め、青山繁晴参議院議員が、虎ノ門ニュースで、
 「共産党系の農業運動であり、種子法の廃止は日本にとって特に危険なことではない」
という見解を明言していらっしゃいました。

単に、危険を見る目や感覚、注目すべき点が私とは違うということなのか、あるいは、情報が偏っているのか、何故なんだろうと考えました。
無国籍大企業の、マネー中心の暴力的な力というか、悪魔加減は特に感じておられないのだなぁ、と思いながら拝聴しました。
私の感覚では、マネー追求の貪欲さ加減が、あまりにすごすぎて、悪魔に見えてしまいます。

【DHC】8/14(月) 青山繁晴・居島一平【虎ノ門ニュース】
https://www.youtube.com/watch?v=unGTyZenOLUb 
一時間四十一分から、一時間四十二分三十秒くらいの一分半です。

種子法廃止に関して、かなり明解な形で話しておられました、以下の内容です。

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「共産党の浸透というのは、農業運動などでも激しく浸透していて、一部保守の人でも、種子法っていうのが廃止されて、モンサントという、要するに穀物メジャーを中心に、日本の農産物が犯されると言っている人がいらっしゃるようですが、これは事実に反していて、実際に農業運動でそうやって動いているのは基本的には共産党系の運動ですね。

実は種子法というのは規制法ではないので、今まで外資を止めていたわけではないんですよ。
で、モンサントって僕は、彼らが実際に破壊した農園をメキシコでも実際に見に行ってるし、これは少ない品種でですね、大量に売るっていう商売なんですよ。

日本は北海道から沖縄まで大体、日本列島ってぎゅーっとこうやって引き伸ばした形になっているから、東西に長くて南北はすごく狭いでしょう、ということは、気候が全然違うわけですよ。

で、これは日本文化の真髄なんですけど、同じお米でもそれぞれの地域で全然種が、種子が変わるわけで、そんなもの穀物メジャーは商売にならないからやらなかったというだけのことなんですよ。

でもそれが、共産党が農業運動に入っていくと、「これは安倍政権が日本の農産物や安全を切り崩しているんだ」、「穀物メジャーに全部切り開いているんだ」と、そういう話になると、保守の一部も、そこに乗っかっちゃうから、話が作られてるわけですよ。
そうやって、本当の問題が摩り替えられる。

共産党が浸透するっていうのは、本当は、これは本当に自由民主党の議員だから言ってるんじゃなくて、前から僕はずっと言っているわけですよ。」

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こんなに堂々と自信たっぷりで言われてしまうと、何となく聞いている人は「それじゃ、まったく安心なんだ!」と思ってしまうだろうなぁ、と思いました。

私も、古くから現場にいる知人たちに話を聞いていなかったら、そして疑問を持ち続けてこなかったら、「青山繁晴さんのおっしゃることなので、そうなのか」と思ってしまったかもしれません。

もちろん、なんでも人の言うとおり、という視聴者のスタンス、それ自体が大問題ではあります。
その姿勢が「ワイドショー民主主義」につながっているので、反省しなければなりません。
ワイドショーが、ネットニュースに変わっただけだったら、相変わらず他者の思惑通りに動いてしまうということになります。

青山さんのおっしゃるとおり、種子法はもちろん、もともと外資に対する規制法としてできているものではありませんでした。
しかし、よく読み、数多くの中小規模の農業従事者に話を聞けばわかります。
種子法によって、いかに日本の種のデータを含め、地場の農業が守られていたのか、ということが。

食べるものはとても大切だと思っている私にとっては、逆に、種子や肥料、農薬などに関して、外資規制法を作ってもらいたいくらいです。

日本共産党は「何でも反対」であったり、「コミンテルン日本支部」だったりはしていますが、全部が良くないわけではなくて、正しいことを指摘している場合もたまにあります。

東日本大震災の五年ほど前、自民党政権時代にも、国会で福島第一原発が津波によって電源喪失する可能性があることを指摘していた日本共産党の議員もいました。
その吉井議員は、非常用電源装置を複数用意するなどの提案も含んで、震災時の原発事故の危険性について複数回質問しています。
あとから言っても、今はもう仕方ないですが、そのときに対応をしていれば、状況は違っていたかもしれません。

そして今、種子法廃止に関して注目している政党が、共産党しかいない、ということも事実です。

共産党の浸透は、全体として芳しくない、という青山さんのご意見には、私も賛成します。
でも、種子法廃止に関しての内容には、賛同しかねます。
あまりにもお忙しすぎて、雑になっていらっしゃる可能性もあるかと思います。

モンサントは化学会社であり、遺伝子組み換え種子ビジネスは、彼らの主力製品だった除草剤とセットのビジネスモデルなのです。

モンサントの危険な話は、古くは農薬を使わない福岡農法でがんばっている知人たちや、近年では減農薬で美味しいコシヒカリを育てている農業法人を持つ友人たちからも、固有種の種を分散保管する重要性や、現場での強力除草剤ラウンドアップを使うことで出てくる影響の話と一緒に聞いていました。

安全性や種子のバラエティなど、日本の農産品のクオリティは世界的に高いものですし、その世界的に評価の高い日本の農産物には一定の保護があって成り立っているという、そこを切り崩したいという感覚は、やはりあるのではないかと思えます。

蓄積してきた日本の種子のデータを請求に応じて公開する必要など、もともと一切ありません。
従来の種子法を廃止するなら、少なくとも外資に対する規制、特にデータの公開はしないという規制をかけてもらいたいものです。

青山さんは、とりわけ国防に関することや米軍のこと、エネルギー分野についても精通し、信頼できるご意見を語られていますし、真摯な姿勢で好感の持てる数少ない国会議員ですが、万事に通じているわけではないと思います。
ジャンルによっては、あまり深くご存知でなくても、わざわざそうはおっしゃらないのも当たり前です。

どんな人も、すべてに通じて、すべてに正しいなどということはありえないので、鵜呑みにせずに、自分でよく考えてみることが大事だなと改めて思った機会でした。

ここに書いていることも、みなさんがそれぞれ、参考にされて、ご自身で改めて考えるための道具と思っていただければうれしいです。

平成二十九年八月十八日
阿部 幸子
協力 ツチダクミコ